同期設定は通信料と利便性を考慮

 hTc Zの主な用途は社内のメールとスケジュールの確認。NTTドコモのFOMA網を介して社内のExchange Serverと同期を取る(図2)。この部分は,NTTドコモの企業向けリモート・アクセス・サービス「ビジネスmoperaアクセスプロ」を活用している。ユー・エス・ジェイ側のアクセス回線はNTT西日本のBフレッツを利用しており,フレッツ・オフィス経由でNTTドコモのFOMA網と接続する。

図2●hTc Zから社内にアクセスする仕組み
図2●hTc Zから社内にアクセスする仕組み
NTTドコモの企業向けリモート・アクセス・サービス「ビジネスmoperaアクセスプロ」を利用し,FOMA網を介して社内のExchange Serverとデータの同期を取る。

 接続するネットワークやExchange Serverの情報はhTc Zにあらかじめ設定してあり(写真2),導入に当たってユーザーへの教育は実施しなかった(写真3)。「使い慣れたWindows系のOSなので操作方法は直感で分かる。NTTドコモと共同で作成した3ページのマニュアルを配布しただけだが,ユーザーからの問い合わせはほとんどなかった」(新里課長)という。

写真2●Windows Mobileの設定画面例
写真2●Windows Mobileの設定画面例
Exchange ServerのIPアドレス,ユーザー名やパスワードはあらかじめ設定した上で端末を配布した。同期するデータの種類や更新頻度はユーザーが自由に変更できる。
[画像のクリックで拡大表示]

写真3●ユーザーに配布したマニュアル
写真3●ユーザーに配布したマニュアル
NTTドコモと共同で作成した。3ページだけの簡単なものだが,説明会を開かなくても特に問題なく運用できている。
[画像のクリックで拡大表示]

 同期の間隔は当初,ユーザーによる「手動」を設定した。パケット通信料を抑え,バッテリーの持ち時間を長くするためだ。ただし手動の場合,受信するメールが多いと同期に時間がかかり,ユーザーの使い勝手が悪くなる。後述する「リモートワイプ」を有効化する狙いもあり,現在は1時間おきの同期(自動)に切り替えている。同期対象はメールが「過去1週間分」,スケジュールが「過去2週間分と将来の予定」としてあり,添付ファイルは手動でダウンロードする設定にした。添付ファイルはサイズが大きくなる傾向にあり,必ずしもすぐに必要になるとは限らないからだ。

 端末の紛失・盗難対策は,Windows MobileとExchange Server SP2の組み合わせで利用できる「ローカルワイプ」と「リモートワイプ」を活用している(図3)。ローカルワイプは端末起動時やロック時のパスワードの入力を連続して間違えると端末内のデータを消去する機能,リモートワイプは同期の際にExchange Serverから端末内のデータ消去を指示する機能である。ローカルワイプは「ユーザーがパスワードを入力ミスして動作してしまう恐れがあるため,連続5回以上間違えた場合にデータを消去するようにした。ユーザーが5回以上間違える可能性もあるが,その場合もデータ自体はサーバー側にあるので致命的な問題になることはない」(新里課長)。

図3●端末の紛失・盗難対策
図3●端末の紛失・盗難対策
パスワードの入力を5回連続で間違えた場合は端末内のデータを消去(ローカルワイプ)する。同期の際にExchange Serverから端末内のデータを強制的に消去(リモートワイプ)することもできる。

割引サービスは継続調整が必要

 このような仕組みで3月から運用を開始し,ユーザーからは好評を得ている。どこでも即座にメールを処理できるので,会議の合間にわざわざ事務所まで戻らなくて済むようになった。「これまでは出社してからメールを確認するだけで1時間程度かかっていたが,今は通勤途中に確認できるので出社してすぐに作業に着手できる」といった声も上がっている。

 パケット通信料金は「予想より少なく,今後は割引サービスの変更を検討している」(新里課長)。現在契約している料金プランは「タイプSS」(月額基本料は3780円)で,パケット通信の割引サービス「パケットパック90」(定額料は月額9450円)を併用している。パケットパック90は9450円分(約60万パケット相当)の無料通信分を含み,超過した場合は1パケット当たり0.01575円の通信料が加算されるサービス。この組み合わせは,1日当たりのメールの送受信回数と平均サイズから導き出した。

 しかし,実際に運用を開始してからパケット通信量を分析した結果では,無料通信分に達していないことがあった。今後も通信量を見ながら,最適な割引サービスに随時切り替えていく予定だ。

 なお,バッテリーの持ち時間は,これまで運用してきた印象では「1日に10回程度の同期であれば5日間充電なしで使えた。特に問題はない」(新里課長)という。