革新活動を引っ張る電子精機本部の鏡誠工場革新推進室長(左)と、第1期の改善マイスターであるクラッチ製造部の岡野一彦係長(右)
革新活動を引っ張る電子精機本部の鏡誠工場革新推進室長(左)と、第1期の改善マイスターであるクラッチ製造部の岡野一彦係長(右)
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 神鋼電機はトヨタ生産方式の考えを取り入れた生産革新活動に取り組んでいる。

 同社の製品は、OA機器に使用するマイクロクラッチから、空港で使用するハイリフトローダといった大型搬送システムまで幅広い。1日に数千個作るものもあれば、数カ月かけて1台作る製品もあるといったようにリードタイムもばらつきが激しい。

 「製造品目が多岐にわたり、同じ生産方式ではとても改善できない」と革新活動を引っ張る電子精機本部の鏡誠工場革新推進室長は話す。そのため同社が力を入れているのが、各職場で改善を先導する「改善マイスター」の育成である。現場のリーダーとなる人材を育成することで、生産革新を強化する。

 改善マイスターは、工場革新推進室が中心となって10カ月かけて養成するもの。既に5年間で51人を養成し、今年度も7月から各部門から集めた8人が指導を受けている。改善マイスターの役割は、各部門がそれぞれ取り組んでいる改善活動を推進すること。各部門は、改善すべき項目を見つける「ムダ撲自主研」に取り組んでおり、マイスターがこの活動を先導する。マイスターの能力向上のために、月に1回、全マイスターが1つの職場をモデルに改善提案を出すなど実力向上を目指している。

 新たな取り組みとして、今年度から教育プログラムを刷新し、改善マイスターの役割を広げる。工場革新推進室が担っていた期間工や新しく異動してきた各部門の担当者の教育を改善マイスターが担当する。

 マイスターが使用する教材は工場革新推進室が用意し、研修中に教え方を伝授することを新たに加えた。候補生が担当する工程で簡単に作れるものを持参してもらい、説明してもらう。ほかの候補生にも理解できるように説明する訓練を積むことで能力向上を目指す。改善の考え方を全社員に早く浸透させることで、生産革新活動を進める。

 既に各部門で成果が出てきた。これまでに約1万9000件の提案があり、21億8900万円のコスト削減効果が出ている。

 その1つが産業機械向けのクラッチ製造における改善だ。需要は好調で、生産能力が月産2000台に対して2500台もの需要があった。4人で工程別に組み立て作業を行っていたため、仕掛かりがたまっていた。耐圧などの検査機械の配置を変えるなどして、2人で組み立てられるようにした。このほか加工方法を変えることで外注費を年間720万円削減するなど様々な効果が出ている。

 効果測定に当たっては、製造品目が多いため、1時間当たり1600円の統一した基準で算定している。「カイゼンの意識を芽生えさせることで、カンバン方式やJIT(ジャスト・イン・タイム)などトヨタ生産方式も取り入れていきたい」と鏡推進室長は意気込む。