米Hitachi Global Storage Technologiesが米国時間5月14日に,フェムト・スライダを採用したノート・パソコン向け新型ハード・ディスク装置「Travelstar 7K60」と「Travelstar 5K80」を発表した。Travelstar 7K60の記憶容量は60Gバイトで,「7200rpmという回転速度のハード・ディスク装置のなかで業界最大容量」(同社)。一方のTravelstar 5K80は回転速度5400rpmで,最大記憶容量は80Gバイト。

 フェムト・スライダは,ハード・ディスク装置の磁気ヘッドでスライダ形状によりヘッドをディスク表面から浮かす役目を担う。大きさは1mm×1mm未満で,一般的なボールペンのボールと同程度のサイズ。ピコ・スライダと呼ばれる従来型スライダに比べ,30%小さいという。

 「フェムト・スライダを採用したことで,ピコ・スライダを使うハード・ディスク装置と比較すると,消費電力が11%減,耐衝撃性が25%増,記録可能なディスク面積が3.5%増となった。さらに,1枚のウエーハで製造可能なスライダの数も,ピコ・スライダより最大65%増やせる」(同社)

 またTravelstar 7K60はディスクの回転速度を7200rpmとし,5400rpmの装置より33%高速化した。その結果,データ転送速度は15%速くなり,回転の待ち時間が20%短くなったという。さらにシーク時間は平均で20%改善している。

 「7K60はデスクトップ・パソコン向け装置と同等の性能を持っているので,デスクトップ・パソコンの置き換えを狙う魅力的なシステムを開発するノート・パソコン・メーカーにとって,重要な部品となる」(同社モバイル事業部門ジェネンラル・マネージャのBill Healy氏)

 Travelstar 7K60および同5K80の主な仕様は以下の通り。

【Travelstar 7K60】
・容量:60Gバイト
・厚み:9.5mm
・回転速度:7200rpm
・面記憶密度:最大500億ビット/平方インチ
・プラッタ数:2枚(ガラス製)
・ヘッド数:4個(GMRヘッド)
・耐衝撃性:1000G/1ms(非動作時),200G/2ms(動作時)
・平均待ち時間:4.2ms
・平均シーク時間:10ms
・インタフェース:ATA-6(IDE)(最大転送レートは100Mバイト/秒)
・騒音:2.7Bels(アイドル時),3.3Bels(動作時)
・その他:Ultra DMA(mode-5)

【Travelstar 5K80】
・容量:20/40/60/80Gバイト
・厚み:9.5mm
・回転速度:5400rpm
・面記憶密度:最大700億ビット/平方インチ
・プラッタ数:1/1/2/2枚(ガラス製)
・ヘッド数:1/2/3/4個(GMRヘッド)
・耐衝撃性:800G/1ms(非動作時),200G/2ms(動作時)
・平均待ち時間:5.5ms
・平均シーク時間:12ms
・インタフェース:ATA-6(IDE)(最大転送レートは100Mバイト/秒)
・騒音:2.2/2.2/2.5/2.5Bels(アイドル時),2.6/2.6/2.9/2.9Bels(動作時)
・その他:Ultra DMA(mode-5)

 いずれの製品も,2003年5月中に量産品の出荷を開始する。

 なお,米IBMは,同社のノート・パソコン「ThinkPad」に両製品を採用する。Travelstar 7K60搭載モデルは2003年夏の後半に,同5K80搭載モデルは2003年6月に出荷する予定。

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