■同ソフトを手に入れたVERITASにとっては,単なるデータ管理から非構造化データの管理へ歩を進める転機となる。同社の上級副社長Jeremy Burton(ジェレミー・バートン)氏と,KVSのアジア・パシフィック地区担当ディレクタBjorn Engelhardt(ビョルン・エンゲルハート)氏に,今後の戦略を聞いた。
――――電子メールのバックアップは,他のファイル・サーバーやデータベースのバックアップと比べてどのような点が異なっているのでしょうか。 [Jeremy Burton氏]最初に,ちょっとご紹介させていただきますと,弊社が先月買収した豪KVault Softwareでアジア太平洋地域のディレクタを担当していますBjorn Engelhardt(ビョルン・エンゲルハート)氏です。製品の詳しいところは彼が説明します。 さて,バックアップのいいところは,システム・クラッシュでも,ハードウエアの不具合でも,ファイルを削除してしまっても,リカバリできる点です。電子メールのバックアップの場合は,電子メール・サーバー全体をリカバリできますし,また個々のメールボックスも,特定のメールだけでもリカバリできるのです。 ただ電子メールは,「VERITAS」という言葉を含むメールだけをリカバリしたいといったときに難しくなります。ほとんどの企業では,ありとあらゆるものをリカバリしてから,検索をかけるという手法を採ります。ただ,「VERITAS」という言葉を含むメールを,過去5年間分検索することになったりすると,時間がかかることは想像できます。 バックアップというのは非常に有効なものですが,制約もある。そこで,KVSの「Enterprise Vault」を使います。VERITASのバックアップとKVSの検索機能を組み合わせることで,ファイルの保護をしつつ,ファイル名とテーマで迅速にリカバリできるようになります。 ――――「ストレージ管理の世界」から「コンテンツ管理の世界」に転換しようとしているように思えますが… [Burton]データ管理からインフォメーション管理への転換と呼んだほうがいいのではないかと思います。コンテンツ管理といってしまうと,別のものを連想させます。 データをあるところから別のところにバックアップする「データ管理」,そしてバックアップされたデータを解析して必要な情報を得る「インフォメーション管理」です。 ――――米Microsoftが「WinFS」を開発中で,ファイル・システムの観点からコンテンツ管理を目指しています。米EMCは米Documentumを買収し,ILM(情報ライフサイクル管理)と絡めてコンテンツ管理を進めようとしています。VERITASのKVS買収の動きは,このような業界動向を睨んだものなのではないでしょうか? [Burton]ハイ,その通りです。より多くの企業で劇的にデータが増大していくなかで,非構造化データが増えています。それを戦略的に管理しなければ生きていけないことに気づき始めたのだと思います。 MicrosoftのWinFSは,ファイル・システムをよりよくする試みのなかで出てきたもので,Longhornより遅れて出てくるものです。だから,まだ先の話なのではないでしょうか。 一方,EMCのDocumentumは,非常に特化したレコード管理をするものです。ビジネスの世界でこのシステムを使うには,トレーニングが難しいことと,利用のオーバーヘッドが大きい短所があります。 これに比べて,われわれが取得したKVSの「Enterprise Vault」は,実用的なソリューションだと思います。巨大な電子メールとファイルを,現在すぐにでも利用できるのです。 われわれの顧客にいろいろ聞いたところ,システム管理者が一番困っているのが,電子メールの扱いをどうするかということです。 [Bjorn Engelhardt氏]「ドキュメント」ではないんですよ。ドキュメントというのは,どのファイルを長く保持しなければならないか,ということが"考えどころ"になる。ところが,電子メールというのは,会社全体で持っていて,ストレージを増やすだけでは管理が追い付かない。ドキュメント管理に比べて電子メール管理は,ポリシー・ベースで管理できるところが優れています。どこに,どれだけの期間,なにを保管するのかということがポリシーで決められる。 1つ例を挙げますと,オーストラリアの地方自治体でゴールドコースト・シティ・カウンシルというところがあります。Enterprise Vaultを導入する以前からドキュメント管理(あるいはレコード管理)をしていました。ところが,ドキュメント管理を利用していたデータは,全データの17%しかなかったという事実があります。残りの83%はどこかに行ってしまったのです。ここでは,KVSのソリューションを導入して,電子メールのアーカイブをやるようになりました。まもなく,ファイルのアーカイブもやることになっています。 今までExcelやWordのファイルを保存するときに,ファイル・サーバーに入れていたのが,「今度からレコード管理システムに入れてください」といわれても,人々はやらないと思うのです。 ――――MSのWinFSも,EMCのDocumentumもライバルでないとなると,どこが競合相手になるのでしょうか? [Burton]日本では競合相手はいないでしょうね。日本向けにローカライゼーションをしている企業はうちしかいない。米国にはアーカイビングをやっている企業はあります。しかし日本向けにはやっていない。 他社と異なり,弊社は最初から電子メールのアーカイビングをやっていたのですが,他社は,データベースやドキュメント管理の延長として,アーカイビングをやってきたという違いがあります。 ――――ドイツのIXOS Softwareはどうですか?日本法人もあり事業展開をしています。Enterprise Vaultも,IXOS-eCONserver for MS Exchangeと似ているのではないですか。 [Burton]それは知っています。われわれはそこと差別化ができるのではないかと考えています。彼らは,SAPのERP(企業資源管理)ソフトやアーカイビングといった,構造化された方面のデータ管理をしてきた企業です。 非構造化データと構造化データでは扱いは全く異なる。われわれの強みは,非構造化データという非常に幅広い範囲を扱えることですから,そこでの差別化は可能だと考えています。KVSのEnterprise Vaultが唯一,電子メール/ファイル/SharePointのアーカイビングをパッケージ・ソフトとして扱っているのです。 [Engelhardt]重要なのはアーキテクチャです。われわれの製品は既にバージョン5まできています。元々DECが開発したものをベースに,1999年にリリースしたのが最初です。アーキテクチャとしてスケーラビリティがあり,プラットフォームとして強固なものがあります。 例えば,「シングル・インスタント・ストレージ」といって,Exchangeのレコードを見て,同一のものがあると,アタッチメントとして処理するようになっている。また,ある一定期間のレコードの使用頻度を見て,それを統合していくという特徴があります。あまり使わないデータを第2,第3のストレージ装置に移していって,コストを抑えるというものです。 KVSは単一製品なので,効率的な管理ができるという側面があります。電子メール,ファイル,SharePoint,あるいはサード・パーティ製のアプリケーションのデータも管理できます。 他社と違うのは,格納したデータをいかに活用するのかというところです。データを格納するだけでなく,データの発見(検索機能)に優れているのです。 [Burton]われわれの一番の課題は,競合相手というより顧客がまだこのようなソリューションを知らないということです。営業が日々顧客に会って啓蒙活動をしているわけです。これからはVERITASとして,活動してもらいます。 ――――ユーザー・インターフェースはどうなっているのでしょうか [Burton]よく顧客に,どの程度のトレーニングが必要かと聞かれるのですが,全然必要ないのです。 Exchangeが保管する電子メールがアーカイブされると,封筒のアイコンがVaultのアイコンに変わる。検索はOutlookのメニューの中から行えます。保管はVaultが行っているので,検索の際Exchangeサーバーに負荷をかけない。 電子メールと同様に,ファイル・サーバーへのアクセスはエクスプローラから行い,SharePoint Portal ServerならInternet Explorerから行います。それは変わりません。一方,Vaultは「Archive Explorer」という機能も持っているので,これでも検索・閲覧に使えます。 ――――今後,ベリタス製品との統合はどうなっているのですか。 [Burton]Vaultを使ってデータ管理をより効率的にします。現在の利用状況は,データをNAS(ネットワーク接続ストレージ)などの2次ストレージに移して検索をかけています。ところが,さらにテープに落とすこともあるでしょう。そのときテープへのバックアップをサポートしているVERITASのNETBACKUPとの連携が考えられるでしょう。あるいは,蓄積されているバックアップ・テープをVaultにかけることで,検索の対象にできるでしょう。 |