HDDの容量は年々増加しているが、その限界は無いのだろうか。現在の記録方式という点では、実は限界が見えている。1Tビット/平方インチだ。

 記録密度を高めるためには、データを保持する「磁区」を小さくする。磁区が小さくなると熱で磁化が反転してしまう「熱ゆらぎ」が発生しやすくなり、1ビット/平方インチだと常温で磁化を保持できなくなる。そこで常温で安定した磁化を確保できる材料に変えると、今度は強い磁気を与えないと記録できなくなる。強い磁気を与えるにはヘッドを小さくできなくなる。つまり、磁区の大きさ、磁化の安定、磁気情報の記録という、3つの要素が同時に成り立たない。

 PC向けでは1TBのディスクの記録密度が最大である。その記録密度は、約600Gビット/平方インチ。これを2倍に高めるのが、現在の記録方式では難しい。

 限界を超える技術として有力なのが、「瓦記録」「パターンドメディア」「熱/マイクロ波アシスト記録」だ。

●HDDの記録密度の推移
従来の材料を使った垂直磁気記録方式だと、1Tビット/平方インチの壁を越えられないというのが、研究者の間で共通の認識になっている。製品レベルでここに当たるのは、現在の記録密度の向上ペースからすると2012~2013年になりそうだ。そこで、データの記録方式の工夫や、記録媒体の構造や材料の変更でこの壁を突破しようとしている。既に研究レベルではこの壁を突破した事例も出てきている。グラフは情報ストレージ研究推進機構(SRC)のデータを基に日経WinPCが作成した。
従来の材料を使った垂直磁気記録方式だと、1Tビット/平方インチの壁を越えられないというのが、研究者の間で共通の認識になっている。製品レベルでここに当たるのは、現在の記録密度の向上ペースからすると2012~2013年になりそうだ。そこで、データの記録方式の工夫や、記録媒体の構造や材料の変更でこの壁を突破しようとしている。既に研究レベルではこの壁を突破した事例も出てきている。グラフは情報ストレージ研究推進機構(SRC)のデータを基に日経WinPCが作成した。
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記録密度を高めるのにどんな技術が有力なの?

 最も実用化に近いのが瓦記録。瓦が少しずつ重なっているのと同じように、記録するトラックを少しずつ重ねて、記録密度を高める。東芝などが実用化に向けて開発している。パターンドメディアは記録面に仕切りを作って、隣接する記録ビットとの干渉を防いで磁化を安定させる。熱/マイクロ波アシスト記録は、レーザーやマイクロ波で磁化を記録する際に必要な磁力を軽減する。

●瓦記録方式
瓦屋根のように、トラックが少し重なる状態で記録する。磁区を小さくしたまま、大きな磁力のヘッドで記録できる。ヘッドやディスクには従来通りの材料が使えるので、比較的実用化が近いとされている。図は東芝の資料を基に日経WinPCが作成した。
瓦屋根のように、トラックが少し重なる状態で記録する。磁区を小さくしたまま、大きな磁力のヘッドで記録できる。ヘッドやディスクには従来通りの材料が使えるので、比較的実用化が近いとされている。図は東芝の資料を基に日経WinPCが作成した。
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