芸人、アーティスト、俳優と、ジャンルの枠を軽々と飛び越え、表現と向き合い続けているお笑い芸人コンビ・ラランドのサーヤさん。晩餐=川谷絵音(G)、簸=木下哲(G)、春日山=休日課長(B)、foot vinegar=GOTO(Dr)が参加する5人組バンド『礼賛』では、CLR名義で作詞作曲とボーカルを担当されています。インタビュー前編では、2月28日にリリースするデジタルEP『PEAK TIME』のこと、さらに多忙な日々を支えるセルフケアについても伺いました。

ラランド サーヤ 礼賛 PEAK TIME セルフケア

サーヤ

タレント・お笑い芸人

サーヤ

1995年12月13日生まれ、東京都出身。上智大学在学中の2014年にお笑いサークルで出会ったニシダさんとラランドを結成。2019年と2020年の『M-1グランプリ』にてアマチュアながら2年連続で準決勝に進出したことがネットで話題に。2021年2月に自身が社長を務めるラランドの個人事務所・株式会社レモンジャムを設立する。

ファニーに“エロ”を語ってもいい! という気持ちで作詞作曲した

――まずはじめに、『礼賛』というバンドを結成するに至った経緯を教えていただけますでしょうか?

サーヤさん いろいろなボーカリストの方に川谷絵音さんが作った曲を歌ってもらう“美的計画”という企画で声をかけてもらって、2021年に『ピーナッツバターシークレット』という曲を歌わせていただいたんです。その時「また一緒にやりたい」と言ってくださって、半年ほどたったあたりで、「もしよかったらバンドやりましょう!」と本当にDMが届いたんですよね。そこから、あっという間に今の5人のメンバーで活動することになりました。こんな神がかったメンバーと一緒にできるとは想像もしていなくて。鬼才しかいないので、すごいラッキーだなって、いつも感謝しています。




——デジタルEPに収録されている楽曲『むちっ』からは、性に前向きな主人公の姿を想像しました。サーヤさんはこれまで、“性教育の遅れ指摘おばさん”というキャラクターでラジオやYouTubeで性の話をしたり、NHKでも性教育の番組を持つなど、ご自身でも性についてオープンに発信されている印象を受けるのですが、この曲にはどのような思いを込めたのでしょうか?

サーヤさん 同じ収録曲の『スケベなだけで金がない』もそうなんですが、このときは、ファニーに“エロ”を作ることにハマっていたというか(笑)。『むちっ』に関しては、SNS上に「ガリガリに痩せていることが正義」というニュアンスを感じる投稿が多いな、と感じたことがきっかけになっています。それももちろんキレイだと思うけれど、私はそうではない体も素敵だなと本当に思っていて。この曲では、体型的な意味だけではなく、性格的な“むちむち感”も歌っているんです。「欲張りに欲していくのもいいよね」というモードで作りました。

オチがつくネタはお笑いに、笑いにできないモヤモヤは音楽に昇華。感情の“フードロス削減”です

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——楽曲制作をしていく中で、お笑いのネタ作りやYouTubeの企画制作など、これまで取り組んできた“作る仕事”との違いを感じたのはどんなところでしょうか?

サーヤさん 正直、そこは全然スイッチングしていないんです。お笑いのネタにならない相方への鬱屈とした感情や、ただ能天気な話は音楽にして、オチがつくような経験はお笑いのエピソードにして…みたいな感じで、全部無駄なく何かしらに昇華するぞって思っています。私は、それをいつも「フードロス削減」って呼んでいるんですよ。

——フードロス削減…! 余すところなくアウトプットされているのが想像できます。ちなみに今回のEPは、ファッションスタイリストの服部昌孝さん率いるチームがアートワークを担当されたそうですね。クリエイティブにも大変力を入れていらっしゃる印象を受けました。

サーヤさん 『礼賛』のメンバーは、とにかく肩の力が抜けた感じがめちゃくちゃカッコいいんです。だから、アートワークも、キメすぎない、とっつきやすい雰囲気にしたくて、服部さんのチームにお願いしました。最後は白目を剥いたカットか、剥いていないカットかですごく悩みましたが、私が思いっきり白目をむいていても、スタイリングとヘアメイクと光の当たり方がすばらしくて、『礼賛』のイメージをうまく表すことができたんじゃないかと思います。




子役時代の経験や、6年間の美術部生活。今の仕事すべてが「過去にやっていたこと」か「やりたかったこと」

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——リードトラック『PEAK TIME』のように常にピークタイムを更新し続けているサーヤさんですが、新しいことを始めたり挑戦したりするために、どのように情報をキャッチしているのでしょうか?

サーヤさん 広くアンテナを張っているというよりは、むしろインプットは偏っているほうだと思います。移動時間や寝る前は、ひたすら都市伝説のYouTubeしか見ていないし…。ただひとつ言えるのは、今やっていることは全部、過去にやっていたことや、やりたかったこと、ということ。

4~5歳までは子役をやっていたので物心ついた時からドラマやCMの撮影現場に行っていたし、中高6年間は美術部に所属して、その間に漫才や歌もやっていました。大学に入ってからは、お笑いサークルで今の相方と出会って。振り返ってみると、すべてが地続きだなと思います。

——では、これから新たに挑戦してみたいと考えていることはありますか?

サーヤさん 私、おばあさんになってからアパレルのブランドをやりたいんですよね。今はまだ既存のブランドの好きなものを着たいけど、還暦くらいで洋服を作れたら面白いかもなって思っています(笑)。

ストレスやSNSのコメントで心身ともに荒れていた新人時代。体調管理を始めてから人生が変わった

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——サーヤさんは多岐にわたる活動で心身ともに相当なエネルギーを消費されているのではないかと思いますが、疲れ切って心が落ち込んでしまったり、気持ちの切り替えができなくなったりすることはあるのでしょうか?

サーヤさん あります。メンタルは強くないので、細かいことが気になって、考えすぎて、どっと疲れてしまう瞬間が多いんですよね。特にテレビに出始めた1周目のストレスがエグかったときは、朝まで飲んで二日酔いのまま番組の収録に行って…っていう日々を繰り返していたので、自律神経は乱れるわ、代謝が下がって太るわ、肌は荒れるわで、いいことなしでした。

2022年に入ってからは体調管理をしっかりしようと決めて、ジムで筋トレを始めたり、なるべく歩いたり、あと最近は腸活ばっかりしています。夜はどうしてもお酒を飲むことが多いので、朝と昼は発酵食品と野菜をたくさん食べて、とにかく水を飲んで、腸内環境がよくなるサプリメントも取り入れる。そうしているうちに味覚が変わっていったのか、お刺身とか果物の柿のおいしさがようやくわかるようになってきました。生理痛も軽くなったような気がするし、ワークスタイルもかなり整ってきたなと思います。

——心のケアは、どのようにされているのでしょうか?

サーヤさん 芸人を始めた頃は、ネット上のアンチコメントにかみつきまくって大ゲンカしていたんです(笑)。でも、現実世界で会うイケている人や明るい人ってSNSに執着していない人が多くて、ましてや人を貶めるようなコメントを書き込んでいるという話は、彼らからは聞いたことがないんですよね。それに気がついてからは、SNSとはほどよく距離をとれるようになりました。

あとは、なるべく昔の友達と会って、なんでもない話をするようにしていますね。過去の自分と今の自分をどっちも知ってくれている人と会うことで、心のバランスが保てるというか。『礼賛』メンバーの休日課長とも、よく飲みに行きます。課長が酔うと、私の中で“確変”って呼んでいる、課長がまわりの人をただひたすら褒めるだけの時間が始まるんです。それは、今の私にとって、気持ちよくお酒が飲めて、いちばん心が癒される時間でもあって。課長にかぎらず、『礼賛』のメンバーはみんな明るい空気を発しているんですけどね。私のメンタルヘルスが整ったのは、『礼賛』のおかげかもしれない。一緒にいるだけで楽しい気分になれる人と過ごすだけでも、メンタルってだいぶ変わるんじゃないかと思います。

取材・文/吉川由希子 撮影/アキタカオリ 構成・企画/種谷美波(yoi)