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[歌手 井上あずみさん](上)アイドルデビューしたが全く売れず、「となりのトトロ」の後も時給650円のアルバイト…歌手一本になるまで苦労
歌手にはなれたけど、人気アイドルの中で自分の居場所がない
――83年と言えば、森尾由美さんや松本明子さん、伊藤麻衣子さんたちがデビューしましたが、歌のヒットが少ない「アイドル不作の年」と言われましたね。ただ、82年が中森明菜さん、小泉今日子さん、早見優さんたち、松田聖子さんは80年。前年までにきら星のように人気アイドルが登場していたという事情もありますね。
先輩たちは本当にすごくて、オーラがありましたよ。松田聖子さんを目にした時は、ガラスの肌! ピカピカ光って見えました。中森明菜さんはすごく大人っぽくて、私のヘアスタイルが乱れていたのか、「私のヘアアイロン貸してあげる」って言われて、めっちゃいい人でした。楽屋に入れただけでうれしい(笑)。そんな感じでした。
――その中で、自分もアイドルの一人として、勝負していくわけですね。
歌手になるっていうハードルはクリアしたけど、歌手になったらまた大きなハードルがあったという感じです。アイドルでやっていきたいという気持ちはあったけど、テレビもラジオも先輩たちが頑張っているから、私の出番はないんです。いす取りゲームですよね。3年ぐらいシングルを出したりしたんですけど、事務所がなくなってしまいました。歌う仕事は全然なくて、フリーのタレントとして、テレビのリポーターやイベントの司会、2時間ドラマとか映画にちょい役で出させていただくような仕事……。それに生活するために、喫茶店でアルバイトもしていました。
「天空の城ラピュタ」のエンディング曲の歌手に選ばれた
――ジブリ作品「天空の城ラピュタ」は多くの方に愛され、エンディング曲「君をのせて」も人気がありますね。売れないアイドルにどうしてこの作品に参加するチャンスがめぐってきたんですか。
歌の仕事はなくても、アーティストやレコード会社の方とかいろいろな方が妹みたいにかわいがってくれました。食事をしている時に、「あずみちゃんって歌手だったよね。アニメのサントラ歌う人探しているんだけど、オーディション受けてみる?」って言われたのがラピュタに参加するきっかけでした。
あの頃は、アイドル全盛期だったので「あずみちゃん、せっかくアイドルでデビューしたのに」という人もいましたがとにかく歌の仕事がしたかったので、自分の歌をカセットテープに入れて、作曲家の久石譲さんの事務所に持っていきました。そうしたら折り返し連絡があって、「この歌覚えて」って事務所の方に言われて久石さんが歌っている「君をのせて」のテープを受け取ったんです。いい歌で、このテープがすごく良くて、今でも宝物にしています。
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