建部巣兆

建部巣兆筆「うち水の」自画賛幅

冨田鋼一郎

「うち水の」自画賛幅

うち水の雲きりに立つ牡丹かな 巣兆 印「松甫」

打ち水で咲き誇った牡丹からいっせいに精気が立ち上ったようだ。略画ながら生き生きした牡丹が眼前に迫る。力強い句だ。

この句から直ちに連想するのは、蕪村の一連の牡丹の佳句。

みじか夜の夜の間に咲けるぼたん哉
閻王の口や牡丹を吐かんとす
虹を吐いてひらかんとする 牡丹哉
方百里雨雲よせぬぼたん哉

地車のとゞろとひゞくぼたんかな
ちりて後おもかげにたつぼたん哉

建部巣兆(たてべ そうちょう1761-1814)
俳諧師・画師。本名、建部英親。号、黄雀、秋香庵・茶翁。白雄門。酒を好み、客を愛し、書画に秀でた。書は、豪壮雄勁な筆勢、画は鳥羽僧正や蕪村を慕い、市井の風俗人物を描いて飄逸洒脱、俳画の妙を発揮する。なお、俳画には、父の号「松甫」の印を多く用いた。亀田鵬齋や抱一との交流も多く、俳家では、成美・道彦・士朗・長齋・大江丸・平角・乙二らと親交。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
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