マック過去最高益を生み出す"どん底改革"

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■実は事件が起きる前から行き詰まっていた

日本マクドナルドHDが好調だ。2017年8月の既存店売上高は前年同月比14.5%増と21カ月連続でプラス。17年12月期通期では過去最高益を更新する見通しだ。

14年に発覚した鶏肉偽装事件やその翌年の異物混入事件など食の問題でイメージが落ち込んだ同社。15年12月期通期では347億円という上場以来最大の赤字を記録した。まさにV字回復といっていいだろう。

ただ、マクドナルドのビジネスモデルは、実はこれらの事件が起きる前から行き詰まっていた。売上高で見ると、同社のピークは08年の4064億円で、その翌年から減少が始まる。事件が起きる前年の13年には2604億円まで落ちていた。

そんな下降基調の中で“泣きっ面に蜂”のように起きたのが鶏肉偽装と異物混入で、それによって大きな赤字を計上するまで追い詰められたのだ。

■下降線をたどった原因はサービスのマンネリ化

しかし、一度どん底まで落ちたことにより、ビジネスを全方位的に見直す改革を断行できた。それが「マックカフェ」であり、不採算店舗の閉店や既存店の改装、既存メニューの抜本的な見直しなどだ。

なかでも、ポケモンGOとのコラボレーションや「マック派vsマクド派」のハンバーガー対決などは話題を呼んだ。食の安全についても商品パッケージにQRコードを印刷し、原材料の原産国などを読み取れるようにした。

下降線をたどった原因は、知名度や人気にあぐらをかいたサービスのマンネリ化にあった。そこを払拭するために次々と新たなイベントや改善策を打ち、功を奏したということだろう。結果として客単価と客数をどちらも改善させた。

来年、再来年も現在の利益水準は維持すると見ているが、それ以上の成長を見込むためにはやはり店舗数を増やしていく必要がある。今後、再び出店攻勢に転じるのか、そしてそれが成功するのかどうかが今後の大きな分かれ道となるだろう。

(楽天証券経済研究所 アナリスト 土信田 雅之 構成=衣谷 康)