なにこれサイコーじゃん! アップル「AirPods」の実機は週イチ充電で聴きまくれる無線イヤホンだった

文●イトー / Tamotsu Ito

2016年12月19日 18時45分

アップル初の初のワイヤレスイヤホン「AirPods」の出荷がようやく始まりました。国内価格は1万8144円(税込)。そろそろ国内の初期ロット予約組の人たちの手元にも届き始めています。

さっそく、僕の手元にやってきた製品版AirPodsを触りながら、2016年9月の海外発表以降よくわかっていなかった疑問点を確認していくとしましょう。

非常にコンパクトな製品パッケージ

AirPodsは左右をつなぐケーブルもない完全ケーブルレスの無線イヤホンです。製品は相当小さいわけですが、パッケージ自体も小型。手のひらに載ってしまうサイズです。

職業柄慎重に開封してみると、中身は二層構造。紙蓋のようなスリーブには複数の言語で最初のペアリングの方法が書いてあります(が、iPhoneユーザーの人は読む必要はありませんよ、理由は後ほど)。

かなり小型のパッケージ。まさに手のひらサイズ。

開封してみたところ。あ、アップルのパッケージだね、という質感と付属品構成。

製品の外観は2016年9月にサンフランシスコで開催されたApple Eventの会場で目にしたものと同じですが、自分の手元に来るとまた印象が違います。

ケースは注意深くデザインされていて、小さい。薬ケースのようなサイズ感。蓋を開くと、事前に聞いていたとおり、これだけでAirPodsはいきなり電源オンです。

そして10秒と待たないうちに、脇に置いてあるiPhoneが勝手に反応し、ペアリング画面が立ち上がります。「接続」を押せば、ケースとAirPodsそれぞれの充電容量を認識して使用準備完了状態に。わかっちゃいるけど、これは本当に簡単ですね。

最初から充電ケースに収納された状態でパッケージされているAirPods。この辺の見た目は2016年9月のサンフランシスコでの発表イベントで見たときの記憶そのまま。ケースを開くと自動的に電源がオンになり、iPhoneが自動認識してペアリングのダイアログがポップアップする。初期充電は70%。

AirPodsは装着感よし、基本操作はすべてSiri

装着してみたところ。耳穴に載っけてるだけの割には、落としそうな雰囲気は意外と(?)まったくといって良いほどありません。

さて、生活環境で使ってみるAirPods、最初に思ったのは「随分ノリのいいサウンドだな」ということと、「軽くて装着感がかなりいい」ってこと。iPhone付属のEarPodsゆずりのイヤーパッドのない独特の形状のため音漏れはゼロではないですが、静かな室内で使いながらほかの人に聞いてもらっても、音漏れはほぼしてないそうだ(音漏れチェック用の曲はあえて音漏れしやすそうなヘビメタ曲を選んでみました)。少なくとも電車内などでは相当な爆音にしない限りは大丈夫じゃないでしょうか。

音質面は、原音忠実系というよりは中域にボリュームを持たせて楽しませる方向に振ってる感がありますが、アップテンポな音楽やダンスミュージックにはとても合うし、不自然な低音強調もなくて印象は良好です。
イヤホン部分の形状はEarPodsと同じでも、奏でる出音はAirPodsの方が数段ふくよかで好ましく、EarPodsの厚みと抑揚の薄い感触とはまったく違います。AirPodsの設計にあたって、アップルがきちんと価格なりの音のチューニングも考えていることがうかがえます。

そして個人的にとても重要だったのが装着感。数時間にわたって連続使用してみたところでも、手持ちのイヤホンのなかでは、自分の耳の型どりをして製作したカスタムIEMに次いで、耳疲れしない。これはかなり意外でした。
理由を考えてみると、まずEarPodsゆずりの形があります。耳の「穴」に入れるのではなくて耳に載っけるような独特の構造で、さらにケーブルレス化によってさらに圧迫感がなくなっているせいでしょう。

気になるAirPods(左)とEarPodsの外観を比べてみました。耳に入れる部分のサイズは同じようですが、ステム部分の太さが全然違います。よく見ると、外側の穴の大きさも違います。

軽さと外れやすさは紙一重な気もしますが、一方で僕が使っている限りでは、少なくとも相当激しい運動でもしない限り、「歩いていて耳から落ちてしまう」ということもまずなさそうです。

圧迫感については、使う人の耳の形にもよる部分もあるので、気になる人はiPhone付属の有線イヤホンで装着感を試してみるといいかもしれません(見たところ形状はほぼ同じように見えます)

さて、AirPodsは、装着したままトントンと本体をノック(ダブルタップ)することで、Siriが立ち上がるようになっています。音楽の再生/停止やボリューム調整やらはすべてSiri経由です。

最初はSiriがうまく起動できないことが多くて首をひねってたんですが、どうも自分の髪が耳にかかっていたせいで、指>髪>AirPodsになって反応が悪かったようです。操作時に髪がAirPodsにかからないようにするとうまくいくようになりました。

音楽の再生・停止や調べ物はSiriを使いやすくなって良いですが、音量の操作くらいはノックジェスチャーでなんとか解決してほしい気もします。結局、音量調整はiPhone本体側で操作した方が早いので、曲送りと一般的な音声操作のみSiriを使うという使い方で定着しました。

連続再生はリアルに5時間、実質は20時間以上使える

これまでBluetoothイヤホンを何本か使ってきてますが、選ぶ際、特に気にするのは3点。

1)音質が満足いくものか
2)装着感が良いか
3)バッテリーは十分のもつか

1)と2)は十分なレベルなことがすぐにわかったので、問題は3)のバッテリー駆動時間です。まずバッテリーが切れるまでずっと音楽を聴き続けた場合。約4時間50分経過したあたりでバッテリー低下の警告音が鳴り始め、ほぼ5時間ちょうど経過したころに左耳の再生が切れ、5時間5分で右耳も含めて完全にバッテリーが切れました。

ちなみに、3時間だけ音楽を聴いて、あとはケースに入れずに放っておいてみた場合では、約12時間でバッテリーが切れています。

話を戻して、連続再生時間だけを見ると、片道1時間程度の通勤通学だと2日使うとバッテリーが切れるという計算になります。

ただし、実際の利用シーンでは充電器を兼ねるケースの存在がポイントです。この小型さのために未使用時は毎回充電ケースにしまうことになるはず(そうしないと一週間と経たず紛失しそうです。少なくともポケットに素で突っ込んでおく気にはなりません)。

ケースの充電能力は、AirPods本体を0%から100%まで充電して17%〜20%バッテリーが減るので、約5回は充電できる計算。

ということは、実質的にはおよそ20時間は、「充電」してる感覚なしで使えるわけです。片道1時間の通勤で使う僕の使い方なら、ケーブルに接続しての充電は、1週間に一度で十分、ということになります。実質的な充電頻度という意味では、意外なほど実用性がありそうです。

またケーブルレスのイヤホンということで無線の感度、接続安定性がどの程度なのかも気になるところですが、木造家屋での利用では、1Fのリビングに置いたiPhoneから床一枚隔てた2Fという距離感でも途切れはありません。手持ちの他のBluetoothイヤホンと比べても、今のところは遜色ない感度という評価です。

AirPodsはどの程度「買い」なのか?

AirPods、なんというか実物は想像していたモノとは良い意味で違った使い心地でした。Siriの操作感にはさほど目新しさは感じませんでしたが、長時間使っても耳疲れしない装着感の良さ(耳の形次第かもしれませんが)、一般的なBluetoothイヤホンと比較しても、この軽量さでありながら実は遙かに充電頻度が低くて済むというのは、毎日使うギアとしては重要なポイントです。

別の機会に書こうと思いますけど、一般的なBluetoothイヤホンとしても使えるので、実はiOS/Mac専用というものでもありませんしね。

競合をみると、ケーブルレスのイヤホンは国内でも「earin」や「erato」、ONKYOの「W800BTB」なんかが先行してます。価格帯は有名どころは2〜3万円台といったところ。アジアメーカーの数千円台の安価なものは別にして考えると、AirPodsはむしろ価格が安めのクラスにあたり、モノのデザインの良さも加味して考えるとお買い得感もあります。

個人的にはこれらの点だけで十分「買って損なし」という評価です。

一方で電車内など騒音下の利用で外部騒音を完全シャットアウトしたいというような、ノイズキャンセルイヤホン的な使い方をしたい人には、本機は不向きでしょう。

ネット通販では既に品薄で納期が数週間の表示になっていますが、新MacBook Proシリーズがそうだったように、アップルストア店頭などリアル店舗での在庫状況はまた別になる可能性はあります。Web版アップルストアで「店頭受け取り」を選んでみて、在庫店舗があるかどうか、頻繁にチェックしてみると良いかもしれませんよ。

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