にっぽん人的に納得いかないかもしれない、World Value Surveryをシェアします。

日本語では、「世界価値観調査」。Jan Kerkhofs と Ruud de Moor、そしてRonald Inglehartらによって調査研究が進められ、インターネットで公開されています。

 

世界の国単位、文化圏単位の価値観のありようと言いましょうか。色分けされたグループは、欧州系プロテスタント、カトリック、儒教、アフリカン・イスラミックとか、英語圏とかオーソドックスとか、結構な軸ブレを見て取る事ができるのですが、まあ「目安」という事で。このマップは、イングルハート-ヴェルツェル図とも言います。

 

worldvaluessurevey.comより

 

上の図は、縦軸には、伝統主義(Traditional) vs. 世俗的合理性(Secular-Rational)を取り、横軸にはマズロー的な欲求の発展段階、つまりSuvival(=生き残り=衣食住充足や社会参加欲求) vs. 自己実現欲求を取った4象限に各国の文化的特性の意識調査の結果をプロットした2015年版です。

 

Traditionalは、「伝統」なのだけれども、ここでいう「伝統」は宗教的戒律を含む文化・文明的な硬直さや、いわゆる文明化以前のことを言っているように見える。

 

Secular-Rationalは、「世俗的 - 合理性」で、そうしたTraditionから離れて自由に暮らせる社会的コンセンサスがあるかどうかなのだろう。おそらく、TraditionとSecular-Rationalで、社会的コンセンサスの様態を示しているのかな?

 

Survivalは、「生き残り」…マズロー的に言えば「低次の欲求」と言われれる、生理的欲求、安全への欲求、社会的欲求の強い状態なのだろう。これはコミュニティや社会のコンセンサス、国家経済などと連携するので「外界への欲求」とも呼ばれる。そこに希求する価値があると。

 

Self-Expressionは、「自己表現」なので、マズロー的な欲求体系を当て嵌めると、「高次の欲求」とか「内的欲求」で、「尊厳欲求(承認欲求)」と「自己実現欲求」ということになるね。

 

でこの調査と分類は、1981年から行われていて、2015年までの「価値観の推移」が動画になっています。

 

 

これを眺めていて思うことはいろいろあるのですが、ここでは3つ。

 

ひとつめは、日本がConfucian=儒教国ってのは、何を以ってという気もします。日本は十分に伝統を残していますし儒教もその一部分として残っていますが、神道や仏教など、儒教とは本質的に異なる価値観も並列的に存在しています。またこれらは世俗的合理性とも高い次元で両立しています。日本の宗教的・文化的伝統は非常に高い柔軟性があります。したがって、ちょっとこの分類では表現できない何かがあるように思います。日本文化は世界の文化的傾向の中では「特異点」と考える人がいるのも首肯できます。というわけで、WVSはあくまでのOne of themの指標であるということです。

 

ふたつめは、上記のようなことから「アテにならない」と考え、否定する向きもそれなりにいるのだろうと思いますが、こうしたフレームで見る人たちが存在する、ということは受け止めなくちゃならないなと思う次第です。ただこうした統計は、作成者の価値観を強く反映すると共に、先入観を生みがちです。多くの場合、こうしたマクロ的先入観が、態度の作り方や意思決定に、メリットとデメリットをもたらすということに注意が必要です。おそらくイスラム圏の学者が作れば全く違うものになるでしょう。

 

みっつめは、これって個人、つまり自分やあなたの社会的価値観の位置がどこにあるかということを知るのに応用できるかもしれないね、ということです。生活苦しいのに、家族の価値観の制約が厳しい(実家の価値観の押し付けが厳しいとか、なんらかの宗教や風習などに囚われている)人たちの欲求と欲が進む方向が見えるような気がします。また、逆に自己実現を達成し自由を獲得しているのに、伝統的なものを大切にする/しない、などの価値の傾向も見えるような気がします。

 

ある種、いまは激動の世の中です。WVSは世界各国の政府関係者の視点を形成するのに引用されたり、企業のマーケティングや、人材育成・教育の分野での未来感の視点形成にも使われています。もうすこし深く勉強してみたいテーマではありますので、また書くかもしれません。

 

 

 

BGM:

Enigma, "Return To Innocence"(1993)

 

グレゴリアン・チャントとエレクトリックなダンス・ビートをミックスして、「Sadness」で一世を風靡したエニグマ(このブログのプレイリストにも入っているよ)。この曲はなんというか、無常感の歌なのかな。イノセンス(無垢)に始まってイノセンス(無垢)に終わる。独特のスキャットは台湾の原住民アミ族の歌。Difang(郭英男)のスキャットを無断でサンプリングしたとしてエニグマは訴えられたが、後に和解している。

 

Good Luckクローバー