AMHとAFCの関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、生理周期によるAMHとAFC(胞状卵胞数)の関係を調べたものです。

Fertil Steril 2015; 104: 1535(ドイツ)
要約:生理不順のない不妊症でない女性40名(18~37歳)を対象に、毎日の尿を提出、卵胞が16mmになるまでは隔日の採血と超音波検査、卵胞が16mm以上となってからは毎日の採血と超音波検査を行いました。高精度の超音波を用い、卵胞サイズは2~4mm、5~7mm、8~10mm、11~13mm、14~16mm、17~19mm、20mm以上の7群に分けて測定し、AMHとの相関を検討しました。AMHは7mm以下の卵胞数と正の相関を示しました。AMH >1.0 ng/mLの方に限ってみると、排卵5日前から排卵後2日までAMHが減少しました。生理周期のどの時期でも、AMH測定によって、7mm以下の胞状卵胞数が予測できる式の作成が可能となりました。

解説:2010年に2種類あったAMH検査がひとつになり、現在Beckman Coulter Gereration II測定系が用いられています。簡単なわかりやすい表現ということから、AMHは卵巣年齢などと呼ばれ、残存卵子数を示すと巷では言われれいますが、実は残っている卵子数を示すものではなく現在供給されている卵子数を示しています。つまり、倉庫の中身ではなく、倉庫から搬出されている途中のものをみているわけです。そのような観点から、本論文を読むと「AMHは7mm以下の卵胞数と正の相関を示すこと(小さな卵胞=AFからAMHが出る)」「排卵5日前から排卵後2日までAMHが減少すること(大きな卵胞はAMHを出さない)」が理解できます。卵子の供給量を減らすものが、ピルやGnRHa製剤(リュープリン、ナサニール、ナファレリール、スプレキュア、ブセレキュアなど)ですから、これらの使用によりAMHは一時的に低下します。出生時が最も残存卵子数が多いですが、20代前半までは卵子の供給量が低いため、AMHが最大になる時期は25歳ころです。

私が外来でピルを極力使わないようにしているのは、卵子の供給量を減らしたくないためです。かつては、卵子の大きさを揃えた方が良いとされていましたので、ピルやロング法(GnRHa製剤を長く使う)が用いられてきましたが、卵子の大きさを揃えるメリットが乏しいことが明らかとなってきた今では、この両者による卵子の供給量を減らすデメリットだけが残ります。なお、ショート法は卵巣の抑制がかかる頃に採卵になるため、卵子の供給量を減らすことにはなりません。

AMHと卵子の供給量についいては、下記の記事を参照してください。
2015.10.4「ピル服用でAMHが19%低下」
2014.11.8「☆ピルを飲むとAMHが減ります」
2013.9.18「Q&A77 ☆AMHが増えました♡」
2013.6.16「☆☆☆AMHは年齢とともに低下しません⁈」

卵子の大きさを揃えるメリットがないことについては、下記の記事を参照してください。
2014.1.17「☆☆「良い卵子」とは?」