葛の驚くべきパワー | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

 

葛は雑草の王者と言われ、農家にとっては天敵のようなものだ。

どんな場所でも繁殖、根を伸ばし、そのつると大きな葉は高い木さえも覆い尽くし枯らしてしまう。

道路端や線路の土手など油断すると全面葛に占領されてしまう。

 

原産地は日本で、全国に自生している。

葛の根はでんぷんを多量に貯蔵、昔から葛粉を利用してきた。

葛餅などお菓子としての知名度が高く、吉野葛はブルドーザーで収穫されている。

また漢方薬の「葛根湯」は葛の根のことだ。

 

これだけ暮らしに密着している葛だが、その姿形を知っている人は意外と少ない。

萩、葛、桔梗、女郎花、枯尾花、撫子、藤袴と秋の七草にもなっているくらい昔から親しまれていた。

葛は栄養価に富み、家畜の飼料としても最適な植物だ。

あっというまに地表を覆い尽くし、土壌を雨滴の侵食から守り、落ち葉は腐植質を与え、保水力を高め、地力を増進する。

砂漠などの土壌を保全するには最高の植物だ。

 

実際中国などの土壌改良にも使われているが、フィリピンのピナツボ火山噴火跡の荒廃地に根付いたのは葛だけだった。

嫌われ者の葛でも利点だけでなく、視点を変えれば欠点も最高の利点になる。

他の植物もこうして活用すれば世の中に役に立つものが多い。

 

葛のつるは、太いもので1日に1mも伸びる。

そんな樹木も草も他にはなく、唯一、竹だけだが、竹は木にも草にも属さない。

竹も日本文化に密着してはいるのだが、放置され荒れ果てた竹林は手がつけられないほど山を覆い尽くし、他を駆逐してしまう。

これも欠点を利点に変えれば有効活用出来るはずだ。

 

まったく知られていないのが葛のつるの旨さだ。

マメ科の植物の多くはコクがあって美味しい。

カラスノエンドウやレンゲのおひたしは歯ざわりも最高だ。

葛も葉もつるも花も食べられる。

夏に咲く紫色のブドウのような花はジャスミンに似た香りで、香りもお茶も毎年楽しんでいる。花酒にしても良い。

これから夏まで猛烈に伸び続けるツルは毛だらけで不味そうなのだが、天ぷらにすると絶品だ。

 

初めて食べさせた人は驚きの声を上げ、病み付きになってツルを採取するようになる。

タラの芽よりも旨くて食べやすいと言う人もいた。

先の柔らかい部分を30cmくらい摘むと水が噴き出すくらい生命力がある。

あの水を何とか利用できないか思案中だ。

旨くはないが化粧水やドリンクとして最高ではないかと思っている。

 

関心の強い女性は是非試してもらいたい。

葛のつるを洗わずに黒砂糖をまぶし、付着した微生物を活性化させ抽出した液は薄めて飲んでも活力剤になるが、500倍に薄めて植物に葉面散布すると驚くほど勢いを増す。

葛のパワーは人知を超えるほど強烈だ。

葛も竹も研究に値する植物だと思っている。