今回、私は『差別問題』について
珍しく真面目に書いてしまっています

特定の対象を批判したり
揶揄したりするつもりはなく
「純粋に私はこういう疑問を抱いたのですが
皆様はどう思いますか」という内容を
記したつもりです、どうかよろしく


今回パリ・東京間を飛行機で移動する間に
私が機内で観た映画およびドラマは
『ミニオンズ』
『インサイドアウト』
『太陽がいっぱい』
『ビッグバン・セオリー』
『フレンズ』
『アラジン』
『レインマン』

どれもなかなかに面白く、
初めて観る作品が新鮮である一方
かつて観たことのある一本も
時間を置いて観直すと
またそれはそれで楽しいものでございます。

で、『ミニオンズ』、私はこの映画を
いつかちゃんと観たいと長いこと
願っておりまして、今回その望みがかなって
一満足ということろだったのですが、
愉快なエンディングが終わって
私が最初に考えたことは
「この映画が差別的であるという声が
起きない現代社会とはいかなるものか」。

ここで最初に明言しておきたいことは、
私はこの映画が絶対的に差別的であると
言いたいわけではないのです。

ここ、大事な点なのでよろしく。

ただ、もしこの作品が1980年代後半から
90年代にかけてに製作されていたら、
『黄色い』『小さい』『バナナ』
『眼鏡をかけている』
『英語をしゃべれない』
『最強最悪の主に
仕えることを生きがいとする』
『子供のようである』
というこのミニオンズの特徴というか
キャラクターについて
「あの・・・これは日本人もしくは
アジア人に対するカリカチュアですか?」
という声がどこかからは
出ていたと思ったんです。

しかし現代2016年にそういう声は
大いなる響きとなって世を揺さぶらない。

それは何故なのか。

これはいいことなのか、悪いことなのか。

『ちびくろさんぼ』が本屋から消え
名作と呼ばれていた小説・漫画にいっせいに
『本作品には今日の観点からすると
差別的と感じられる表現がありますが・・・』
という但し書きが入るようになったあの時代、
当時子供であった私の実感として
あの一時期の世間の反応というか対応に
「なんか、ちょっと、過剰」
という思いがあったことは否めない、
ただ確かにそれまでの社会が
無意識に許容していた表現のいくつかが
受け手によっては差別的と感じられる
ものなのかもしれない、という認識を
その後の我々が得られたことには
大きな価値があった、というのが私の理解。

映画『ティファニーで朝食を』に登場する
日本人写真家のユニオシの描写は
映画が公開された当時は
何の問題もなく世間に受け入れられた。

監督も俳優もたぶん意識していたのは
『コミカルな演技による笑いの誘発』。

しかし今、いわゆる『今日の観点』に基づいて
ユニオシの登場場面を観ると
人はなんともいえない気持ちになる。

監督にも俳優にも明確な差別意識は
なかったと思われるからこそ我々は
さらに苦い思いを噛み締めることになる。

こうした過去を踏まえたうえで最近のコメディ
(といっても私は最近コメディ番組や
映画を真面目に観ていないので
例に挙げる作品は少し古いものになりますが)
たとえば例の『ボラット』は
そこに存在する差別を見据え、
その卑怯さを十分理解したうえで
あえて境界を踏み越え笑いを狙う。

「障害を持った人を笑ってはいけない、
というのは本当に面白い障がい者を
あなたが見たことがないからじゃないですか?」
という凄まじい発言をかますボラットを観た後に
モンティ・パイソン』の
『上流階級アホ決定戦』を観ると
その『アホ』の描写がどこまでそこにあるべき
『境界』を意識していたのか疑問を感じることになる。

私は長年の『モンティ・パイソン』ファンで
『上流階級アホ決定戦』を初めて観たのは
たぶん大学生時代、その時点では何の疑問も持たず
彼らの上流階級に対する悪意に笑っていたのが
後年とある人と同じフィルムを観た時に、その人が
「僕には知的障害のある身内がいるんだけど、
このパイソンズの『アホ』の演技は表情や
声の出し方からそうした知的障害者を
模しているように思えるんだけど、これは
そういう描写に自分が過敏すぎるのかな」
と言われた時にはっとした経験があるのです。

そこらへん『フォルティ・タワーズ』において
『英語が喋れない故に意思の疎通に齟齬があり
結果として周囲から侮られるスペイン人』という
人物をジョン・クリースは意識的に造形し
そんなキャラクターを笑う観客たちに
「君たちは今、能力的に劣る相手を
その能力の衰え故に笑っている、
どうだ、面白いか、そしてこれを面白がる
自分のことをお前は笑えるか」と攻撃的に
世に問うているように私には感じられます。

つまり『差別』を意識的に表現するか
無意識的に露見させてしまうかの差。

こういう問題は考えていくと
どんどん深みにはまっていくもので
じゃあ日本の古典落語における
『与太郎』の扱い、あれはどうか。

ミュージカル『王様と私』において
『王様』がその英語能力の稚拙さを
あらわすことによって観客の笑いを
取りに行く演出は許されるのか。

プッチーニの『蝶々夫人』について
人種差別的であると主張する人がいる一方
「そんなこと全然思わない」
と軽くあしらう人がいるのは何故か。

そこらへんの判断は個人が
各々くせばいい、というのが私の考えです。

今の世の中、重箱の隅をつつくように
「差別、差別」と声を上げるのは
あまりスマートではない、と受け取られる
リスクをともなう行為。

が、忘れてはならないのは、
それほど『昔』ではない過去の一時期に
世間からどれだけ嘲笑と罵声を受けようと
声をあげ続けた勇気ある人たちのおかげで
現代先進国に住まう我々は
今ここにある倫理に基づいて
(つまり差別は正しくないとする社会にて)
生活できるようになったということ。

それでもまだ世に残る諸々の『差別』について
世間から行き過ぎ・被害妄想と後ろ指を
指されるほどには過剰に反応したくはないが、
しかしそうした問題を他人事とし
事象に気付かぬほど鈍感にもなりたくない。

そんなわけで『ミニオンズ』。

私がこの映画に黄色人種に対する
揶揄を軽く感じてしまうのは、
日本人が『イエロー』『バナナ』と
陰口をたたかれていた時代を
まだまだしっかり
覚えているせいなのかもしれません。

「え?これのどこが差別的なの?」
という観客が大勢である、ということは
裏を返せば一時期そこに存在した
『差別』が現在消失した・しつつあることの
証左であるのかもしれません。

ミニオンズの一人が作中で
突然インドネシア語を口にした場面、
私はインドネシアの観客の
心情を慮って一瞬息がつまったのですが
ジャカルタ・ポスト』なんかは
逆にあの母国語の採用を喜んでいる様子。

それにこの映画の監督である
ピエール・コフィン氏は
インドネシア人とフランス人の
間に生まれた方でいらっしゃるので、
そこらへんも踏まえてのインドネシア語の
選択だったのかとも思うのですが、
でもなあ、コフィンさん、私より年上でしょ?

えっ、アジア人がイエローと呼ばれて
蔑まれていた時代なんてありましたっけ?
とは口にできない世代でございましょ?

ただですね、もしこの映画が公開された当時に
「『ミニオンズ』は明らかに
黄色人種に対する蔑視に満ちている、
その上で彼らが主人として選ぶのは
近世以降は白人ばかり、
こういう映画の公開を喜びありがたがる
アジア人というものは云々」という批評が
日本で全国紙に載ったりなどした場合、私は
「たかがエンタテイメント作品に
そこまで熱くならんでもええではないか」
と感じたのではないかとも思うこの不思議さよ。

ともあれ、『ミニオンズ』が制作・公開された
時点において、この作品が差別的であると
指摘する声はほとんどまったくなかった。

将来、こうした情勢は
変わるのか、変わらないのか。

時代とともに
ユニオシへの評価が変わったように。

変わるべきなのか、変わらぬべきなのか。

皆様もお暇な時にご一考くださいませ。


ミニオンズ、それ自体は
造形的にも音声的にもモーション的にも
非常に可愛らしいキャラクターであること、
これは間違いないと思います

私だってあんな生き物を3匹くらい
家に欲しいですよ!
ダース単位でもらいうけてもいい!

私は結構性格的に最悪な方なので
ミニオンズの『最強最悪の主が欲しい』願望も
ある程度は満たせるんじゃないかしら

そして我々は世間の山羊嫌いの人々に
生きた悪夢をお目にかけるために
そこらへんの丘3つくらいを利用して
スコットランド一の山羊農場を経営するの

敷地の一番日当たりのいいところに
温室を作ってバナナを栽培し
これをミニオンズへのご褒美とする、
天気のいい日には私も率先して
歌と踊りを彼らと楽しむ、
なんと完璧な『パンとサーカス』施政

さて、明日からは
スコットランド帰宅日記となります

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今日の私の記事を読んで
純粋な『ミニオンズ』ファンが
悲しくなったりしないでほしいと
強く願う気弱な私です

そういうことを狙ったんじゃないのよ、本当

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『フォルティ・タワーズ』は
悪意に満ち過ぎていて受け入れられない!
という人は心清らかでありたいと願う
美しい人たちなのだと思います

私はね、そういう清らかさは
ずいぶん昔にさらっと諦めたので

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『モンティ・パイソン』が
常識・タブーに戦いを仕掛けることを
基調においていた集団なのは確か

そこに痺れ、憧れつつ、
『今日的な観点から』
自分の笑いを検証したいと願う真面目な私

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私は幼い頃にこの映画を観て
ユニオシの描写に割と傷つき
故に原作を読むのが遅くなりました

で、原作のユニオシは映画の彼とは
まったく別人なんですよ

まだ原作を読んでいない人は
ぜひそこらへんをお確かめの上
私の得た衝撃をご共有ください
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・・・ヘプバーンが表紙のほうの
新潮文庫を貼ろうとしても
どうしても貼れない、何故か