「ソイレント」だけを30日間飲んで過ごすとどうなるのか？

人口増加に伴う世界的な食料不足を解決するために製品化された「ソイレント」は、従来の食事を取らなくても人間に必要な栄養素を摂取できる完全栄養食品。では、実際に30日間ソイレントだけを飲んで過ごすとどうなるのか、自らの体を実験台にした男性のドキュメンタリームービー「Soylent: How I Stopped Eating for 30 Days」が公開されており、普段感じられない「食べるという行為」の本当の意味を知られる内容になっています。

How I Ate No Food for 30 Days | Motherboard
http://motherboard.vice.com/blog/soylent-no-food-for-30-days

Soylent: How I Stopped Eating for 30 Days - YouTube

ソイレント30日間生活に挑戦するのはブライアン・マーチャントさん。

マーチャントさんは実験の間、サンフランシスコにあるSoylent Corporationに行って、ソイレント開発者にインタビューを敢行。

サンフランシスコのホテルで第1日目のソイレントを飲むマーチャントさんは「これから1カ月間ソイレントしか口にできないなんて、まだ信じられないね」とコメント。

ソイレントを楽しんだ後はSoylent Corporationのロブ・ラインハートCEOと対面。

24歳のラインハートさんは「増え続ける人口を自然から取れる食べ物だけで支えていくのは不可能だと思います。食糧問題を解決するには、何か他のモノが必要。安価で健康的なソイレントは、食料に代わるモノになる可能性を秘めているのです。また、環境問題の解決策になるかもしれません」とソイレントが秘めている可能性について話してくれました。

ラインハートさんはソイレントの安全性を実証するため、自ら30日間ソイレントのみを食べて過ごし、その経過をインターネット上で公開。

30日後に健康診断を受けた結果、健康に何の問題も見つかりませんでした。

ソイレントは「未来の食べ物」としてインターネット上で話題になり、ウェブメディアでも取り上げられます。

ソイレントを製品化するためKickstarterで出資を募ったところ、1カ月で約80万ドル(約8000万円)もの資金を調達。集まった資金でSoylent Corporationを立ち上げます。

こちらは実際にソイレントを生産しているところ。

ソイレント１週間分は65ドル(約6500円)

ソイレントに含まれているのはエンバク粉・マルトデキストリン・米タンパク質・菜種油・食物繊維・グルコン酸カリウム・ナトリウム・鉄分・亜鉛・塩化物。

先に挙げた含有物はAmazonなどから仕入れているとのこと。

ソイレント生活2日目。マーチャントさんによると、ソイレントを飲んだ2分後くらいに満腹感を感じるそうです。

Soylent Corporationへのインタビューを終了したマーチャントさんはニューヨークにある自宅に戻ってきました。

ソイレント生活5日目に突入しても「おなかいっぱいだし、とても健康的だと思う」と語るマーチャントさん。

実験開始から8日目。おなかがすいたマーチャントさんは、ソイレントを作ったときの残りかすを食べることに。

外出するときもソイレントは手放せません。

ソイレント生活13日目、マーチャントさんは少しやせた感じで表情にも陰りが見えます。

しかしながら、14日目にはマーチャントさんに笑顔が戻っていました。マーチャントさんは「2週間も食べ物なしで生活できたよ！体調に問題は全くないね」と語っています。

ソイレント生活17日目にマーチャントさんが向かった先は……

診療所。この日は健康診断を受けることにしました。

マーチャントさんを診断した医者は「マーチャントさんの体は健康に見えますがとても心配です。食べるという行為は、ただ栄養を補っているのではなく、人間の喜びや社会性といった部分に深い関わりを持っています」と心配を隠せません。

医者はマーチャントさんに「少しでも体に異常を感じたらソイレント生活をストップしてください。また、運動などは一切しないこと」とアドバイス。

医者が指摘した通り、マーチャントさんは友人と食事に出かけても食べられるのはソイレントだけなので、あまり外出しなくなっていました。

ソイレント生活18日目、マーチャントさんはようやくソイレントの独特な味になれてきまししたが、ソイレントしか食べられないという制約にストレスを感じ始めたとのこと。

「今1番食べたいものはフライドチキン」と語るソイレント生活20日目のマーチャントさん。

22日目にはマーチャントさんの彼女であるラフリンさんも一緒。ラフリンさんは「ブライアンがソイレント生活を始めてから、体臭が変わりました。ソイレントの臭い香りがブライアンからするんです」と第三者ならではの意見を述べています。

マーチャントさんは職場にソイレントを持参して、同僚に飲んでもらうことに。ソイレントを飲んだ同僚によると、味は最悪、特に最後の一口が本当に最悪とのこと。

反対に「うまいじゃん」とおいしそうに飲んでくれる人もいます。ソイレントの味は人によって好みがあるようです。

ソイレント生活25日目、マーチャントさんは初期の頃に比べて明らかに頬の辺りがやせてきています。

28日目のマーチャントさんは「段々、体というか頭がおかしくなってきたよ。ちょっとうつ病っぽい感じかもしれない」と明らかに精神的に弱っています。

そしてついにソイレント生活最後の30日目。

「とにかく無事に終了してうれしいよ。ただうれしい、それだけだ」とソイレント生活が終了するにもかかわらずマーチャントさんは元気がない様子。

30日間のソイレント生活を達成したお祝いに、レストランで念願のフライドチキンを食べるマーチャントさんにようやく笑顔が戻りました。マーチャントさんはフライドチキンを1口食べて「口の中や食道、胃で食べ物が動いているのを感じます」とコメントし、食べるという行為に幸せを感じているそうです。

マーチャントさんは「30日間を通して肉体的な問題を抱えることはありませんでした。もしソイレントが適切な臨床試験を通過したなら、もう一度食べてみるかもしれないね。ただ、今回の実験のおかげで、食べるという行為は幸せなことだと気づきました」とソイレント生活の感想を語っています。

ソイレントだけ食べ続けても健康に問題はありませんが、ムービー中の医者が話していたように「食事」は栄養を取るためだけの行為ではありません。ですので、ソイレントを主食ではなく副食として扱うのであれば、何ら問題がないように見えます。