トランプ大統領、「ドルは強すぎる」と発言:識者はこうみる

トランプ大統領、「ドルは強すぎる」と発言:識者はこうみる
 4月12日、トランプ米大統領は米紙とのインタビューで、ドルは強くなり過ぎているとし、ドル高はいずれ米経済に打撃を与えるとの考えを示した。2016年10月撮影(2017年 ロイター/Valentyn Ogirenko)
[東京 13日 ロイター] - トランプ米大統領は12日、米紙とのインタビューで、ドルは強くなり過ぎているとし、ドル高はいずれ米経済に打撃を与えるとの考えを示した。市場関係者の見方は以下の通り。
<セージ・アドバイザリー・サービシズの社長兼最高投資責任者(CIO)、ロバート・スミス氏>
トランプ米大統領は政治色を薄め、より現実路線に軌道修正している。
金利水準を抑制しない限り、為替水準を抑えることは難しい。だからイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長との協力を目指していることは明白だ。利上げによるドル高を招くことなく両方を実現するという、トランプ、イエレン両氏には妥協点を探る余地がある。
<BKアセット・マネジメント(ニューヨーク)のマネジングディレクター、キャシー・リエン氏>
こうした発言を行ったのは今回が初めてではない。ただ中国を為替操作国に認定すれば北朝鮮を巡る米中協議に影響が出る可能性があるとの発言は見過ごされたと感じている。
市場は大きく反応したが、トランプ氏は米国民に対し通商問題で譲歩しないと主張したかったに過ぎない可能性もあるため、反応は過剰だったと考えている。
ドルはすでに圧迫されているため、一段の圧力になるいかなるきっかけもドルのさらなる下落につながる可能性がある。
<クレディ・スイス(ニューヨーク)の世界外為戦略部門責任者、シャハブ・ジャリヌース氏>
トランプ米大統領が、ドルが強くなり過ぎていると認識していることや、低金利政策が望ましいとの考えを明確に示したことは、市場にとって新たな材料だ。
構造的なドル買い持ち状況にある中で、いずれの認識もドル相場にポジティブとは言えない。
皮肉なことに、ドルは貿易加重ベースで下落し続けているが、それでもトランプ氏の見方が変わったようにはみえない。特にドルが対円で(下落)圧力にさらされる中、今回の発言はこうしたトレンドの持続をさらにあおるようなものだ。
<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>
トランプ大統領の「ドルが強すぎる」との発言を受け、ドルは109円を割り込んだ。勢いはついていないものの、ドル/円のトレンドは完全に下向きに転換したとみており、目先の下値めどは107円の半ばと予想する。
これまでドル/円の上昇トレンドを支えてきたトランプ政権の政策に対する市場の期待、米利上げに対する期待、長期金利の上昇期待など、全て失われてしまった。
現状では、円が買われているのみならず、円以外の通貨に対してもドルの弱さが目立つ。ドル/円では、円買いとドル売りが相乗効果となって、上値を抑えている状況だ。
今後の焦点は近日中に公表予定の「米為替報告書」だ。
米国は同報告書で、個別国を為替操作国として認定しないかもしれないが、日本の通貨・金融政策に対して厳しいコメントをする可能性がある。過去には日本の当局者らによる円高けん制発言に対してまでも、不快感を示した経緯がある。
*内容を追加しました。

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