社内公用語に英語を導入する企業の増加や、4年後のオリンピックからインバウンド(訪日観光客)効果などによって、国内における外国語の需要は増える一方です。子供や孫には英語を話せるようになって欲しいと考える方は少なくないでしょう。ではいつどうやってその機会を与えればいいのか? 最近、乳児の言語能力習得に関する新しい研究結果が米国で発表されました。

800もの音を聞き分けられる能力は生後6〜12ヶ月まで

大人になってから外国語を身に付けようとして、その大変さに挫折を味わった人はとても多いのではないでしょうか。

バイリンガルの家庭にいる3歳児が、英語につづいてスペイン語を体得していく場合にその子は2つの言語をごちゃまぜに理解してしまいそうな気がしますが、そうではないということがワシントン大学の研究者Naja Ferjan Ramirez氏によって明らかにされました。

研究によると、赤ちゃんは生まれる前から言語を音として聞いており、子宮の中では母親の声は一番耳に残る音の一つで、生まれた時に母親とそれ以外の声を区別できるだけでなく、言語の違いも区別できる際立った能力があるということがわかっています。

世界中で話されている言語は800もの音から構成されているそうなのですが、赤ちゃんはこの800音すべてを聞き分けられるという能力を持っているのだそうです。

これは、赤ちゃんの時には接した言語すべてを習得できる状況にあるということを意味しており、その後徐々に一番多く耳にする音だけを理解するようになっていきます。

生後6ヶ月〜12ヶ月の間に1ヶ国語だけ、つまりモノリンガルの環境で育った赤ちゃんは母国語の中に含まれる音の一部に慣れてしまう、言い換えると「母国語のみの専門家」になるというのです。

そして初めての誕生日を迎える頃には、他の言語の音を聞き分ける能力を失い始めるということです。

最初の言葉を発する時期の赤ちゃんの脳はどうなっている?

赤ちゃんの脳の働きがモノリンガル(1つの言語習得)とバイリンガル(2つの言語習得)でどう違うのかを知るために、人体を傷つけない脳磁気図検査装置(MEG)を使って生後11ヶ月の英語だけ話すモノリンガルの家庭の子と、英語とスペイン語を両方話すバイリンガルの家庭の赤ちゃんが、英語とスペイン語の音節を聞く時に脳のどこが活動しているかを調べる実験を行ったところ、次のようなことがわかりました。

ー英語のみを話す家庭の赤ちゃんは英語の音を聞き分けられるが、スペイン語の音は聞き慣れないために聞き分けられなかった

ースペイン語と英語のバイリンガル家庭では、両方ともを聞き分けられた 

※動画は英語です

赤ちゃんの脳は、自分を世話してくれる対象が発する言葉はすべて言語として捉えていることが解明されました。

つまり、モノリンガルの子はその言語のみに、バイリンガルならその両方に対応しています。

こうして11ヶ月になるころに、脳はそれまで接してきた言語すべてに反応するのです。

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バイリンガルは3つ目の言語も簡単に習得できる

多くの親が抱く心配事に、両方覚えようとするとどちらも中途半端になってしまうのではないかというものがあります。

しかしこの研究ではバイリンガルベビーもモノリンガルベビーと同じように反応しており同じように習得できていることが分かったということです。

語彙力の量に関する不安の声もありますが、バイリンガル環境にいる子供は、2つの言語を分けて理解しているので平均すると各言語の習得単語数は少ないのです。

しかし継続して学習することで言語能力の遅れは生じません。

逆に語彙力は2つの言語環境が結びつくことで、モノリンガルと変わらないかそれ以上になることもわかっています。

バイリンガルの子供は片方の言語で適切な単語が見つからない時に、もう1つの言語から言葉を拝借できてしまうのです。

2歳の子供であっても相手が話した言語に自分の使う言語を合わせることができます。

このように言語をまたいで物事を考えられる能力は優位性につながります。

研究では、バイリンガルであることは大人も子供も「実行力」の機能を向上させることがわかっており、つまり常に注意を働かせ、タスクや課題をいかにたやすく解決するかを考える能力と関連があるとしています。

またバイリンガルは3つ目の言語をより簡単に習得することができるといわれていますし、2つの言語を習得した経験が、老化による認知能力の低下やアルツハイマーの初期状態に対する防衛反応に変換されると考えられているのです。

この研究に対する人々の反応も様々。

「確かに、自分がどっちの言葉で考えているか意識していないし、夢も両方の言葉でみるなぁ。バイリンガルってやっぱりすごいことかも!」

「手話を第2外国語にするのもいい考えだと思わない?これならもっと簡単に習得できそう」

「ああ、もう今からじゃ遅いのか…」

「いや流暢にはなれないけど、失語症の予防にはなると思うよ」

さあ、子供に2つ以上の言語を習得させたいと思っているあなた、小さいうちから始めるのに越したことはないのです。

それも1つ目の言葉を話し始める前がいいそうです。

そして途中で止めてしまわないことも重要です。

大丈夫、赤ちゃんは混乱しません! 

それどころか言葉を含めて、早い段階から子供が「多様性のシャワー」を浴びることはその子の可能性を大きく広げることになるのではないでしょうか。

Image by: Shutterstock

Source by: RAW STORY ,You Tube

文/桜井 彩香

出典元:まぐまぐニュース!