朝ドラ出演をきっかけに「五代さま」ブームを巻き起こしたディーン・フジオカさん。今やドラマ、バラエティ番組でも大活躍し、飾らぬ素顔で好感度はますますアップ。そんなディーンさんにグローバルを生き抜く知恵や大好物だというアジア料理の魅力を語っていただいた。



演技も音楽も世界のどこかで出会いが待っている


慣れた手つきでワイングラスを軽やかに回す。スワリングしたグラスに顔を近づけ、芳醇な香りを楽しむ……。

貴公子のような身のこなしに見とれていると、「香りはしませんね。お水だから」と茶目っ気たっぷりに笑う。その一言で、一気に場が和んだ。お酒を呑まないのでテイスティングの手順はマナーとして知っているだけだというディーンさん。

「どこの国へ行ってもマナーを知っておけば、その国に溶け込んで、仕事もプライベートも楽しめます」

香港、台湾、アメリカで実績を経てのディーンさんだからこそ、発言に説得力がある。

「逆輸入俳優」と称され、NHKの朝ドラ「あさが来た」の五代友厚役で、大ブレイクを果たし、あっと言う間に時の人に。その後もドラマやバラエティ番組などひっぱりだこだが、御本人は、いたってクールに捉えている。

「今は日本を拠点に、いろいろなご縁で仕事をいただき、本当にありがたいです。今後も日本はもちろん、世界至るところでの出会いを大切にしていきたいと思っています」



大好物はビーフフォー!お気に入りの店があれば引っ越す勢い!


東京でのディーンさんは1人住まいだ。家族はインドネシア、ジャカルタに住む。

普段の食事を伺うと「実は、小麦アレルギーなので、グルテンフリーのものしか食べられません。アメリカでは、グルテンフリーのハンバーガーやピザもありますが、僕は米粉のフォーがあればOKです」

大好物はビーフフォー。

「訪れた世界の町の中で、旨いフォーを出すお店はすぐ言えますよ(笑)。野菜たっぷり、でも、もやしは少なめ、多めのパクチーと青唐辛子ものせてね。スープは熱々で、レモンかライムをスクイーズして食べるのが最高です」と、熱く語る。

「旨いフォーの店を見つけると、次は不動産屋に向かいます。その近くに住むためにね(笑)」。

東京でも旨いビーフフォーの店を求めて、数十軒食べ歩いたという。そんなディーンさんのこだわりぶりは、テレビ番組にもなったほどだ。ディーンさんの食生活は肉と野菜が中心。大学時代から始めたボクシングで、今もジムに通い汗を流す。夜食も胃に負担のないフォーを食べる。


ジャカルタに里帰りする時、ディーンさんが必ず食べる料理とは?!




ジャカルタへ里帰り時、必食はバクテー!


妻子の住むジャカルタに里帰りする時は「スカルノ・ハッタ国際空港に着いたら、帰宅する前にバクテーのお店に必ず寄ります。バクテーのスープで身体を温め、野菜や肉を食べてリフレッシュします」

本来バクテーは、マレーシア、シンガポールのソウルフード。「肉骨茶」と表記され、豚の塊肉や内臓などを中国醤油とスパイス類で飴色になるまで煮込んだ料理。



シンガポールの名店『ソンファ・バクテー』

コショウ、ニンニク、クローブ、シナモンなど多くのスパイスと野菜類も投入され、ご飯にかけて食べることもある。やはり、ディーンさんの食生活には肉とスパイス、ハーブが必須アイテムだ。アジアの料理は、スパイシーな香りや多彩な味付けが魅力だという。家族との外食では、子連れでもOKなお店を選ぶのだという。

「子どもが小さいので、ショッピングモールにある、広いシンガポールレストランに行くことが多いですね。シンガポール料理も、スパイスをふんだんに使いますし、栄養バランスもよく、ヘルシーです。フィッシュヘッドカレーが大好きなので、いつも注文します。シンガポールに行った時にはリトルインディアで必ず食べる料理です」。

シンガポール名物、白身魚の頭を丸ごと使った、野菜、スパイスたっぷりのカレーは、頭の身をほぐしながら、ライスといっしょに食べる。ディーンさんの食生活のキーワード、「スパイシー」「野菜たっぷり」にかなったひと皿だ。

ディーンさんの食へのこだわり、俳優、ミュージシャンとしてのぶれのない世界観。話が上手で、相手をあきさせない魅力がある。広東語、北京語、英語、インドネシア語、そして日本語を自由に操るマルチリンガルの俳優として、グローバルに活躍するディーンさんのしなやかな感性を感じた。


■プロフィール
ディーン・フジオカ 1980年福島県生まれ。高校卒業後アメリカ、シアトルの大学へ留学。大学卒業後アジア放浪を経て、香港へ渡りモデルとして活躍。映画「八月の物語」の主演に抜擢され俳優デビューを果たす。その後台湾に拠点を移しドラマ、映画、TVCF 等に出演するなど中華圏エンターテイメントの新星として旋風を起こす。自ら作詞・作曲・プロデュースを手がける音楽制作をインドネシアで行うなど、アジアの縦軸を中心に語学力と多方面の才能を活かしボーダレスに活動中。

Photograph Maciej Kucia (AVGVST)
Styling Tsuyoshi Takahashi (Decoration) Hair & Make-up Toshihiko Shingu
Text Yukiko Nakada