毎週土曜日22時から放送されている『嵐にしやがれ』(日本テレビ系列)。番組がスタートしたのは、もう7年近く前のことです。

ところで、この『嵐にしやがれ』の枠、日テレ・土曜22時台では、伝統的に長続きする番組ばかりが放送されてきました。『嵐にしやがれ』の前任、『エンタの神様』は約6年11ヶ月レギュラー番組として君臨。その三代前の『THE夜もヒッパレ』は約7年5ヶ月。わずか1クール(3ヶ月)で終了した『電波少年に毛が生えた 最後の聖戦』もありましたが、日曜22時台に放送していた『電波少年』時代から数えれば、これもまた10年以上の長寿番組となります。
そんな中、日テレの同枠で、わずか6回という短命で終わってしまった番組がかつて存在したのをご存知でしょうか?

癒し系番組としてスタートした『雲と波と少年と』


番組のタイトルは『雲と波と少年と』。放送期間は2003年1月18日から2月22日にかけて。ひらがなを外すと『雲波少年』と読めることから、放送前には「また、電波少年みたいな無茶なことをやるのか?」と一部でささやかれていましたが、この番組のテーマは、ズバリ“癒し”でした。
2003年といえば、“癒しブーム”が全盛の時。井川遥が癒し系タレントとしてもてはやされ、エンヤをはじめとするヒーリング系CDが飛ぶように売れ、さらには、小泉政権下の財務大臣・塩爺こと塩川正十郎が「癒し系大臣」などと形容されるという、何かに付けて“癒し”にこじつけようとメディアが躍起になっていた時代です。

そんな世の中の流行を後追いせんと、壮大な自然と人間愛をリポートする「癒し系バラエティ」としてスタートしたのが、『雲と波と少年と』でした。

視聴率は初回6.9%…低調な結果に


内容はというと女優・大塚寧々が沖縄にある演出家・宮本亜門邸へ来訪したり、モルディブの子供が北海道へ訪問したりするという、ハートフルドキュメンタリー的なもの。放送を見ずとも、優しいヒーリング系BGMと、語りかけるようなソフトボイスのナレーションが聴こえてきそうです。

ところが、放送を見なかった人は多く、視聴率は初回6.9%、2回目7.6%と低迷。そもそも、前任の『電波少年に毛が生えた 最後の聖戦』が低視聴率(11%〜12%台)だったため終了したのに、そのわずか半分程度の視聴率……。ただちに抜本的な改革が求められ、スタッフは頭を悩ませたのですが、それよりも彼らを悩ませる致命的問題が、発生してしまいます。

屋久島でスタッフが飲酒運転、死傷事故を起こす


2003年1月20日。鹿児島県屋久島に家族を移住させる企画「屋久島便り」の制作スタッフ3人が、車で死傷事故を起こしました。しかも後の調べで、3人は直前にビールを数杯飲んでいたことが判明。この責任を取るかたちで、「屋久島便り」はたった1回の放送で打ち切りが決定します。

可哀想だったのは、この移住計画に参加していた「アダモちゃん」でお馴染みのタレント・島崎俊郎一家。田舎暮らしに憧れていた彼は、家族会議で激論を交わし、泣いて嫌がる子供たちを説得して、清水の舞台から飛び降りる覚悟でこの企画に臨んだのです、にも関わらず、即座に中止だなんて、あまりにも酷い話ではないでしょうか。

この不祥事に加えて、視聴率が5%台に下降したこともあり、2月22日の放送をもって終了した『雲と波と少年と』。創り手側の不誠実な姿勢が、そのまま結果となった事例といえるでしょう。
(こじへい)