児童ポルノや児童性的虐待などはヨーロッパで大きな問題となっており、常に当局が監視の目を光らせている。小児性愛者による犯罪はヨーロッパ内にとどまらず外国にも及ぶことがあるため、一旦摘発されるとその規模が驚くべきものであったと判明することが多い。ドイツでこのほど児童ポルノサイト運営者らが逮捕されたが利用者は全世界に9万人弱にも及んでおり、インターネット上の摘発としては過去最大級のものであることが明らかとなった。

ドイツ・ヘッセン州中部に位置するバート・カンベルク。ギリシア神話で善人が死後に住む所とされ、転じて極楽や理想郷を意味する『エリュシオン(Elysium)』と名づけられたこの児童ポルノサイトは、犯罪の雰囲気を微塵も感じさせない、のどかな町の自動車修理工場で運営されていた。

2016年末に設立されたエリュシオンは、今回の摘発に至るまで世界中に約8万7000人もの利用者を獲得していた。サイトはドイツ語、英語、フランス語、スペイン語そしてイタリア語での閲覧が可能であり、小児性愛を題材にした小説やイラストの投稿、写真や動画の交換が盛んに行われていた。投稿された画像そして映像は、利用者の嗜好からフィリピンなどの南アジア、あるいは旧ソビエト連邦の国々などで撮影された物が多くを占めており、少年少女はおろか幼児や乳児までもがその対象とされていたという。

その内容からエリュシオンは特殊なソフトウェアが必要で、通常の検索サイトでは使用できない闇サイト「ダークネット」上で運営されていた。また匿名性が強く守られていたが、一方で趣味をともに楽しむための仲間募集もやり取りされていたため、ネット上だけでなく実際に交流していたメンバーもいたようだ。

今回の摘発のきっかけとなったのは、知人である7歳少女の画像を偶然目にしたウィーン在住の教師による情報提供であった。これを受けフランクフルトの最高検察庁はエリュシオン摘発のために特別捜査隊を編成。捜査の結果、運営者である39歳の男を6月中旬に逮捕した。

その後、エリュシオンの運営にはこの男以外にも多数がグラフィック作成やチャットの管理などに携わっていたことが判明し、ドイツやオーストラリア、イタリアの他に、ニュージーランドやオーストラリアにまで点在する14名のメンバーが逮捕された。うち12名は、自身が加害者として児童虐待に関わっていたことが明らかになっている。中にはその様子を撮影しエリュシオンにアップした者や、同サイトで知り合った他の利用者らに自身の子供達を“紹介”した者もいるという。警察は犠牲となった2歳から8歳まで29名の身元が判明したと発表している。

画像は『hessenschau.de 2017年7月7日付「Bad Camberg war Zentrum der internationalen Kinderporno-Plattform」(picture-alliance/dpa)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)