アジアカップ決勝、日本はカタールに1-3で敗れ、優勝を逃した。
 
 森保一監督も「ミスマッチ」という言葉で振り返った、この試合。3-5-2のカタールと4-4-2の日本では、かみ合わないポジションができるのは当然だ。
 
 しかし、「ミスマッチ」は敗因になり得ない。なぜなら、かみ合わせが悪いのは、お互い様だから。カタールに浮く選手がいるなら、日本も浮く選手がいる。このミスマッチを利用できるか、あるいは利用させないか。ここが焦点だ。
 
 もし、それが一方のチームにのみ有効に働いたとすれば、それはミスマッチを生かす戦術、あるいはミスマッチを埋める戦術が明確になっていないからだ。実際、カタールは明確、日本は不明確だった。
 
 試合の序盤は、日本が運動量とスピードでハイプレスをかけた。情勢は五分五分か、むしろ日本優位だったかもしれない。とはいえ、キックオフ直後にエネルギッシュなチームが押し込んで行くのは、サッカーの試合ではよく起きること。その勢いに慣れ、試合が落ち着き始めると、少しずつ構造的なミスマッチが表面化する。これもよくあること。
 

 カタールの優位は、中央だった。3バックとアンカーの4枚がビルドアップの起点となり、日本は大迫勇也と南野拓実の2枚でプレスに行くため、4-2=2。カタールは起点で2枚の優位があり、ボールを回せる。
 
 そこで日本がアンカーを抑えるため、柴崎岳が前に出て行くと、今度は相手インサイドハーフ2枚、6番ハティムと10番アルハイドスのどちらかが浮く。芋づる式のミスマッチだ。あるいは原口元気が3バックを抑えるために前へ出た場合も、やはり隣のパスルートが空き、インサイドハーフに通される。
 
 無論、このようなズレを気にして、柴崎や原口が出て来なければ、カタールはそのままアンカーにボールを持たせればいい。フリーでパスをつながれたのは、中央で数的不利という構造的な問題が大きく、塩谷の球際の強さも生かされなかった。また、11番のFWアフィフが最前線に留まらず、下がって浮遊することも、中盤の判断を難しくした。
 
 日本はしばらく苦しみ、2失点を喫した後、35分辺りで、大迫勇也と森保監督がコミュニケーションを取り、修正を施した。南野を中盤に落とし、アンカーをマークさせる。これにより、柴崎と塩谷は前に出なくても済むようになる。そして3バックには原口元気、大迫、堂安律が、3対3でプレスに行った。4-4-2の守備を4-3-3に変え、かみ合わないミスマッチを、かみ合わせた。
 
 この修正後、前半残りの10分間は、日本の圧倒的なゲーム。見事な修正とも言えるが、一方、準備さえしっかりしていれば、むしろ序盤から実現可能なことだ。カタールの布陣は意外ではなく、予想通りだったので尚更だ。35分後の修正は、さすがに遅い。
 
 そして、カタールがミスマッチを生かした攻撃を行う一方、日本はどうだったのか?
 

 カタールは守備時、両ウイングハーフが下がって5-3-2を敷く。日本で浮くのは両サイドバックの長友佑都と酒井宏樹だ。今までの対戦相手とは違い、2トップが中央にいるため、同数でマークされる吉田麻也と冨安健洋がビルドアップの起点になりづらい。その代わり、サイドで長友と酒井がフリーになりやすい状況だった。このサイドの数的優位を生かして突破したり、あるいは真ん中に固まった相手MF3枚を左右に振り回したいところ。しかし、日本にその意識は薄く、今までの試合の前半に見られた光景と同様に、中央への突撃や個の仕掛けを繰り返すシーンが目立った。
 
 日本はミスマッチを利用せず、カタールは利用している。だったら、かみ合わせてしまったほうがいい。35分の修正により、日本のペースに傾いたのは必然でもある。だからこそ、この段階で2点差を付けられているのが痛い。