■リーグの規定する「健全性」は正しいのか

J1ならユニフォーム胸スポンサー料は2億円から3億円。背中で1億、袖とパンツはそれぞれ5千万とされる。それだけの金額を何年にもわたり安定して出資できる体力のある企業を、地方で見つけ出すのは難しい。

J1昇格3年目の2005年、トライバルキックスがスポンサー料7千万円を滞納したことをきっかけに債務超過が表面化。県の外郭団体より2億円の融資を受けて急場を凌いだ(現在も返済中)。2005年からユニフォーム胸スポンサーとなったマルハンについては業種がリーグ規定に抵触するのではないかという指摘もあったが、大分の当座の窮状を救うため特例として認可される。特例期間の過ぎた2007年以降も練習着へのロゴ掲示や年間シートの購入などで支援を継続したマルハンを胸スポンサーに復活させようと、県民ら約35万人の署名が集められたが、リーグには認められず、ついに2009年9月、5年間で総額13億円超をスポンサードしたマルハンは完全撤退を決めた。

大型スポンサーを失った大分が次に頼ったのはフォーリーフ・ジャパン。連鎖販売取引に関して同年2月から半年間に渡る営業停止処分を受けており、スポンサー契約締結の発表がその処分明け直後だったことから、周囲では懸念の声が広がった。結局サポーターからの反発を理由に同季限りで破談したが、リーグがユニフォームスポンサーとして認めなかったマルハンは支持され、問題なしと認めたフォーリーフは受け入れられなかったというのも皮肉な話だ。たとえ行政処分が終わっていても、一般社会への信頼回復はそこからがスタートということだろう。リーグは「健全」ということの意味を、いま少し考えなおすべきではないだろうか。

■地域には地域の事情というものがある

トリニータの名の由来となったのが、県民・企業・行政との三位一体という考えかた。そもそも大分FC発足の契機は2002年W杯大分開催を目指したところにあり、その意味では当初から行政との関係は密接だった。資金や人材の面のみならず、練習場・クラブハウスのある大分スポーツ公園も県サッカー協会との共同運営。県が所有するホームスタジアムの使用料免除など設備面でも便宜が図られており、支援はその都度なされてきた。それはイベントへの選手派遣やスクール開催などの地域貢献活動が認められていることの表れでもある。

一方で企業からの支持は得難かった。溝畑前社長のアクの強い人柄や強引な営業方法は地元経済界重鎮の顰蹙を買い、私財投入するほどの思い入れは公私混同、クラブの私物化とも解釈される。経理の不透明性も県民に不信感を抱かせ、様々な噂が飛び交った。小口スポンサーである企業や店舗へのケア不足の影響も大きかった。溝畑氏以外に金銭の流れを把握している者がなく、管理が難しかったこともあるようだ。経営諮問委員会も設置されたが、大分FCから提出された資料をもとに監査するしかなく、その機能には限界があった。

現在は県から派遣された青野浩志社長が陣頭に立ち、経理の透明性を高め、取引業者への支払滞納分も解消して、少しずつ黒字へと経営実績を作っている段階だ。「経営陣が交代したから即支援してくれということはできない。まずはマイナスのイメージを払拭し県内の信頼を取り戻してから」と青野は言う。山形、新潟、湘南、FC東京と運営形態もクラブごとに様々だが、ホームタウンの事情や成り立ちもそれぞれ。地域とタッグを組んでいなくてはわからない、実情にあわせた細やかな運営が必要だ。

■FCスタッフもホームタウン住民の一員である

ファンは好調なときには増え、不調になると離れる。それはエンターテイメントの宿命で、ある程度は仕方のないことかもしれない。が、チームが勝てない時期は必ずある。そのときに観客が減って経営まで悪循環に陥るのを手放しで見ているわけにはいかない。