アルファロメオのツインクラッチ“TCT” 、なぜ乾式? なぜ6速?

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Alfa TCT 技術説明会
Alfa TCT 技術説明会 全 18 枚 拡大写真

アルファロメオ『MiTo』で初搭載された6速のデュアルクラッチトランスミッション、『Alfa TCT(Twin Clutch Technology)』。

従来よりフィアットグループはATの自社開発には消極的だった。2代目『プント』や初代『パンダ』に搭載されていたCVTは富士重工業製で、『156』のV6モデルに搭載されていた「Qシステム」や『159』以来のV6モデルにはアイシンAW製があてがわれていた。

一方『156』『159』『ブレラ』『スパイダー』の4気筒モデルや『147』『GT』などCセグメント以下にはコンベンショナルなMTをベースにクラッチ操作をロボタイズした『セレスピード』(フィアットでは『デュアロジック』)が搭載されていたが、フォルクスワーゲングループのデュアルクラッチトランスミッション「DSG」が登場すると、旧態依然たる印象は拭えなかった。特に00年代後半は2ペダルモデルの整備においてはドイツ勢や国産勢に大きく水をあけられていたのも事実だ。

欧州市場でのDCTの採用拡大に加えて、クライスラーをグループ会社化し、アメリカ市場への再参入を決定したフィアットグループにとって、新型ATの開発は急務だったに違いない。フィアットのパワートレーン開発会社フィアット パワートレーン テクノロジー(FPT)ではツインクラッチトランスミッションの開発に着手、2010年のジュネーブショーでついにMiToのTCT搭載モデルを発表した。

今回、フィアット パワートレーン テクノロジー(FPT)のアルファTCT技術担当エンジニアFrancesco Cimmino(フランチェスコ・チミーノ)氏が来日、技術説明会を実施した。

今回新開発したアルファTCTは、ゲトラグなどトランスミッション専業メーカーとの共同開発ではなく、FPTによる独自開発となる。開発コード名は「C635 DDCT」。“C”は変速機を意味するカンビオ(Cambio)であり、“6”は6段、“35”は350Nmまでの許容トルク値を意味する。DDCTは乾式(Dry)デュアルクラッチトランスミッションの意。

「C635 DDCTは乾式方式を採用することで(湿式では必要な)オイル等の補器類がかさばらずに済むため、MTとの互換性が極めて高い。アクチュエーターなど一部の補器を追加する程度で、MTのラインで混合生産が可能だ」(チミーノ氏)。コスト面などの都合もあり現状では6段式となっているが、7段化も可能な設計になっているという。また、LSD付きFF車やAWD車への搭載も考慮されているといい、汎用性の高さも特徴だ。

そしてチミーノ氏が強調するのは、350Nmまでの許容トルクに対応した点だ。「350Nmまでのトルクレンジには、VWなどでは2機種のトランスミッションで対応させているが、FPTではC635一機種でBセグメントからDセグメントまでの幅広い車種に搭載可能だ」という。余談だがEU圏ではすでに発売済みの『ジュリエッタ』では1.4リットルモデルにはすでにTCTが搭載されている。またジュリエッタの最上級モデル「1750 TB」は235PSと340Nmの出力を持つが、スペック上は同モデルにも搭載は可能と言うことになる。

技術説明会に先立っておこなわれたMiTo TCT搭載車の試乗会では、ノーマルモードではアルファらしかぬジェントルでスムーズな変速マナーを示す一方で、ダイナミックモードでは多少のシフトショックも辞さない攻撃的な走りというニ面性を持っており、ソフトウェアにより幅の広い制御が可能なことを伺わせた。

フィアット グループ オートモービルズ ジャパンのPontus Haggstrom(ポンタス・ヘグストロム)社長は、「MiToのTCT搭載モデルはマルチエアやスタート&ストップ機構、そしてこのTCTによって輸入小型車のなかでも競争力の高いモデルと言える。他の輸入車や国産車の購入を考えている方々や、女性ドライバーに(購入への)可能性を提供できるものと考えている」とTCTモデル導入による拡販への期待をにじませた。

2ペダルモデルの販売比率が非常に高い日本においては、販売サイドにとってはTCTは待ちに待った存在だろう。156と147へのセレスピード導入で、一気にアルファの販売台数が爆発したように、MiToとそれに続くジュリエッタへのTCT導入で名門は復活を遂げることができるか。

《北島友和》

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