iPhone/iPad標準「マップ」と「Google Maps」、どちらを選ぶべき?

文●海上忍(@u_shinobu)

2013年12月20日 11時00分

本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

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標準「マップ」を使うユーザーが過半数、その理由を考える

11月末、英ガーディアンのオンライン版に「How Apple Maps won on UK iPhones over Google Maps - despite Waze」という記事が掲載された。かいつまんで言うと、英国ではGoogle MapsではなくiOSに標準装備の「マップ」を選ぶユーザーが過半数を占める、という内容だ。

調査は米comScoreにより、2012年10月のiOS 6リリース直後と2013年9月の2度実施された。iOS 6リリース直後といえば、実在しない建造物が表示されるなど「マップ」の品質問題が世界的に話題となっていた時期であり、その後CEOの謝罪にまで騒動が拡大したことは記憶に新しい。2013年3月に公開されたiOS 6.1.3では日本における地図の表示が大幅に改善され、ようやく実用できるレベルとなった。検索サイトで“iOS 6 map buggy”というキーワードで検索すると、辛辣な内容のサイトが相当数ヒットすることからしても、この問題は程度の差はあれ欧米でも発生しているはずだ。

しかし、前掲の報道がなされたということは、「マップ」の再評価が進んでいることを意味する。確かに、日本だけを見ても「マップ」の情報精度はかなり改善され、ここ数ヵ月は妙な表示に苦笑いした記憶がない。システム標準のアプリだけあって、「メール」や「Safari」との連携をスムーズに行なえるためストレスも少ない。特定ジャンルの飲食店ばかり表示されるような情報のバランスの悪さも消え、今では銀行や郵便局、コンビニエンスストアといった店舗・施設もムラなく表示される。

マップアプリの横綱的存在「Google Maps」と比較してどうなのかという話だが、情報の細かさ/網羅性ではいまだ同じレベルに到達していないように思える。たとえば、拡大率を揃えて同じ地点を表示すると、アイコンを使うなど視認性では「マップ」も健闘するが、駅ビルや百貨店など商業施設内部の構造は分からないし、公共交通機関の乗換案内にも対応しない。それでも「マップ」を選ぶユーザーが過半数ということは、情報の質に関する問題がほぼ解決された現在、ユーザーは情報の豊富さより「リーチのよさ」を優先するということなのだろう。

iOS標準の「マップ」(左)と「Google Maps」(右)を比べると、情報量ではGoogle Mapsが優勢だが……
Google Maps
価格無料 作者Google
バージョン2.5.0 ファイル容量10.5 MB
対応デバイスiPhone/iPad/iPod touch 対応OSiOS 6.0以降

ちゃっかりしている? 標準「マップ」のURLスキーム

リーチのよさでは一段上の「マップ」だが、URLスキームを使えば「Google Maps」もアプリ間の連携が可能になる(関連記事)。「メモ」などの自動リンク生成機能を持つアプリを使い、「comgooglemaps://?q=検索語&center=経度,緯度」のフォーマットで記述すれば、指定した位置を表示した状態で「Google Maps」を起動できる。Googleはその仕様を公開しているので(関連リンク)、普及さえすれば「マップ」に負けないリーチのよさを実現できる。

もちろん、URLスキームは「マップ」にも用意されている。iOSでは、アプリが独自のURLスキームを定義できるが、「マップ」の場合は「http://maps.apple.com/maps?<パラメーター>」だ(関連リンク)。たとえば、渋谷駅を表示する場合は以下の要領でURLを記述すればいい。


http://maps.apple.com/maps?q=渋谷駅
「メモ」にURLを記述しておけば、「マップ」ですぐに開ける。テキストベースで簡単に編集できることもメリットだ

Windows 8のChromeで「マップ」のURLにアクセスしたところ、Google Mapsにリダイレクトされた。賢いというか、ちゃっかりしているというか……

iOS独自の接頭辞を採用しなかったことは、「リーチのよさ」につながっている。Webサーバー(maps.apple.com)を経由させれば、利用する端末に応じた表示に誘導できるからだ。前述の渋谷駅のリンクをiOSとOS X Mavericks(「マップ」アプリあり)、OS X Mountain Lion(「マップ」アプリなし)、Windows 8で試してみたところ、iOSは「マップ」を起動して渋谷駅を表示し、MavericksもOS Xのマップ(iOSとはデフォルトの表示倍率が異なる)を表示したが、「マップ」のないMountain LionとWindows 8はGoogle Mapsにリダイレクトされた。どのプラットフォームを利用しても適切な情報を提供できる、というわけだ。

正確な緯度・経度も指定できる。たとえば、飯田橋駅(経度:35.702065、経度:139.745015)の場合、以下の要領でURLを記述すればいい。ほかにも、表示モードや表示サイズの指定など、パラメーターを駆使すれば高度な活用も可能だ。


http://maps.apple.com/maps?ll=35.702065,139.745015
表:「マップ」のURLスキームで使用できるおもなパラメーター
パラメーター 内容
q 検索キーワードを指定する(緯度/経度も指定可)
ll 緯度/経度をカンマ(,)区切りで指定する
spn 表示距離を指定する
t 表示モードを指定する(m:標準、k:航空写真、h:地図+写真)
z 表示サイズを指定する
saddr 経路検索用の出発地を指定する
daddr 経路検索用の目的地を指定する

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