高性能PCならスマホより断然快適!?PCでスマホアプリが動作する「BlueStacks」の機能と性能をガチレビュー
文●ジサトラハッチ 編集●ASCII
2020年07月20日 11時00分
最近は、自宅にいることが多くなり、ゲーム需要が増加傾向にあるというが、スマホゲームは動画配信サービスなどに比べ利用時間の増加は少なめだという。スマホゲームは電車通勤中&通学中などの「すきま時間」で遊ぶ人が多いことも起因しているそうだ。
そんな中、より一層利用者が増えているのが、Androidアプリプレイヤーである「BlueStacks」だ。「BlueStacks」は、Androidの挙動を模倣するソフトウェアで、広義ではAndroidエミュレーターと呼ばれるソフトウェアの一種だ。これにより、WindowsやMacといったOS(オペレーションシステム)の異なるパソコン(PC)にて、Android対応のアプリが利用できるようになる。
自宅にいる人が多くなったため、普段スマホで使っているアプリを、スマホよりも画面の大きい自宅のPCで楽しみたくて、需要が増えているのかもしれない。
BlueStacksは米シリコンバレーに本社を構えるソフトウェア企業が開発。世界中から支持を得て、今日に至る。
日本では、エミュレーター=違法と捉えている人も多いが、エミュレーター自体は違法ではない。たとえば、アプリ開発者はエミュレーターを使って、正式配信前に動作の確認を行なうこともある。しかしながら、そういった開発者などではない人が、違法な行為と並行してエミュレーターを使用することもあり、それによって違法なモノという認識を持っている人が少なからずいるのが実情だ。
BlueStacksは、インテルに買収されたマカフィーにてCTOを務めたRosen Sharma氏が起業。Qualcommが株主として加わっており、AMDやIntelといった企業も同社に投資している。高い技術力と抱負な人脈を持ち、2018年にはDMM GAMESと業務提携し、DMM GAME PLAYER上にて一部機能の実装も果たしている。また、2019年にはMSIがBlueStacksと連携して開発した「MSI App Player」がリリースされた。
また、数年前からマイクロソフトとも会話をスタート。マイクロソフトは、今後多くの端末にて同社の仮想化システムである「Hyper-V」をデフォルトで有効にする方針を掲げており、Hyper-V有効時にユーザーがBlueStacksを利用すると、ルートパーティションに影響が出るため、Hyper-VとBlueStacksが同時に動作させることに至った。
このように、BlueStacksは数々の企業と関わり合い、連携も行なっている。また、違法行為になり得るマクロ機能やroot化機能なども取り入れておらず、そうした点においても世界中で高い支持を得ている、信頼性の高いAndroidエミュレーターだ。
もちろん、Google Playにて配信されているアプリの全てが、エミュレーターの動作を保証している訳ではない。アプリメーカーにとっては想定外の使用のため、たとえばゲームでの引き継ぎが上手くいかず、データが利用できなくなった、といったトラブルがあった場合、保証がある訳ではなない。そのため、あくまで自己責任の下、個人利用の範囲で楽しむ必要があることは覚えておいて欲しい。
普段スマホで使っているアプリがPCでも使える!
前置きが長くなったが、前述を踏まえてBlueStacksではどういったソフトで、どういったことができるのかを紹介していきたい。執筆時のBlueStacksのバージョンは4.215.0.1019。
BlueStacksの導入は、公式HPからダウンロードしてインストールするのみと簡単だ。起動してGoogle Play ストアを開こうとすると、Androidのスマートフォン(スマホ)を購入したばかりと同じく、Googleのアカウントを聞かれるので、普段スマホで使用しているアカウントを入力、もしくは新規アカウントを作成してログインする。
Google Play ストアからアプリをインストールすると、ライブラリーにインストールされたアプリの一覧が表示される。普段からAndroidスマホやタブレットを使用している人は、Google Play ストアのメニューを開き、「マイアプリ&ゲーム」のライブラリを開けば、普段使用しているアプリの一覧が表示されるので、そこからインストールするのもイイだろう。
デフォルト設定では、アプリをインストールすると、デスクトップにショートカットが作成される。デスクトップにたくさんアイコンが並ぶのが嫌な人は、環境設定から変更するとイイが、ショートカットをクリックすればすぐにアプリが起動できるので、PCアプリ感覚で使えて便利と感じる人もいるのではないだろうか。
Androidのエミュレーターは、パソコンでスマホゲームをプレイするだけでなく、いろんなアプリが使用されている。BlueStacksに直接聞いたところでは、使用率トップ100の中にはLINEやZoom、Discordといったコミュニケーション&ビデオ会議アプリから、TikTok、Mirrativ、Amazonプライム・ビデオなどの動画アプリ、マンガワン、マンガBANGなどのマンガアプリ、ibis Paint Xやイラストチェイナーといったお絵描きアプリなどさまざま。
ただし、LINEのように電話番号に紐づき、ひとつの端末のみ利用できるアプリは、スマホをひとつしか持っていない場合、引き継ぎを行なうとスマホでは使えなくなるので注意。また、移行する際、事前にトークのバックアップを取っておかないと、トークの履歴が消えてしまうといったトラブルもあるので、気を付けよう。
ゲームは最近Google Play GamesやTwitter、Facebookでデータ連携できるものから、スクウェア・エニックス、バンダイナムコエンターテインメントなどは、独自のIDでの引き継ぎに対応している。いずれの場合も、ゲームによって使用が異なり、ゲームによってはBlueStacksに引き継ぐと、元のスマホでゲームがプレイできなくなる場合もあるので注意。
ただし、前述したような引き継ぎ形式の場合は、元のスマホで同じ手順で引き継げば、すぐに元に戻せる可能性もある。一方、LINEや引き継ぎIDを発行するタイプのゲームの場合、LINEをBlueStacksに移行できなければそもそも引き継げない。そして、引き継ぎID発行するタイプだと、そのIDを使って一度でもログインし、その後何らかのトラブルでデータが破損した場合は、データを引き継いでゲームがプレイできなくなる可能性がある。そのため、自己責任で行なって欲しい。
動画や写真ファイルなどもインポートして再生できる
自分で撮影した動画や写真をインポートすれば、プレイヤーで再生できる。マイアプリのシステムアプリ内の歯車アイコンから、メディアマネージャーを開き、「Windowsからインポート」、もしくは「インポートされたファイル」へドラッグ&ドロップすると、ファイルが扱えるようになる。
インポートされたファイルは、内部メモリのDCIM内の「SharedFolder」に保存されている。プレイヤーで再生する際、インポートしたファイルが見当たらない場合は、SharedFolderを参照しよう。
タブや通知を上手く使って情報を手早く得よう
BlueStacksでは、複数のアプリを起動してタブで切り替えることもできる。他のAndroidエミュレーターも複数のアプリを同時に起動して、バックグラウンドで起動したまま画面を切り替える、いわゆるスマホと同じ動作は可能だが、BlueStacksではタブで切り替えられるので、ストレスなく複数のアプリを使い分けられる。
筆者はTwitterやFacebookといったSNS、スマートニュースといったニュースアプリ、メールアプリを常に起動し、切り替えて使っている。BlueStacksではアプリごとに通知設定ができ、各アプリの通知がデスクトップの右下に表示される。そのため、ブラウザーで各サービスに接続するよりも、手早く情報が確認できるようにしている。これは中々に便利だ。
もちろん、Windowsにも通知をデスクトップに表示する機能はあるが、BlueStacksの場合、起動した時にたまっていた通知が一度に表示されたりするので、自分の意識下で管理しやすく感じている。
ウィジェット感覚で使えるアプリは割と便利!
個人的にはアラームのアプリも有用だと感じている。職場で使うならシンプルなデザインのアプリがイイが、どうせ自宅で仕事をしているなら、ゲームやアニメキャラのアラームを使ってみるのも乙だ。
自宅で仕事をすることが多くなった人は、感じている人もいるかもしれないが、職場と違って回りからのアプローチがないので、ついつい約束の時間を忘れがちになる。オンラインの打ち合わせ時間、外出する時間などをアラームにセットしておくと割と便利だ。
また、カレンダーや時計、写真管理アプリでスライドショーを表示させておくなど、かつてのウィジェット感覚で使ってみるのもおもしろい。
複数のインスタンスを作成すれば
一度に複数のアプリを利用できる
BlueStacksには複数の仮想マシン(インスタンス)を同時に起動する「マルチインスタンス」機能も備わっている。マルチインスタンスマネージャーから、新規のみならず複製も行なえる。そして、複数のアプリを同時に起動できる。
さらに、スマホ同様に複数のアカウントの登録も行なえる。そのため、アカウントを分ければ、複数のアカウントで同じゲームを同時にプレイすることもできる。
PCでブラウザーを複数窓で開いて、同時に見たりしている時に、自分でドラッグして見やすくしたりするのに煩わしさを感じたことはないだろうか。しかし、BlueStacksでは「自動配列」機能で手早く複数のインスタンスを整列させられる。
Windowsのスナップ機能を使えば、同様のことが行なえるが、YouTubeであればシアターモードにして、ブラウザーゲームだとバナーが煩わしいなど、いろいろと不満もあるので、スマホ用にメインコンテンツをシンプルに表示するAndroidアプリ版の方が、動画やゲームの視認性は高く、ながらで楽しむには快適だ。
アプリの中には、PC版も配信されているものもあるが、BlueStacksで一括管理すれば、すばやく画面に配列、さらにマルチインスタンスで複数表示して個別で音声を調整、一括でミュートにするなど、音声管理もし易い。
ゲーム画面の撮影、録画も簡単に行なえる
BlueStacksでは、ゲーム画面のスクリーンショットが撮れる他、正式実装前のβ版ではあるがゲーム画面の録画も可能。さらに、別途OBS Studioをインストールすれば「ストリーミングモード」を利用して、生配信も行なえる。
OBS Studioは無料で利用でき、複数のソースをレイアウトして動画配信が行なえるので、少し凝ったスマホゲームの配信を行ないたい人には最適だ。詳しい配信方法は公式サイトのヘルプを参照してみて欲しい。
キーボードのキーマッピングも可能
コントローラー操作は一部ゲームが対応
ゲームの場合、操作方法も気になるところ。前述したようにBlueStacksでは、キーボードとマウスのキーマッピングと、一部コントローラー操作にも対応している。
ゲームのコントローラーへの対応は、最適化されたものだけ利用できる。対応コントローラーはXboxとPlayStation 4のコントローラーになる。対応ゲームは、現在のUIの「特集から閲覧」にある「ゲームパッド」から確認できる。まだまだ数は多くないが、今後どんどん増える予定とのことなので期待したい。
最新のRadeon RX 5700 XT搭載PCでは
2年前のゲーミングスマホの3倍の性能に!
BlueStacksは、スマホよりも高い性能を持つPCで利用できるため、低スペックのスマホでは実現できない、高フレームレートでスマホゲームが遊べる可能性を秘めている。
エミュレーターは、本来そのシステムを動作させるハードウェア(この場合Android搭載スマホまたはタブレット)とは異なるハードウェア(WindowsまたはmacOS搭載PC)にて、ソフトウェア的に本来のハードウェアの動作をエミュレートする。そのため、Androidの命令をWindowsまたはmacOS用に変換する必要がある。それによるオーバーヘッドは避けられない。
そうした、動作の遅延は発生するものの、その遅延すらも超える処理速度をPC側が持っていれば、スマホの動作よりも快適になる。BlueStacksにエミュレーター上で動かしたベンチマークソフトは、ある程度信頼できる数値になると伺ったので、3DMarkを用いて、いくつかの環境でスコアーを計測して比較してみた。
比較用に使用したのは、筆者の自宅のメインPCと、普段仕事で使用している2 in 1ノートPCであるマイクロソフトの「Surface Book 2」。それと、スマホは2018年に発売されたゲーミングスマホの「ROG Phone」にて、クロックをブーストするXモードを使用して計測。
PCにインストールしたBlueStacksの設定は、「ディスプレイ」が2560×1440ドット、DPIは320にし、エンジン設定はデフォルトのCPUとRAMが「高」に、デバイスは現バージョンでデフォルトに設定されていた「Asus ROG 2」(おそらくROG Phone IIと思われる)で、「高フレームレートを有効にする」にチェックを入れて、フレームレートを240fpsに設定して測定。
Surface Book 2のみ、CPU内蔵GPU(Intel UHD Graphics 620)と、GeForce GTX 1060を使用した2パターンで計測した。
検証用PCの主なスペック | ||
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PC | ジサトラハッチ自作PC | Surface Book 2(15) |
出力ディスプレー | ASUS「ROG STRIX XG32VQR」 (32インチ、2560×1440ドット、144Hz) |
15インチ(3240×2160ドット) |
CPU | AMD「Ryzen 7 3800X」(8コア/16スレッド、3.9GHz~4.5GHz) | Intel「Core i7-8650U」(4コア/8スレッド、1.9~4.2GHz) |
dGPU | ASUS「ROG-STRIX-RX5700XT-O8G-GAMING」 (Radeon RX 5700 XT、8GB GDDR6) |
NVIDIA「GeForce GTX 1060」 (6GB GDDR5) |
メモリー | G.Skill「Trident Z Royal Gold F4-3200C14D-32GTRG」 (DDR4-3200 16GB×2) |
16GB(DDR3L-1866) |
ストレージ | Seagate「FireCuda 520 ZP2000GM30002」 (2TB SSD、NVMe対応/M.2規格/PCI Express Gen4×4接続) +Western Digital「WD80EFZX-68UW8N0」 (8TB HDD) (DDR4-3200 16GB×2) |
512GB SSD |
OS | Windows 10 Home(64ビット) |
ASUS「ROG Phone(ZS600KL)」の主なスペック | |
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ディスプレー | 6インチ(2160×1080ドット、120Hz) |
CPU | Qualcomm Snapdragon 845(オクタコア、2.96GHz) |
GPU | Adreno 630 |
RAM | 8GB |
ROM | 512GB |
OS | Android 9(Update済) |
※比較の仕様がないCPUクーラーや電源、性能に直接関係ないインターフェースなどは割愛
結果は上の図の通り。現行世代の最新CPUでは結果も変わるだろうが、2年前のCore i7の内蔵GPUでも、当時のゲーミングスマホには劣った。一方で、最新のビデオカードであるRadeon RX 5700 XT搭載機と比較した場合、スコアーに3倍ほどの差が生まれた。
Graphics test 1は、Intel UHD Graphics 620で15.20fpsと低く、ROG Phoneが31.50とまずまず、GeForce GTX 1060で54.40fps、Radeon RX 5700 XTでは140.40fpsと2位のGTX 1060の倍以上という結果に。Sling Shot Extremeは、2560×1440ドット(WQHD)の映像を処理する、高解像度ゲームアプリを想定しているため、このような結果になっているが、Radeon RX 5700 XTはWQHDで快適にゲームをプレイできることを謳っているため、この結果はある程度信ぴょう性の高いものと思われる。
最後に120fpsに対応しているMinecraftを使って、実ゲームのフレームレートを計測。Radeon搭載のPCでしか使えない方法だが、AMD LINKをインストールしたスマホで、Radeon RX 5700 XTを組み込んだPCと接続。BlueStacksでMincecraftを起動し、フルスクリーンにしてAMD LINKの機能にて平均FPSを計測した。
結果は平均207fps。Androidエミュレーターでは、スマホでは60fps、120fpsまでしか表示できないゲームが、その上限を超えて表示(内部機能でFPS表示が可能)されることがあるので、BlueStacksにその理由について尋ねた。
すると、Windowsのプログラムでは、GPU向けにV-Sync(垂直同期)による上限設定があり、その多くは60fpsだが、アプリ側でそれ以上発揮できる場合、BlueStacks側でこのV-syncにおける調整を行なっているとのこと。
AMD LINKで計測した数値が、BlueStacksで表示している数値とほぼ一致しているため、ゲームが出力できるフレームレートということなのかもしれないが、Radeon Settingsで「垂直リフレッシュを待機」を常にオンにしても、数値がほぼ変わらなかったので、ディスプレーとの同期が効いていないのかもしれない。この辺りは他のAndroidエミュレーターも同じ挙動をするので、結論は控えたい。感覚的には今回使用した「ROG STRIX XG32VQR」が出力できる144Hz貼り付きくらいの動作はしているようだが……。
工夫次第では無限の可能性がある
高い信頼と充実の機能でスマホゲームの楽しめる!
BlueStacksは、確かなバックボーンを持つ企業が開発し、高い信頼性と充実な機能を有したAndroidエミュレーターだ。頻繁にアップデートも行なわれ、機能性も向上している。60fps以上に正式対応しているゲームはまだかなり少ないが、唯一240fps表示に対応している点も、高性能なPCを持て余している人にはうれしいところ。
6月に行なわれたWWDC 2020にて、Appleの独自CPU「Apple Silicon」搭載機では、iOSアプリがネイティブのまま動作することが発表された。これまでスマホゲームは、DMM GAMES他、AndAppやShift for docomoなど、数多くのサービスにてPCと連携してきた。そして、ついにあのAppleまでが、独自にPC上でスマホアプリを動作させようとしている。
中には複数の指でタッチして操作するリズムゲームなど、タッチパネルがないと操作が難しいアプリもあるが、オープンソースのAndroidに提供されている膨大な量のゲームやアプリが、試した限りではほとんどが動作し、不安定どころかスマホよりも快適に動作するのは、確かな技術力のなせる業だ。
ユーザーの中には、高解像度&大画面でゲームを表示し、迫力ある美しい映像で動画配信したりと、BlueStacksならではの使い方で楽しむ人もいる。ユーザーの使い方次第ではいろんな可能性、利便性があるので、自宅にPCがあって大画面のディスプレーやテレビを使って楽しめる環境があるのなら、一度は試してみてはどうだろうか。
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(提供:BlueStacks)
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