湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

ソニーはサムスンの足元にも及ばないという歴然たる現実…半導体1兆円投資は失敗濃厚

ソニーの吉田憲一郎社長兼最高経営責任者(東洋経済/アフロ)

 ソニーは5月22日、2018~2020年度の中期経営計画を発表した。それによれば、自動運転車用の需要増大が見込まれる半導体画像センサ(CMOSセンサ)に3年間で約1兆円の設備投資を行うという(5月23日付SankeiBiz記事より)。

 筆者は、ソニーの経営判断は間違っていないと思うが、この1兆円の巨額投資は失敗するのではないかと予想している。本稿では、まず、その根拠を示す。その上で、どうしたら1兆円の投資を成功させることができるかを論じる。

イノベーションとは何か

 ソニーは、過去に幾度となくイノベーションを起こしたが、経営者や技術者がイノベーションの本質をまるで理解していない奇特な企業だと思う。なお、ここで言うイノベーションとは、筆者が日本経済新聞に何度、忠告してもその訳を改めようとしない「技術革新」などではない。イノベーションとは、「爆発的に普及した技術、製品、サービス」である。その技術や製品が、高性能、高機能、高品質であるかどうかは一切関係ない。「爆発的に普及したかどうか」が重要なのだ。

 このように企業の講演で話すと、「そんなことを言ったら、イノベーションとは、単なる結果論ではないか」と批判を受けることがある。しかし、はっきり言えば、イノベーションとは結果論である。どんなに高性能、高機能、高品質の技術や製品を開発しても、売れなかったら、イノベーションではないのである。

イノベーションを技術革新と信じ込んでいるソニー

 2010年9月17日、ソニーの厚木研究所で「破壊的イノベーションの威力と脅威 - ソニー・イメージセンサへの期待と警鐘 – 」と言う題目で講演したことがある。2009年当時、ゲーム機の世界では、ソニーのプレイステーション3(PS3)と任天堂Wiiが競争していた(図1)。PS3には、ソニー、東芝、IBMが「5年・技術者500人・費用5000億円」をかけて開発したスーパー半導体Cellが搭載されていた。筆者はやったことがないが、PS3の鈴鹿サーキットのゲームでは、コースわきのペンペン草までリアルに表示できるほど、高画質で高性能なゲームが楽しめたそうである。


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