ソニーの技術者が“聖地巡礼”アプリを作るまで

大企業の中で「やりたいことをやる」方法論を聞く

  • 山中 浩之
  • 2017年09月21日

 “聖地巡礼”という言葉、最近よく聞きます。もともとは、エルサレムや四国の八十八箇所などの、宗教的に大きな出来事があった場所や、聖なる場所を巡ってくることですね。昨今ではアニメやマンガ、ドラマの舞台になった場所に赴くことを指して、この言葉が使われていることはご存知の方が多いでしょう。ファンにとっては、ドラマの現場はまさに「聖地」というわけです。

 その“聖地巡礼”を支援するスマートフォン向けアプリ「舞台めぐり」が、ソニーの関連企業「ソニー企業」から公開されて人気になっています。ユーザー数は18万人を超え、登録作品数も80作品を超えているそうです。

 現実とフィクションの狭間に立って、実際の街角や風景を、スマホを通して「ゲーム」のように楽しむこのアプリを「東京ゲームショウ2017」でご紹介すべく、開発者の方にお話を聞きに…え、元々はブルーレイディスクの開発者? どういうこと?

安彦剛志・ソニー企業株式会社事業開発室コンテンツツーリズム課「舞台めぐり」チーム代表 シニアプロデューサー

ブルーレイの開発に当たっていた方だというのもそうですが、そもそも、ソニーからこのアプリが出たということにもかなり驚いているのですが。そうだ、しかも「ソニー」じゃなくて、「ソニー企業(Sony Enterprise Co., Ltd.)」なんですよね。こちらはたしか銀座のソニービルの。

 安彦剛志・ソニー企業株式会社事業開発室コンテンツツーリズム課「舞台めぐり」チーム代表 シニアプロデューサー(以下・安彦):ええ、そうです。ソニービルの大家さんです。取材に来られたということは、Yさんは元々、アニメがお好きなんですね?

…。…どうなんでしょう。いや、人並みじゃないかな。「舞台めぐり」のお話は、日経テクノロジーオンラインの「目黒川はなぜ"ミニリュウの巣"なのか」を読んで初めて知りました。

安彦:ああ、テックオンの内山(育海)さんが取材にいらした。

そうなんです。彼女から「あのアプリは、安彦さんという面白い方が作っているんですよ」と聞きまして、のこのこやってきた次第です。

安彦:あの時はとても興味を持っていただき、長々といらないことまで話をしちゃいました(笑)。

なぜ、「ソニー企業」で「舞台めぐり」なのか

人気アニメ作品「ガールズ&パンツァー」を用いて茨城県・大洗の街を遊ぶ。「舞台めぐり」のコンテンツ「ガルパンうぉーく!」の画面イメージ

アプリのお話もとても興味深いのですが、今回は、もともとソニーの技術者の「華」だったであろう、記録メディアのブルーレイの開発をやってきた方が、今、なぜ「ソニー企業」で、聖地巡礼アプリを作られているのかを伺いたいんです。

安彦:あ、「聖地巡礼」だけが目的ではないんですけどね(笑)。

念のためお聞きしますけれど、いやいやこの業務をやっているわけはないですよね?

安彦:もちろんです。自分がやりたいからやっています。

というか、自分の好きなことを、会社の仕事としてやっている?

安彦:「ソニーのビジネスとして成り立つ」という大前提の上ですが、その通りです。

ですよね。それって、かなりの数の会社員の、ひとつの夢だと思うんです。ぜひ、どこでどうしてどうやったらこうなったのか、洗いざらい教えていただけませんか。

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