大飛球を追った左翼手は、フェンス上に駆け上ってキャッチしましたが、次の瞬間、体がよろけて外野スタンドに転落してしまいました。審判はフェンス上で確実につかんでいるのを確認したのでアウトを宣告しましたが、攻撃側の監督は左翼手はスタンドに落ちたのだから捕球とは認められず、本塁打になると主張しています。 捕球と認められます。キャッチを定義している野球規則2.15の[原注]には次のようにあります。
「野手はフェンス、手すり、ロープなど、グラウンドと観覧席との境界線を越えた上空へ、身体を伸ばして飛球を捕らえることは許される(以下略)」
しかし、規則書の84年版までは「身体を伸ばして」のあとに、カッコ内に「身体の大部分は競技場内になければならない」と文章がつけられていました。攻撃側の監督は、このカッコ内の文章を記憶していたのではないでしょうか。
これは捕球の瞬間に体の大部分が競技場になければならないことを言っているものです。低いフェンスを乗り越えて、あらかじめスタンドの中に入って捕球するのは認められないことです。捕球後、スタンドに転落したものまでは、言っておりません。そうした誤解を避けるためにも、カッコ内の文章は削除されました。
81年9月16日に西宮球場で行われた阪急-
ロッテ戦の1回表に、ロッテの
弘田澄男が打った左翼への大飛球を、阪急の
山森雅文がラッキーゾーンのフェンス上に飛び上がってつかんだ超美技はアメリカでも大評判になり、このシーンがクーパーズ・タウンの野球殿堂で放映されていました。
あのとき、山森が勢いあまってラッキーゾーンの向こう側に落ちたらどうなるのかと、随分問題になりました。これも審判が確実につかんだと判断したあとに転落したのなら、それは捕球と認められるのです。
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