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センバツ名勝負伝説

【センバツ名勝負伝説01】春41年ぶりの再試合も延長戦に。アンと福本の壮絶な投手戦

 

いよいよ始まった「第90回記念選抜高校野球大会」。週べONLINEでは歴代の名勝負をピックアップし、1日1試合ずつ紹介していく。

計5時間24分の死闘


力投する東洋大姫路のアン


2003年3月31日準々決勝
東洋大姫路(兵庫)2−2花咲徳栄(埼玉)

2003年4月1日準々決勝再試合
東洋大姫路(兵庫)6x―5花咲徳栄(埼玉)

 大会第9日の3月31日、準々決勝第4試合の東洋大姫路─花咲徳栄戦。1回表、2回表と、いずれも二死二塁から花咲徳栄が先制のチャンスをつかむが、東洋大姫路の堅守に阻まれ、無得点。試合は次第にこう着化し、東洋大姫路のグエン・トラン・フォク・アン、花咲徳栄の福本真史と両エースの投手戦になり、0対0のまま大会5試合目の延長戦に入った。

 均衡が破れたのは、延長10回表だった。花咲徳栄が相手守備の乱れもあって1点を奪うが、その裏、東洋大姫路も犠飛で1点。振り出しに戻った試合は、さらに続く……。

 15回表、一死後、花咲徳栄の一番・田中一行の当たりは快音を残し、右翼へ飛ぶ。背走した東洋大姫路のライト、前川直哉は落下点に入ったが痛恨の落球。俊足の田中は一挙三塁に達した。

 そして二死となった後だった。川嶋仁徳のセンター方向へのゆるいゴロに、東洋大姫路のセカンド・砂川知樹がよく追いついたが、一塁への送球がそれて内野安打に。この間、田中は2点目のホームを踏み、花咲徳栄がついに勝ち越しに成功した。

 しかし、ドラマは終わらない。その裏、東洋大姫路の攻撃。二死三塁で打席に入ったのが、表の守備で落球した四番・前川だった。運命の打球はショート前へのゴロ。万事休すと思われたが、遊撃手のエラーで、三塁から原勝茂が生還。なおも二死一、二塁となるが、ここは気力を振り絞った福本が抑えた。福本が220球、アンが191球。「大会規定により引き分け、翌日11時から再試合」を告げるアナウンスが流れると、スタンドから両軍ナインをたたえる拍手が起こった。

 春のセンバツで大会規定による引き分け再試合となったのは、第34回大会(1962年)の準々決勝、作新学院(栃木)─八幡商(滋賀)以来、41年ぶり。延長打ち切り回数が18回から15回に短縮された2000年以降では、春夏の甲子園を通じて初めての適用だった。

 さらに両エースが先発も回避した翌日の再試合も大激戦となり、再び延長戦へ。しかし、延長10回裏、無死満塁から三番手で登板した福本の暴投で東洋大姫路がサヨナラ勝ち。福本はがっくりとマウンドにひざまずき、しばらく動けなかった。

 再試合は3時間13分。2試合合わせて25イニング、5時間24分のまさに死闘だった。

写真=BBM
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