新製品レビュー

SONY RX0

ソニーらしさに惹かれる高品位プロダクト これまでにない立ち位置が撮影者を試す

SONY RX0

ソニーから斬新なカメラが登場した。その名は「RX0」(DSC-RX0)。

ソニーの「RX」と言えば、ハイエンドの35mmフルサイズ機「RX1」シリーズ、高倍率ズームタイプの「RX10」シリーズ、そして1型センサー搭載の「RX100」シリーズと、どれも人気があり画質も評価が高く、スタイリッシュなイメージだ。

しかし、今回登場したRX0のルックスはそのどれにも似ていない。まるでアクションカムの元祖「GoPro」のようなのだ。

欲しくなる高い質感のボディ

RX0はGoProに似た直方体のボディに、有効約1,530万画素のメモリーを一体化した1型の積層型Exmor RS CMOSイメージセンサーと、35mm判換算の焦点距離24mm相当 F4のZEISS Tessar T*を押し込んでいる。

外形寸法は59×40.5×29.8mmで、重量は本体のみ約95g、バッテリーとMicroSDメモリーカード込みで約110gとなっている。

目を引くボディはソニーらしい質感が高い金属製(アルミ合金の削り出し)でなかなかカッコいい。ガジェットとして所有欲をくすぐられる出来映えだ。

SONY RX0

そのボディは水深10mの防水性能(IPX8相当)および防塵性能(IPX6相当)と、2mからの落下耐性、そして200kgfの耐荷重性能を有するが、メーカーとしてはいずれもすべての状態において無破損、無故障、防水性能を保証するものではないとのこと。

SONY RX0
SONY RX0
SONY RX0
SONY RX0

メニュー画面はRXシリーズと共通

イメージセンサーはアスペクト比3:2の1型(13.2×8.8mm)Exmor RS CMOSセンサーで、総画素数は約2,100万画素、有効画素数は約1,530万画素だ。

レンズは6群6枚(非球面レンズ6枚)のZEISS Tessar T* 24mm相当 F4。絞りはF4固定となり、露出制御はシャッタースピードとISO感度の変更によって行われる仕様である。

ボディ背面には1.5型の液晶モニターを備える。コントラストが高く見やすいが、やはり小さいので厳密なフレーミングが必要な時は、無線接続によるスマートフォンやタブレットをモニター代わりにした方が賢明だ。

カメラの各種設定画面もこのモニター上で行うが、メニュー構成などは他のRXシリーズとほぼ同等となっている。操作は、メニューボタンと4つの上下左右ボタン、決定ボタンで行い、タッチパネルは非搭載。

SONY RX0

モニターの左側にはメモリーカードスロット(メモリースティック マイクロ、microSDメモリーカード対応)とマイクロHDMI、USBマイクロ、外部マイク端子を備える。

SONY RX0

撮影者から見て右側面にはバッテリースロットを装備する。使用バッテリーはNP-BJ1で、他のRXシリーズとの互換性は無い。静止画撮影は約240枚可能(CIPA準拠)。

SONY RX0

複数台の連携で真価を発揮か

さてこのユニークで小型のカメラをどのように使うのか? メーカーは「アクションカムではない」としており、身体や自転車などに装着する純正のアダプター類は現在のところ用意されていない。

もちろん三脚座はあるので、自分なりに各種マウント類を用意してアクションカムのような撮影を楽しむことができるが、手ブレ補正機能はないし、GoProのような超広角レンズではないため迫力あるシーンを押さえるのにはやや力不足だろうか。

メーカーのWebサイトでは、最高1/32,000秒のアンチディストーションシャッターや、最高約16コマ/秒連写というスペックを活かせるシチュエーションをセッティングしたスタジオで、多数のRX0を配置し撮影されたダンサーが踊るシーンなどのムービーが公開されている。

それを見ると、RX0の主戦場は、通常のカメラが設置しにくい場所に据え置き、マルチカメラコントロールでのスチル撮影や映像作品制作を主眼に置いているように感じる。もちろん小型さを活かしての街中ブラブラスナップも可能だ。

今回は1台のみだったので、モバイルアプリ「PlayMemories Mobile」を使用しての5台連携機能を試せなかった。なので他のRXシリーズと同じように持ち歩いて、1型センサー搭載24mm単焦点レンズのコンパクトデジタルカメラとして使用感や画質をインプレッションする。

作品

夕方前の鉄塔をプログラムモードで撮影。1型センサーだけあってなかなかの写りである。リベットや注意を喚起する看板の文字まで判別できる。ボディのサイズからは想像できない画質だ。RX100シリーズの血筋を引いていると感じた。

SONY RX0 RX0 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm

RX0はボディのコンパクトさを活かして、一般的なカメラを設置しにくい狭い場所での撮影や超ローアングルでの撮影可能だ。新宿駅から東京都庁間に設置された動く歩道に置いてシャッターを切ったが、その形状から三脚いらずでダイレクトに設置できるので、床面スレスレの視点を得ることができた。

SONY RX0 RX0 / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO 1600 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO 1600 / プログラムAE / 7.7mm

搭載するレンズは歪みがとても少ない。高層ビルのエッジも気持ちよく真っ直ぐと描き出してくれた。フォーカスは他のRXシリーズのように、ワイド(25点自動測距)、中央、フレキシブルスポット(S/M/L)、拡張フレキシブルスポットを搭載。ただAF機能を小さいボディに押し込んだせいか、最短撮影距離は約50cmとやや物足りない。

SONY RX0 RX0 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm

ポケットにRX0を放り込んでブラブラと街中をスナップしたが、24mm単焦点レンズのコンデジとして楽しめた。気になる被写体があると、ポケットの中で電源をONにし、外に出すと同時にボディ上面のシャッターを切るというスピーディーな撮影を堪能できた。PlayMemories Mobileを使用したスマートフォン連携での撮影は、ややタイムラグが生じるのでクイックな撮影には向かない。

SONY RX0 RX0 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm

RX0単体でのクイックな撮影はたしかに楽しい。しかし他のRX100シリーズでもそれは可能だ。RX100シリーズならばズームレンズも搭載しているし、より大きな画面で被写体を確認することも、EVF装着モデルならファインダーをのぞいて撮影することもできる。手のひらに握りしめての撮影はこのRX0にしかできないが。

SONY RX0 RX0 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO 125 / プログラムAE / 7.7mm

雨の夜、濡れた歩道にRX0を置いて撮影してみた。降る雨によって刻々と変化する路面の映りこみを、PlayMemories Mobile経由でシャッターを切った。ISO5000ながら1型センサーなので一般的なアクションカムより画質がいい。RX0ならこのような悪天候時でも安心して撮影できる。

SONY RX0 RX0 / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO 5000 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO 5000 / プログラムAE / 7.7mm

ISO25600まで感度を上げて撮影したが、さすがは1型積層型Exmor RS CMOSセンサー。整ったノイズ感で、雨に濡れるテーブルの冷たさと、水滴の立体感をうまく描写してくれた。

SONY RX0 RX0 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO 25600 / プログラムAE / 7.7mm
RX0 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO 25600 / プログラムAE / 7.7mm

まとめ

RX0は単体で使う限り、軽快な1型センサー搭載24mm単焦点レンズコンパクトデジタルカメラである。キビキビと動作し写りもいい。手のひらにスッポリと収まるサイズと重量はキャンディッドフォトにも向いている。しかしながら他のRXシリーズならより多くの撮影を楽しむことも可能だろう。

やはりこのカメラがもっとも威力を発揮するのは、メーカーのWebサイトにもあるように、キッチリとセッティングされた環境で、多数のRX0を用いたマルチカメラによる作り込んだ撮影ではないだろうか。

もちろんフォトグラファーのアイディアと工夫によって、撮影の可能性は大いに拡がるはずなので、自分こそは! と思う者は新しい表現にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

三井公一

1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナー、コンサルティングなどで活躍中。有限会社サスラウ、Sasurau, Inc.代表。著書にはiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapherー写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)」、「iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)」がある。