オールバーズ(Allbirds)は2019年4月、企業が政府規制とは別に、いかにしたら気候変動と向き合えるのかを示す一例として、炭素税の自主導入を発表した。自社の平均的な靴一足の販売によって10kgの炭素が排出されるとして、その埋め合わせに、一足あたり10セントの炭素税が必要との判断を下したのだ。
ファッション業界が地球環境問題に対する責任と折り合いをつける試みをはじめるなか、口先だけでなく、行動を起こしているブランドもある。
オールバーズ(Allbirds)は2019年4月、企業が政府規制とは別に、いかにしたら気候変動と向き合えるのかを示す一例として、炭素税の自主導入を発表した。2016年に創業した同社は、すでにサステナビリティをビジネスに取り入れ、自然素材を使用した靴作りを行っている――さらには、アイマスク、靴下、靴紐、インソールも販売しはじめた。
「サステナビリティ」にゴールはなく、カーボンニュートラルの実現は容易でない。そこで、オールバーズはオフセットプログラムとして、エネルギー、大気、土地の保全に寄与する3つのプロジェクトを開始した。その埋め合わせに、自社の平均的な靴一足の販売によって10kgの炭素が排出されるとして、一足あたり10セントの炭素税が必要との判断を下したのだ。
Advertisement
「[企業の社会的責任(CSR)は]大まかにいえば、社の価値観を表明する手段のひとつであり、ただし、サステナビリティ問題を真に解決するものではないと捉えている」と、オールバーズの共同創設者/共同CEOジョーイ・ズウィリンガー氏は語る。「我々は社としての価値観を統一し、それを商品と統合することを目指してきた。CSRとは、企業が単に閾値の上にいることを示すものでもなければ、自社の価値観を販促するマーケティング的な行動でもない」。
3つの保全プロジェクトの中身
現在までの資産規模について、オールバーズは明かしていない。米ニュースメディア、アクシオス(Axios)によれば、2018年度は 1億5000万ドル(約165億円)の収益を見込んでいた。楽天インテリジェンス(Rakuten Intelligence)の見積もりによると、2018年から2019年にかけて、オールバーズは48%の収益増を記録しており、2019年度、同社の顧客の平均商品購入数は1.7だった。2018年度の売上目標を達成したとすれば、2019年度の収益は2億2200万ドル(約245億円)と考えられる。
オールバーズはその資金の26%をオクラホマ州デンプシーリッジにおけるプロジェクト、ビッグ・スマイル・ウィンド・ファーム(Big Smile Wind Farm)に投じた。同プロジェクトでは現在、66基の風力タービンが稼働中で、最大発電量は4万6000世帯分に上り、同社によれば、これは年間の温室ガス33万9000トン分のオフセットに相当する。同社はさらに、また別の26%をフロリダ州シトラス郡の埋立地ガス処理に投資した。廃棄物の分解によってメタンが排出されるが、このガスは二酸化炭素よりも環境に有害と考えられており、そこで同プロジェクトでは、フレアリングを利用してメタンを燃やし、二酸化炭素に変えている。これらに加え、さらに別の26%を49万4000エーカーに及ぶ熱帯雨林の保護を目的とする試み、エンヴィラ・アマゾニア・プロジェクト(Envira Amazonia Project)にも投じている。いずれのプロジェクトへの投資も決定者は顧客であり、同社は商品購入者にカーボンファンド(炭素基金)に関するeメールを送付し、意見を募った。
オールバーズは今後、これらの投資で得た知見の一部をサプライチェーンの透明性に関する最適化にも適用していくと、同社のサステナビリティ部門を率いるハナ・カジムラ氏は語る。炭素10kgが炭素税10セントに相当するとの判断を下すために、オールバーズは原材料、製造、エネルギー使用、輸送、さらには顧客による靴の洗濯を含む、一連の流れが炭素排出量に与える影響を計算する独自のデジタルツールを開発した。以来、このツールを利用し、同社は商品開発における環境スコアカードを作成しており、今後もその最適化を予定している。これをサステナビリティに関する「論理的かつ非抽象的な」議論の引き金にしたいと、ズウェリンガー氏は語る。
「手をこまねいていられない」
「良い会社」の世界標準となっている「認定Bコーポレーション」として、オールバーズは「ワーカーズ」「環境」「コミュニティ」など5領域にわたる評価、Bインパクト・アセスメントを受けている。最新の総合スコアは2016年に受けた前回の評価を7.5ポイント上回る89.4だった。その内28.6ポイントが環境問題への取り組みによるものであり、5領域のなかで最大となっているという。
「[ファッション業界は]確かに、サステナビリティの実現がいかに困難か、という堂々巡りの話に陥りがちだ。だが、詰まるところ、私たちは賢明な人間の集まりなのだから、皆で最大限の努力をしよう、というのが我々のスタンスだ」とカジムラ氏は語る。「複雑で微妙な問題だから、を言い訳にして、手をこまねいている場合ではない」。
EMMA SANDLER(原文 / 訳:SI Japan)