指向性超音波スピーカー

 

何年も前に購入していたキット。
放ったらかしでした。
先日、埼玉県での盗聴盗撮調査のご依頼を受けた時、これに関連する様な被害をお話しされていたので、出張に持っていくために慌てて作製。

超音波スピーカキット

 

キットといっても、チップ部品やほとんどのICは既に基板に実装済み。
コンデンサ、LED、接続端子、VR等をはんだ付けしてきます。
スピーカ自体は50個の超音波発振子をはんだ付けします。

超音波指向性スピーカー完成

 

VR調整後、動作チェック。

ICレコーダのイヤホン端子に接続して音声を入力してみます。
手に持ってスピーカを動かすと、不思議な感覚を覚えました。

手に持って、自分の顔の方にスピーカを向けると、自分の後頭部から音声が聞こえてきます。
スピーカを置いてそのまま1～2ｍ下がっても、後頭部から音声が聞こえます。
それ以上離れると、一般的なスピーカと同様にスピーカの方向から音が聞こえます。

もう一度近づき、手に持ち真正面から少し角度をつけていくと、スピーカ自体から音は聞こえなくなり、室内の他の場所から音が聞こえてきます。

このキットは超音波振動子のエネルギーが直進することを利用しています。
これにより、特定の方向だけに音を伝えることができます。
音声変調された超音波キャリアは、鏡に光が反射する様に壁などに反射します。
天井に向けると、天井から聞こえてきます。
5ｍ程離れた壁に向けると、誰もいない場所から声が聞こえます。
そこに誰かが立って話している様です。

試しに、屋外から透明な窓ガラスに当ててみました。
予想していた通り、ガラス窓に反射して大きな音で聞こえました。
この状態で室内側で聞いても、ほとんど音が聞こえません。窓ガラスの外に通常のスピーカーがあるのと同じ程度です。
屋外から外壁に当てた場合も同じです。

室内でいろいろと試しましたが、壁・天井以外にも様々な物に反射するため、広い場所で実験してみます。

長居公園のヤンマースタジアム長居横で検証します。
電源は、ジャンプスタータの12V出力を利用。
(時間を見つけてケースを加工する予定)

ジャンプスタータ・ICレコーダ・指向性スピーカ

 

スピーカ手前で通常に聞こえる音量に設定します。(少し大きめですが、ガンガン鳴らす訳ではありませ)
それにも関わらず40ｍ以上離れた所でも聞こえました。
ICレコーダの音量を上げると更に離れた所でも聞こえると思いますが、このキットには過大入力制限回路が無いためやめておきます。
指向性のためエネルギーが分散されず離れた所で聞こえますが、距離が離れるにつれ、音は横方向にも広がっている様です。
添付資料では、スピーカー中心から±10°に広がると記されています。
実際は、それよりも広がっている様でした。

指向性スピーカ到達距離測定

 

このキットの基板にはもう一つ出力回路があります。
もう一つスピーカ(超音波振動子50個)を接続することができます。

説明書には絵画・ディスプレイモニターに向けて、そこから音が出ている様な利用方法や、天井に反射させて特定の場所だけ音が聞こえる使い方が記されています。
しかし、イタズラ・嫌がらせに悪用される恐れもあります。

当初、弊社で販売している盗聴妨害器のスピーカーとしての利用を考えていました。
これが利用できると、壁や天井に穴を開けてスピーカーをネジ留する必要が無いので便利です。
しかし、音は壁に完全反射します。
壁自体に音がほとんど伝わらないので、盗聴妨害器のスピーカーとしての利用は不可。
また、価格が高いこともあるため諦めます。

接触式音響機器

 

壁に一番音が伝わるのは写真のスピーカ。
このスピーカ自体は音はかすかにしか鳴りません。
しかし、壁に接触させると壁自体がスピーカになり大きな音が鳴ります。
取付金具が付いていないため壁に取付けるのが難しく、直接お伺いして弊社で取付作業をするお客様限定で販売していました。
また、価格が高いこともあり、ウェブページ上では販売していませんでした。
このスピーカ単品は手に入らなくなったため、現在は一切取り扱っていません。


今回作製した指向性スピーカは、お客様の所に持ち込むサンプルとしての利用を考えていますが、何か実使用できないか考え中です。
このスピーカーは、うるさい相手を黙らせる「スピーチ・ジャマー」に利用され、2012年のイグノーベル賞を受賞しています。
また、京都「清水寺」入口の入場案内に使用されているそうです。