[原発のゴミ]建設費よりも、廃棄物処理費用のほうが高額!日刊SPA! | 脱原発の日のブログ

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12月8日は1995年、もんじゅが事故を起こして止まった日。この時、核燃料サイクルと全ての原発を白紙から見直すべきだった。そんな想いでつながる市民の情報共有ブログです。内部被ばくを最低限に抑え原発のない未来をつくろう。(脱原発の日実行委員会 Since 2010年10月)

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◆[原発のゴミ]が引き起こす地獄絵図(1)

◆福島第一原発の廃炉コストは兆単位!?
放射性廃棄物がただの産廃扱い!?

 福島第一原発の廃炉が決定的になった。さらに、浜岡原発の運転停止も決定した。1兆円以上とも言われる廃炉費用に国民負担はあるのだろうか? そして、放射能を浴びた膨大な廃棄物はどうやって処理すればよいのだろうか?


福島第一原発の廃炉解体費用は6基で計7兆円!?

 原発の解体や処分にいったいいくらのカネがかかるのだろうか?

「実は、以前から『廃炉』の費用は徴収されているんです」と語るのは、立命館大学国際関係学部の大島賢一教授。

「89年に『原子力発電施設解体引当金』制度が整備されました。以後、廃炉(解体と解体廃棄物処分)に備える費用が、電気料金から徴収されているんです」

 しかし、これは実態を無視した「どんぶり勘定」だという。

 有価証券報告書によると、東電は、原発1基当たりの解体見込み額を年間10億8000万円と単純計上しているだけ。例えば、39年稼働の福島第一原発1号機は、この金額に39をかけた約421億円。同じく2号機(稼働36年)、3号機(34年)、4号機(32年)を計算すると、合計1523億円にすぎない。09年度末で東京電力が確保している解体引当金は、原発17基に対して5100億円。これだけで、本当に福島4基の廃炉ができるのだろうか?

◆費用は電気料金値上げで国民負担

 79年に炉心溶融事故を起こしたアメリカのスリーマイル島の原発の廃炉には、12年が費やされた。’86年に爆発したチェルノブイリ原発も、まだ処理は終わっていない。

 電気事業連合会の見積もりはこうだ。

「原発が40年稼働した場合の廃炉費用は、1基当たり550億円前後です」(広報部)

 福島第一原発の場合、単純計算すれば2200億円が必要になる。ところが、これでは「絶対に無理」という声が各方面から上がっている。東電の勝俣恒久会長も「50年以上、1兆円以上はかかる」と発言している。さらに被害者への補償金を加えると、いったいいくらになるのだろうか……。

 だが「そんなものでは済まない」と主張する人たちもいる。その一つ、日本の金融機関の環境情報を発信する市民団体「FGW(Finance GreenWatch)」は「約7兆円」と試算(ただし5号機と6号機も含めた6基分)。米国会計検査院(GAO)は破局的事故が起きた場合の損害を1基当たり150億ドル(約1兆2000億円)と、86年に米議会に報告している。これは、スリーマイル島の事故で実際にかかった費用に基づいて算出された額だという。

 5月2日、廃炉と賠償を実現するための政府案が明らかにされた。それによると、その総額は4兆円。そこで、電力各社で新たにつくり、国も公的資金を投入する「機構」から東電は支援を受ける。それを毎年、東電が2000億円、ほかの8電力会社が2000億円を10年間返済するというもの。ところが、この賠償資金確保のため、東電は電気料金を約16%値上げするというのだ。

 つまり、稼働中も廃炉後も、私たちの電力料金負担だけが求められている。大島教授はこう語る。

「今は、東電を国有化する議論より、徹底して東電に責任を取らせることです。東電の資力から対策を考えるべきではない。被害の完全救済は絶対に必要です」

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◆[原発のゴミ]が引き起こす地獄絵図(2)
建設費よりも、廃棄物処理費用のほうが高額!
東海第一原発
 今、日本で解体されている最中の原発が2つある。日本最古の原発「東海発電所」(日本原子力発電。茨城県東海村。以下、原電)と、「ふげん」(日本原子力研究開発機構。福井県敦賀市)だ。東海発電所は日本最古の商用原子炉で、65~98年の33年間運転し、01年から解体作業に着手している。この廃炉の前例からは、今後、福島第一原発が抱える問題の数々が見えてくる。

 東海発電所は01年から解体が始まった。10年たった今も解体中だ。いったい、いつ終わるのか?

 東海村の相沢一正議員は冷ややかだ。「本来なら、今年から原子炉本体の解体に着手するはずでしたが、遅れていますね」。

 原電広報グループに尋ねてみると、「当初の予定では、17年度が終了予定でしたが、なにせ商用炉では日本初の解体ですから、作業を慎重に進めるうちに遅れました。現時点では、20年度の解体終了予定です」とのこと。

 東海発電所は、出力16.6万キロワットの小型原発。それでも解体に19年もかかるのだ。

 そして驚くのは、その廃炉費用だ。東海発電所の建設費は465億円。ところが、廃炉には、01年時点で545億円が見積もられたが、現在では885億円と建設費の倍近くに修正されている(この費用は、原電が積み立ててきた解体引当金でまかなっている)。この内訳を見ると、解体費の347億円に対し、廃棄物処理処分費が538億円もかかるという。

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◆[原発のゴミ]が引き起こす地獄絵図(3)

処分する場所のない“核のゴミ”はどうなるのか?

 商用炉では東海発電所が日本初の解体事例だが、試験炉では、やはり東海村にあった、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)が保有した「JPDR」が既に解体を終了している。

 JPDRは出力1万2500キロワットの超小型原子炉。63年から76年まで稼働し、86年から廃炉に着手し96年に完了している。だが、この小型原子炉でも廃炉に230億円がかかり、さらに解体で発生した放射性廃棄物の極低レベルのものは敷地内で50年間埋設するという実験を行っている。そのほかにも2万t以上の固体廃棄物や非放射性廃棄物もいまだに施設内で保管されている。

「つまり処分しきれないということです。核のゴミなんて、どこの自治体も引き受けないので、自分のところで埋めるしかない。でも、東海発電所では非放射性廃棄物も含めて、今後19万tものゴミが出る。どこにも持っていく場所がありません」(相沢議員)

 原発解体では、よく知られる高レベル放射性廃棄物のほかに、まだ3種類の廃棄物が出てくる。低レベル放射性廃棄物。クリアランス対象物。そして「放射性廃棄物でない廃棄物」だ。東海発電所では、それぞれ2.3万t、4万t、12.9万tの計19.2万tが発生するのだが、クリアランス対象物とは、放射線値が年0・01ミリシーベルト以下の廃棄物であればリサイクルできる廃棄物をいう。値が低くても、核廃棄物がリサイクルされる。

 そのリサイクル品のベンチや椅子などの金属製品が、原電が運営する資料館「東海テラパーク」(東海村)で展示中だ。

「一昨年、東海発電所で解体された燃料取替機など4tが地元の鋳物工場で溶かされリサイクルされたんです。でもこれは、その利用を原電内部に留めるべきですね。金属表面の放射線値が低くても、内部の値はわからない。加工でカットして、値の高い部分が露出するかもしれない。今後は、一昨年の500倍という量の廃棄物がリサイクルされます。おそらく、業界内では使いきれないでしょう。一般社会に出回るのではないか……と危惧しています」(相沢議員)


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◆[原発のゴミ]が引き起こす地獄絵図(4)

残土から作られたウランレンガ。1個90円
 原発だけでなく、核関連施設も“核のゴミ”の処分に困っている。昨年、相沢議員のもとに一通の内部告発文書が届いた。それは日本原子力研究開発機構の下請け会社の社員からで、そこには「会社から人形峠のウラン残土をリサイクルしたレンガを買うよう強制された。調べると、機構の幹部が会社に乗り込んでレンガ購入を打診し、会社が断れずに買った」と書かれていた。

 当初は希望者にレンガを買わせようとしたようだが、放射性廃棄物のリサイクルレンガを買う者はおらず、会社が費用を負担して社員に配ったのだという。

  膨大なウラン残土の処分に困っているのが、人形峠環境技術センター(岡山県)。ここでは長年、ウランの精練や転換を行ってきたが、’01年に事業を終了した。現在は、大型解体に向けての準備中だ。かつてウラン採掘をしていた人形峠では、採掘後に放射線を出す膨大な残土が残った。この撤去をめぐり、地元住民は裁判を起こし勝訴したのだが、この処理に困った機構は、09年からそれを土と混ぜ、レンガとして売り出していたのだ。

行き場を失ったウランの山が何と48万立方メートル!

人形峠のレンガから最大値0.35マイクロシーベルト/時と、通常値の約7倍の放射線を検出
 この人形峠では、毎時0.1マイクロシーベルトの低レベル放射性廃棄物は厳格に保管されているのに対し、最高値で毎時0.35マイクロシーベルトを検出したウラン残土をリサイクルしたレンガが通信販売や店舗で一般に売り出されている。放射線値の高いほうがなぜ一般流通できるのか?

 この疑問に、匿名を条件にして機構本部の職員が答えてくれた。

「簡単な話。低レベル放射性廃棄物は、『原子炉等規制法』で厳重な管理が求められますが、残土やレンガはその対象外だからです」

 ウラン残土は法の網から漏れていたのだ。そして、150万個ものレンガは内部告発のとおり、果たして機構内部だけで使えなかったのだ。

「やはり機構内部だけでは使い切れず、立場の弱い下請け会社などに押しつけているのでしょう」(相沢議員)

 ウラン残土処分の問題は、これで解決したわけではない。なぜなら、レンガになった残土は、全体の0.6%にすぎないのだ。人形峠周辺にはいまだに、今も放射線を出しながら総体積48万立方メートルもの行き場のない残土の山が存在している。

 もし線量が下がったらどう処分するのか?

 案内をしてくれた職員は「わかりません」と答えるだけだった。

 ウラン残土だけではない。人形峠には、低レベル放射性廃棄物がドラム缶で1万6091本、解体廃棄物の容器が1230基、さらに、11tが漏れれば、半径800m以内の人は即死と言われる六フッ化ウラン(劣化ウラン)が3843tも保管されている(’09年9月末時点)。

 解体廃棄物とは、施設で使ってきた機器、金属類や建材のことだが、当然放射線を浴びている。倉庫入り口でも毎時0.14マイクロシーベルトと、低レベル放射性廃棄物同様に扱わねばならない放射線が出ている。

 職員に「これがどう処分されるのか」と尋ねてみた。職員はこう答えたのだ。

「これは『核燃料物質によって汚染された物』との分類で、核廃棄物ではありません。通常の産廃として処分されます」

 これもクリアランス対象物としてリサイクルされるということだ。だが、どこに流れるのか?

 六フッ化ウランにしても、今まで11回、福井県の「もんじゅ」の燃料として60tが送られただけで、残っている数千tをどうするのか? いずれの質問にも、担当職員は「これからの議論です」と答えるだけだった。

 東京電力の福島第一原発、そして中部電力の浜岡原発。解体が実現すれば、東海発電所の数十倍もの規模になるこれら原発では、自社内の埋設やリサイクルだけでは間に合わないほどのさまざまな核廃棄物が膨大に発生する。

「これはおそらく氷山の一角です。もともと、“核のゴミ”を処分する方法を真剣に考えてこなかったツケがきています。今まで生み出したゴミだけでも、とても処分しきれない。低レベルとはいえ、行き場を失った放射性廃棄物がリサイクルされ、出回っていることは大問題です」(相沢議員)

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◆[原発のゴミ]が引き起こす地獄絵図(5)

 最近、「放射線レベルが低いから安全」とか「ただちに健康に影響を及ぼすものではない」と“専門家”が解説しているのをよく耳にします。しかし、放射線には「しきい値」はありません。「安全な被曝」などないのです。

「しきい値」とは、放射線を浴びて体に症状が出る最低の被曝量を言います。でも、しきい値以下でも、細胞の分子結合が損傷を受けるのは避けられません。

 私のこの主張は、低レベル放射線の影響を長年調べてきた米国科学アカデミー研究審議会(BEIR)が’05年に出した見解――「被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。最小限の被曝であっても、人類に対して危険を及ぼす可能性がある」――で裏付けられました。低レベルの被曝であっても、がんの発症率が上がるとの研究結果が出ています。どんなに低線量でも、被曝しないことにこしたことはありません。まして、放射性廃棄物をリサイクルして使用するなど、絶対にあってはならない。

 人形峠のウラン残土の問題でも、「安全です」と繰り返し残土を放置した機構(当時は動力炉・核燃料開発事業団)は、人形峠全体の0.6%にしかすぎない残土すら適切に処理できなかったのです。

 そして、ウランレンガを生産した鳥取県の三朝町では、それを2万個使って公園を造りました。自治体はいい加減な解決に手を貸すべきではないと思います。子供たちが遊ぶ公園に、放射性廃棄物が使われているのです。

 残土に限りません。原発からは、運転中も運転停止後も核のゴミが排出されます。そのうち低レベル放射性廃棄物は300年もの管理が必要です。300年後まで責任を持って管理するというのも、非常に大変なことです。

 さらに、原発から排出される高レベル放射性廃棄物は、その管理に100万年が必要で、日本では既に広島型原爆110万発分の廃棄物が溜まっています。しかし、この高レベル放射性廃棄物の処分方を確定できた国は世界に一つもないのです。


【小出裕章氏】

49年生まれ。京都大学原子炉実験所助教。40年にわたって原発の危険性を訴え続けている。『原発のウソ』(扶桑社新書)が好評発売中