本宮政義 | 赫いわななき〜地獄編〜

赫いわななき〜地獄編〜

80年代歌謡曲をご紹介しているHP『赫いわななき』、こちらでは比較的最近リリースされた演歌・歌謡曲から強力チューンをご紹介していこうと思います。
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『B級歌謡猟色図鑑 赫いわななき』
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「桜闇」本宮政義
作詩/ちあきかな 作曲/浅川喜雄 編曲/内山有希夫
C/W 「恋みなと」
作詩/海老澤孝一 作曲/浅川喜雄 編曲/内山有希夫
オリエント ORC-8268 1997.11.25.

前回ご紹介した柏木タカシさんの「桜の花びら五線紙に」とともに、俺が愛してやまない桜🌸ソングの隠れた名作をご紹介しましょう。本宮政義さんの「桜闇」です。

この作品、実は最近まで知らない曲だったのですが、ワタクシの尊敬する “師匠” にご紹介頂き、盤をご提供頂いたもの(この方には本当に本当にお世話になっております)。レンタル落ちの為ジャケに書き込みなどもあるんですが、そんな事云ってられません。

何とリリースはあの『オリエントレコード』よ!以前お名前だけご紹介した倉持マリ様や、
「夜の雨」ブルージーでなかなかの曲よ。歌唱シーンではマリ様の脚線美に釘付け!

『歌謡ポップスアイドル』和泉まゆちゃん、
2011年この曲でデビュー。今も活動続けてらっしゃるのでいつか生のステージを拝見したい方です。

他にも都倉純さんやあの田嶋陽子さん、伊丹幸雄(サッチン!)もリリースされてる超老舗インディーズレーベルよ!!オリエント黎明期である1981年にデビューされ、2015年に同じオリエントでそのデビュー曲「死ぬまでだまして」を再リリースされた紀藤ヒロシさんは今年惜しくもお亡くなりになりました、ご冥福をお祈り致します。

オリエントからリリースされた80年代のレコードは何枚か所有してますが、
8㎝CD、出てるんですねぇ…ってそりゃ出てるでしょうけど、初めて見ました。

そんなオリエントレコードから「桜闇/恋みなと」でデビューされた本宮政義さん、1966年7月3日新潟県燕三条のご出身という事ですが、他には殆ど情報が残ってないんですよねぇ。編曲の内山有希夫先生が懇意にされてたようです。

タイトル曲の「桜闇」、まあタイトルに “桜” を持ってきてさらに闇ん中なんですから想像はつくでしょ。

“桜ソング”、歌謡曲というジャンルの中で大きく分類すると「桜坂」系統のふんわりバラード調と「夜桜お七」的な激情型ドラマチック演歌に分かれるんですが(あくまで自論、異種として岡本舞子「桜吹雪クライマックス」は挙げておきます)、この「桜闇」は完全後者ですね。
といっても男性の歌うドラマチック演歌は女性演歌のように白眼剥いてあらぬところを指挿すワケにもいかないので(いややってもいいしヤッてそうな方もいるんですがw)、 “男泣き” がメインのものが多いかな。何というか、ふりしぼってイク感じっていうの?でも陶酔気味に振り絞るだけではダメで、そこに独自の世界観がないとね。

本宮さんの『ドラマチック演歌』、そういった意味ではawesomeでominousなチカラがゴゥゴゥと渦撒いております。俺の稚拙な表現力では伝わりにくいんですが、この「桜闇」は淡々と狂い咲き翻弄され散らされてゆく仇花の哀れな美しさを見事に表現されてるんですわ。
※画像はイメージです(笑)今年撮った夜桜。自宅近くの通りに咲いてたんですが、交差点にあった桜が信号変わるたび色を変えてて、まるで嬲られてるかのようだったのでで思わずシャッターを。

序盤は凪々と穏やかに始まるんですが、徐々に生ぬるい風が吹き始め…サビ前の♬この胸に〜で導火線のスイッチが入ったように悶え狂い始めます、しかもあくまで静かに。

…これはちょっとヤバい。入ってははいけない獣道に知らず識らず連れられてしまったような、○○○の○○○を○○○てしまったような(なぜ伏せ字wwだってコワいんだもん)そんな世界が言葉の後ろから這い出してきそうなイキオイで圧しかかってくるの。
こういう静かな狂気が一番悪阻ろしいんだよなぁ。正直特におかしな処はないんですよ、ちあきかなさん(今は千秋かな名義でしょうか)の紅く滲んだような詩を本宮さんは淡々と歌い上げてるしメロもアレンジも仕掛けがあるワケではないし。むしろ当時でこのアレンジは豪華過ぎるくらい、さすがオリエントオーケストラ!

ただコーラスが、ほんのちょっとコワいのよね(笑)。イントロから♬さ〜く〜ら〜って入るんですがどうにも生気を吸い込んでるようで(平知佳「初恋だったの」かと思った…)このフレーズがサビでも登場し、本宮さんの歌唱と絡む辺りは絶品!もしかしてこのコーラスがすべてを負の世界へ持ってってんのかしら。

いや本宮さんの歌唱もそういえばかなりマイナスイオンを発してそう。歌はもちろん上手いんですが何というか、小さな辻風のようにひっそりと渦舞うのに手を入れると指ごともげてしまいそうな深い念を秘めてるという、虞ろしい表現力の持ち主と見ました。
これはC/Wの「恋みなと」でも変わらず、曲の表現する世界観とまた違う『風ひとつ隔てた異次元』を存在させております。“恋”や“みなと”を歌いつつも何か歪んだ時空が閃輝暗点のようにフラッシュイン|アウトされ、見てはいけないものを見てしまう不安と期待に思わず手を伸ばしてしまいそう。


…えーっとワタシ、大丈夫ですかね?(笑)いやホント、本宮さんのこの歌唱には表と裏とかいう単純なものではなくもっと奥行った世界を感じるんですよねぇ。ルックスは朴訥とした青年風ですが、普通の子が一番コワイのよ(加藤香子かよw)

もし彼が現役で歌手を続けられてたら絶対に生の歌声を聴きたい!と思ってしまうんですが、残念なことに2009年12月に他界されたそうで…(前述の内山有希夫先生のブログより)。こんなオルタナティブなシンガー、なかなか出てこないのに。惜しい。もっとMOTOMIYAの世界を創りあげて欲しかった…

いや、本宮政義さんはこの「桜闇/恋みなと」という素晴らしい作品を遺してらっしゃるんだもの。それだけでも感謝ですよ!!(他にライブで内山先生作曲のオリジナル曲も数曲歌われてたそうです。聴きたい!)素晴らしい作品を世に出した演者として、故人を悼みつつ『本宮政義』という歌手をこれからもリスペクトして参ります。



P.S. 桜ソングの名曲、この他にも田山ひろしさんの「夜桜海峡」てのがありますので一応提示しておきます。詳しくはこちらをご覧下さいませ。

P.S.2 オリエントレコードといえば、前々から欲しくて探してる中島恵子「ブリリアント/雨の朝」(OR-8118 1987.)のカセットが国会図書館に所蔵されてる事を発見。見て来なきゃダメかしら…