戸籍法違反:無戸籍33年、母に過料 | 離婚後300日問題-民法772条による無戸籍児家族の会

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戸籍法違反:無戸籍33年、母に過料
 「前夫の子、理由にならず」 簡裁決定


毎日新聞 2015年09月20日 大阪朝刊

前夫の暴力を恐れて、33年間出せなかった娘の出生届を役所に提出した神奈川県内の母親に対し、藤沢簡裁(町田俊一裁判官)が出生後14日以内に届け出をしなかった戸籍法違反で過料5万円を科す決定を出していたことが19日、分かった。法務省の調査では、今月10日現在で無戸籍の人は全国に665人いて、実際はそれ以上と見られる。専門家からは「支援を必要とする無戸籍の当事者が、声を上げにくくなる判断だ」との批判が出ている。

 代理人の南裕史弁護士(東京弁護士会)によると、母親は1961年に前夫と結婚し、九州地方で暮らしていたが、激しい暴力に耐えかね、80年に神奈川県内に移住。82年に別の男性との間に娘が生まれた。民法772条は、「婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、夫の子と推定する」と規定。出生届を出すと戸籍上は前夫の子になるため、娘の存在を前夫に知られることを恐れ、出せなかったという。

 昨秋、戸籍がないことに悩んだ娘が支援団体に相談し、実父に親子関係を認めてもらう「認知」の審判で今年6月に親子関係が確定した。前夫との離婚も昨年ようやく成立していたため、審判の翌日に出生届を自治体窓口に提出。自治体から、届け出期間超過の通知を受けた簡裁が決定を出した。

 決定は8月7日付で「子と母親の親子関係は出生時に確定している」ため、届け出期間を過ぎた「正当な理由とならない」とした。母親側は異議申し立てをしたが簡裁は退けた。民法772条は、他に、「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する」とある。この規定により、無戸籍になる子の存在がクローズアップされている。

 専門家によると、民法772条による出生届の提出の遅れで過料を科されることは珍しい。南弁護士は「無戸籍者がこれだけ社会的な問題となっている中、当事者の救済にブレーキをかける判断だ」と指摘。弁護団を結成し、24日に横浜地裁に即時抗告する方針という。【反橋希美】

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 ■解説

 ◇血の通う判断を

 藤沢簡裁の決定は、戸籍法の規定を形式的に運用したもので、速やかな届け出を促す法の趣旨とは逆に、無戸籍の人やその家族の届け出をさらに萎縮させる可能性がある。

 法務省の調査では、無戸籍の人の約8割が民法772条が原因で出生届を出せない人たちだ。

 今回、過料を命じられた母親は、前夫から包丁を持って追いかけられるなどの激しい暴力を日常的に受けていた。出産後も、戸籍を取るために役所窓口や家庭裁判所に相談したが、前夫の証言を必要とする「嫡出否認」か「親子関係不存在確認」の裁判手続きを案内されて断念した経緯がある。

 最高裁によると、出生届の提出が遅れたことによる過料の統計はない。しかし、「民法772条による無戸籍児家族の会」(神戸市)の井戸正枝代表は「1000件近く支援してきた中で、過料が科されたのは無戸籍問題が社会に認知され始めて間もない頃の1件のみ。前夫の関与を必ずしも必要としない認知の手続きが知られるようになったのはここ数年で、決定はあまりに酷だ」と憤る。33歳にして戸籍を手にした娘は小中学校に通えなかった。無戸籍の人の救済に向け、血の通った判断が示せるか、司法が問われている。【反橋希美】



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これは、本当に酷い。
母親も解決の努力を怠ったわけではないのに。

前夫の関与なく実父との間で認知調停ができると最高裁判所が周知したのが2008年6月だ。

2003年、2004年に京都家裁に申立をしようとした私も、「認知調停は772条では用途が違う」と受理されなかった。
婚姻関係はすでに破たんし2年以上交流がないこと、離婚も成立し前夫の子供である可能性はないこと、嫌がらせやつきまとい行為があるため自身や家族の身に危険が伴う可能性があることも証拠を持参して説明したが、窓口で一蹴された。

無戸籍なんてものが報道されていなかった1980年に当事者が役所や家裁に相談した際、担当者からどの様な言葉を並べられて一蹴されたか、私には容易に想像がつく。

2008年の周知まで、ほとんどの家裁が前夫との間での嫡出否認もしくは親子関係不存在確認の調停でしか解決できないと説明してきた。
いや、家裁によっては未だにそう説明をしている。
「前夫を関与させない認知調停は不公平である」として、「この家裁では認知調停をしない」と宣言している家裁も存在する。

なんてナンセンス。

別れた妻が生んだ他人の子供の調停に仕事を休んでまで関与したい前夫など、ほぼいない。
いるとしたら、元妻に執着している人だ。
全くあり得ないのに「私の子供かもしれません」と証言して、調停を混乱させる。
そのうち「法的には俺の子なんだから、戻って来いよ。家族三人でまた仲良く暮らそう」なんていう気持ちの悪い事を言い出すのだ。

実際にこういう事例が少なからずある。
母親にとって、恐怖以外の何物でもない。


もし、罰金を払えば子供の戸籍ができるというのなら母親たちは喜んで払うだろう。
前夫を調停に関与させるより、はるかにマシだ。

いくら過料を科しても、今のままでは無戸籍は減らない。
むしろ相談しにくくなって、把握できない無戸籍児が増えるのではないだろうか。

国は、当事者の努力で解決していけるように認知調停の運用方法を考えたり、自治体の窓口職員にもっとしっかり教育をしたり、法律に疎い当事者でも相談しやすい窓口を作るのが先ではないのだろうか。

罰金を科すことで無戸籍を減らそうなんて、逆効果でしかない。


【西日本支部 柴田ゆかり】



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