唾を吐きモフモフ研修 3日目 | とある獣医の豪州生活(オージーライフ)

とある獣医の豪州生活(オージーライフ)

オーストラリア在住の獣医学生であるAKIが熱帯魚の飼育日記をはじめ、
ワンコ、麻雀、アニメ、日々の生活などなど・・・
日本とは少し違った世界観をUPするブログです。

※コメントしていただくと、ブログ主が泣いて喜びます。

やぁ( ´∀`)
今日も濃い一日を過ごしてましたAKIでござんす。
ぶっちゃけ今日は帰宅が8時近くになって疲れてたりするけど、それでもチャッチャと更新するお!
このブログで動物や獣医学、海外なんかに興味を持ったりモチベーションが上がれば嬉しいな、
そう刹那に願いつつw


今日は獣医さんが牧場に現れますたよ。
なんとまぁ、アルパカの獣医。ちゃんとSpecialiseしてる「アルパカ専門家」でございますよ!
アルパカにSpecialiseしている獣医は本場である南アメリカでも少ないこともあってか、
今日あったこの獣医さんは世界で一番アルパカを診るのが上手な獣医といっても全然過言ではないとww




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そんなこんなで、獣医さんに診てもらうアルパカさん達が集合でつ。

真ん中のアルパカさんは碧眼だね。
一種の変異体で、碧眼のアルパカは聴覚障害を併発しやすいとアルパカ歴20年の牧場のオッチャンは語る。
実際、この牧場にも何匹か碧眼がいるけど、確かに耳の聞こえない子がチラホラ。



そんなアルパカさん達が集められた理由は2つ。


まず4匹の雌は卵子のドナー。2週間ほど前から排卵を促す薬を投与された個体達。
アルパカには猫動揺、生理の周期がなくて「交尾する→脳内物質→排卵」という流れになってる。
だから普通なら交尾した後に卵子が一つ、卵巣から排出されるわけだけど、
これを薬で人工的に20個ぐらい排卵させてしまうのだ。

排卵させた雌は指定の雄と交尾させる。
すると、排卵した複数の卵子が受精卵となる・・・可能性が高い、理論的にはw


一方で、残りの雌達はRecipient、代理母です。
こいつらにはいわゆるピルみたいなモンを予め与えておいてあるんで、
雌達は妊娠していると「錯覚」している状態。
実際には体内に受精卵はないんだけど、薬で脳内物質が高まってるから体調としては妊娠してる。



ドナーたちはどれも優秀な遺伝子を持った個体達で、掛け合わせた雄も優秀。
そいつらの受精卵を沢山作って、代理母にこの卵を移動するわけだ。
すると妊娠を錯覚していたために受精卵を育てる準備ができていた代理母は、普通にこの卵を育てる。
結果、優秀な遺伝子をもっているであろう子供達が、いっぺんに何十匹も作れる・・・理論的には!
アルパカの妊娠期間はおよそ1年とクソ長いんで、一気に何十匹も子供を作れるのは画期的なのだ。





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しかし、アルパカさんとしては注射を刺されたり狭いところに押し込められるのは嫌いw
アルパカは機嫌が悪くなると真ん中や右側の個体のように、下唇をだらんと下げる。
これを見かけたら要注意だ、メッチャ機嫌が悪いからなwww
ちょっとガンを飛ばしてきたら次には「ゲフッ」とか言って唾攻撃が飛んでくるぜい。
この唾攻撃、ダイレクトアタックの射程が2~3m、飛散した霧での関節攻撃の射程は風下5m。
だから必要がないときは近づかないのが吉(; ´∀`)




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アルパカの補てい方法ぉー。

まず後足を拘束します。
アルパカの基本的な着座姿勢を取らせたら、指の下にロープを通す。
このロープはStifle jointの内側と通ってから骨盤の上辺りで硬結び。
この時、両後足を身体に密着させてから結びたいんで、上にまたがって足でグイッと押しつつ結ぼう。

後足が終わったら台の上に乗せて、次に前脚と首を拘束。
通称「ヨガ補てい」、首を地面スレスレまで下げさせたら、片足の手首部分を首の上にクロスさせる。
これだけで手も首も動かせなくなり、後足も固定されてるんで事由を奪えるおw






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鎮痛剤を打たれて眠くなっちゃったアルパカさんの図ww
我々研修生たちの仕事は主に、
アルパカに鎮痛剤の注射→おねむのアルパカを持ち上げ部屋まで移動→補てい
この流れをひたすら行ない続ける。
割と肉体労働です、アルパカさんは60kgじゃけぇの。


一方で獣医さんのお仕事は・・・、

ドナーの肛門からウ○コを取り出す→校門から超音波で受精卵の有無と数を確認→膣内にチューブ投入
→膣内に生理食塩水注入→チューブから生理食塩水を受精卵と共に抜き取り→受精卵確保
→顕微鏡で受精卵が生きているか確認→代理母に注入準備→代理母の妊娠準備状態確認
→代理母にドナーから取り出した受精卵を注入。


この流れ。
ここら辺の工程は企業秘密のため写真は撮らなかったぜい。



ちなみに獣医さんの得る報酬は、ドナーのチェック一匹に対して十数万円、
それプラス、代理母に受精卵を一つ注入する度に追加報酬、あとは往診費用も出るだろうね。
日給100万円ぐらいになったんじゃなかろうか、今だけで。
さすがはSpecialist、レベルが違いますなぁww

でも牧場にしてみても、この代理出産で生まれた子がコンテストで優勝でもすれば、
それだけでその個体の価値が何百万円にもなるわけだよ。兄弟の価値も何百万になる。
だから悪くない投資ではあるんだ、上手くいけばねw




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ヒィヒィ、忙しくて昼飯を食べる時間もないぜいwww
っつーことで部屋の片隅でそそくさと弁当を食す。
手がウ○コまみれのとき、箸の偉大さに気づかされる、それが獣医学生。

あ、ショートへアーだから解りづらいだろうけど、獣医さんは女性の方ですお。
メルボルン大学卒だって。


昼飯を食ってる最中も色々とアルパカや獣医業界のお話を聞かせてくれまくった。
時折問題が挟まれるのが恐ろしいぜいw

先生 「アルパカの胃と羊の胃、違いは?」
AKI  「お、おう・・・羊は4部屋、アルパカは3部屋でPillarがない・・・って一昨日読んだはず・・・」
先生 「正解」
AKI  「(; ´∀`)よ、よゆー(キリッ」

先生 「セルロースの分子構造を述べよ」
AKI  「お、おう・・・分子構成自体はGlucoseと同じだけど第三だったかのCの部分でHとOHが逆・・・」
先生 「そそ、動物にはこのBondが壊せないから人間は吸収できないのよね」
AKI  「(; ´∀`)(これは絶対に生化学で出る部分だからな)」

先生 「でもアルパカは体内のバクテリアが分解してくれてる。じゃぁその分解されたものはどうなる?」
AKI  「おおおう・・・セルロースがVFAに分解されてから吸収されて・・・
     一部のVFAは肝臓でGluconeogenesisによって糖に再変換されて脳細胞なんかで使われる・・・はず」
先生 「おk、VFA自体も細胞のエネルギーになるけど脳細胞なんかは糖じゃないと駄目だからね」
AKI  「(ま、まさかの連続出題でくるか・・・あぶねぇw)」

先生 「はい、じゃぁそのGluconeogenesisで必要なCo-factorは?」
AKI  「・・・・・・!?ぬー、勘でビタミンDとか言ってみるけどこれはカルシウムの吸収や○| ̄|_」
先生 「www  これはビタミンB12。これがないと糖分が不足しちゃう」
AKI  「(まさかの3連式出題だと・・・そろそろキツイぞw)」

先生 「はいはい、じゃぁそのビタミンB12を構成しているミネラルは?」
AKI  「ビタミンBだろ・・・B・・・B・・・・・・Cuじゃなくて・・・こ、コバルト・・・だったか?・・・?」
先生 「そうコバルトで正解。石灰質の土地だとこのコバルトが不足するから豪州では注意が必要」
AKI  「(おうふ、脳の片隅にコバルトいたわ、搾り出したわ・・・)」


今年3年生は自分だけだから隣りの2年生+去年留年した連れからのパスが怖い怖い(; ´д`)
なんとか耐え切った・・・○| ̄|_モウツカレタヨ、パトラッシュ



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獣医さんの車はトラックでし。
このトラックは内部が改造されていて、ちょっとした研究所になってるお。
これまた企業秘密だから外見しか写真はうpできないけど、中に入れさせてもらったんだ。
シンクやら顕微鏡やら、即席の研究所そのまんま。鍵つき鉄製ロッカーには色んな薬がいっぱい。
このトラックで取り出した受精卵を確認、選別してるお。