朝鮮の豪商が残しだ社訓゙とは | 嶋村初吉のブログ

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釜山に留学、その見聞録を伝えます

  日本に数百年も続く老舗があるが、なぜ、そこまで続くのか。その秘訣は? 一つの手がかりは社訓をもっていることにないか。商いをする上での倫理観である。旧財閥・三井の家訓には、こうある。

「勤倹は家を富ませ、奢りは身を滅ぼす」「理にかなわないことは絶対にしてはいけない。そんなことをしたら、店は潰れてしまう。商いはあくまで誠実に」

代々、三井家の当主が、これに教訓を書き加えていく。そこには、社会への影響を踏まえ、自らに高い倫理観を強いた姿を読み取ることができる。

韓国に『商道(サンド)』という、かつてヒットした歴史ドラマがある。主人公は実在の人物、林尚沃(イムサンオク、1779~1855)。第22代王・正祖、23代の純祖の時代、商いの道で紆余曲折を経ながら成功して豪商となり、役人にも抜擢されるという物語である。そのなかに、し烈な商いの競争が描かれる。その中で、林尚沃は、「とかく商人は金ではなく人をもって財となせ」「人が残ること、それが利益なのだ」という教訓を得る。

日本の社訓にもあたる商いの教訓を、林尚沃は残した。人が商いの鍵を握ると。

以前、在日の知り合いから、「誰か巧く当てた商売があったとする。儲かっている。その話が同胞たちにあっと言う間に広がり、同じ商売が横行する。このことで、新しい商売の芽がつまれ、一気に、その商売は廃れてしまう」

金儲けができる。だから真似る。しかし、永く続くかない。江戸時代よく見られた「長者に二代なし」という原理があてはまる。拝金主義では、行き詰ってしまう。

 近江商人は、「売り手よし、買い手よし、世間によし」の「三方よし」の倫理観をもって、商いに励み、陰徳を積んだ。陰徳とは、人に知られないように密かにする善行、隠れたよい行いである。「陰徳あれば必ず陽報あり」で、陰徳は必ず表に現れる。

その意味では、林尚沃の残した言葉は重いと思う。人に恵まれなければ、商売はうまくいかない、長続きしない。企業が人材確保に慎重を期すのは、ここにもわけがある。

 

釜山発のコリアンデザート、ソルビン(雪氷)カフェを昨日食べ、それを生み出した発案者の行方を少し聞いた。その人は、余り経営に興味がなかったのであろう。権利を売った。それを買った企業は、これをどう維持、発展させていくのか。