ベネズエラは崩壊寸前、石油王国を襲う国家の危機! | ぼんじゅーるから始まる一日

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 今世界で最も政治が混乱している国は、南米北部に位置するベネズエラかもしれない。4月から始まった反政府デモは暴徒化し、三ヶ月経った今も収まることはなく、これまでに100人以上が命を落としている。各国の報道機関も、「ベネズエラ・クライシス」として連日その情勢を取り上げており、世界的に注目が集まる話題だ。

 

 そもそもベネズエラという国の存在は知っていても、どんな国かは想像しにくいだろう。ベネズエラの話題がニュースで取り上げられることはなかなかないからね。ただベネズエラという国は、世界が常に目を離せない重要な国なんだ。なぜかといえば、ベネズエラは石油埋蔵量世界一の国であるから。意外かもしれないが、産出量では中東諸国に劣るものの、埋蔵量ではサウジアラビアなどの石油王国を上回っており、これから石油が不足した際、国際的に極めて大きな存在となるかもしれない国の一つである。

 

 そんなに資源があれば国が裕福になっていてもおかしくない。しかし、資源から得られた富は一部の人間に独占され、人口増加に比例して、貧困層の広がりが顕在化した。1990年代に貧困層から支援を受けるチャベス政権が発足したものの、社会主義的な国家運営が原因で、経済活動が硬直化すると、貧富の差はさらに激しくなり、事業の国有化は失敗し、物資不足とハイパーインレーションが発生したことで、国は不安定になってしまったんだ。国家運営が躓くどころか、治安は極度に悪化し、首都のカラカスでは殺人事件発生率が世界上位の常連になってしまった。

 

 2013年に、チャベス大統領の後継者として、現大統領のマドゥロが政権を握ることとなるが、2015年の議会選挙で、野党勢力であった反チャベス派が過半数超の議席を獲得したことにより、マドゥロ大統領と議会の間での対立が激しくなっていく。そして、2017年3月29日、マドゥロ政権と最高裁判所が協働し、議会の立法権を最高裁判所に集中させるという、常識外れの処置を強行したことによって、国民の怒りが爆発した。実際にこの事案が、今回の反政府デモの引き金となっている。つまり民主主義国家であれば、政治の場においてしばしば起こるねじれ現象を無理やり解消させるために、大統領と裁判所が手を組んで議会の立法権を剥奪する法案を勝手に作ってしまったわけだ。

 

 普通に考えればあり得ない政治的判断がごく普通に行われたことによって、世界各国からの批判はもちろんのこと、国民の怒りが大規模なデモへと繋がった。そして、三ヶ月が経った今、ベネズエラ国内は混乱を極めている。特に、明日30日に控えている制憲議会選挙を前に、反政府デモはさらにその激しさを増しており、アメリカは駐在大使の避難や退去を勧告している他、経済制裁を科すと発表した。これに対してマドゥロ大統領は強気な姿勢を貫いており、その力を国民と世界に誇示する狙いがあると見られる。

 

 ブラジルでも、テメル政権に対する支持率が5%と過去最低になるなど、南米諸国での政治的混乱になかなか終わりが見えない現状だ。とにかく犠牲者がこれ以上出ないことを望みたい。