こんにちは

当店2階で開催中(4月1日まで)のビンテージ・ワークウエア展で展示されているワークウエア&ブランドを紹介していきたいと思います。

 

本日紹介するビンテージアイテムはビンテージワークウエア好きならば一度は聞いたことがあるブランド『BOSS OF THE ROAD(ボス オブ ザ ロード)』のウエストオーバーオールを紹介します。

 

BOSS OF THE ROAD(ボス オブ ザ ロード)はノイシュタッター・ブラザーズによるブランドで、ルイス・W&ヘンリー兄弟が1852年に創業。

ボスオブザロード・オーバーオールはカリフォルニア州サンフランシスコで生産されていました。

サンフランシスコ創業で最も有名なのがリーバイス・ストラウス社ですが、男性用衣類の製造会社としてはノイシュタッター・ブラザーズのほうが歴史が長く、当時最も繁栄している会社の1つでした。

 

創業者のヘンリーはニューヨーク・シティで衣服工場を所有しており、サンフランシスコに移転してくるのは1860年代に入ってからです。

最初のうちは船で運ばれてきた品物を販売していましたが、1873年にリーバイス・ストラウス社のリヴェッテッド・ウエストオーバーオールが発売されると「リベット」に対抗する策として「フローラル・トライアンギュラーステッチやワンピースフライ」を施したウエストオーバーオールを販売しました。

この製品は大半が西部で販売されていたらしく、1890年代のサンフランシスコの業界紙に「太平洋岸で最も有名なブランド」として盛んに宣伝されました。

1890年代からボスオブザロード・オーバーオールには特許が期限切れとなった「リベット」が施されたモデルをニューヨークで生産し、東部で販売しました。

しかしながら、1932年にエロッサー・ハイマン社に買収されると、1946年にはLee(リー)社に買収されることになり、現在はエドウィン商事がブランド特許を所有しています。

買収後は、ビンテージ衣料として魅力的なアイテムが無いため、1940年以前の「ノイシュタッター・ブラザーズ社時代」のワークウエアが珍重されています。

 

このウエストオーバーオールは1890年代に生産されていたと推測されるもので、当時ニューヨークで作られていたモデルです。

特徴として、「バックポケットは2つあるがバックシンチストラップはリベット留めされていない」、「各ポケット脇に打たれたリベット(1890年以前はトライアンギュラーステッチ)」、「ベルトループ無し」、「細部まで描かれたブルドックパッチ」が挙げられます。

 

全体のシルエットは股上が、かなり深く、腿から膝、裾にかけて太目で、まさしくワークパンツ然とした作業用ズボンの形です。

デニム生地には、アモスケイグ社製デニムのような多少緑掛かったザラッとした9オンスほどの荒々しい生地が使われています。

ユッタリしたシルエットにも関わらず、濃淡の出た色落ちをしていることや、裾に付いた泥から当時着用していた方は鉱夫かそれに近い職業に就いていたのではないでしょうか。

 

フロントはボタンフライで、トップボタン・スモールボタン合わせて5個で構成されています。

股下にはリベットが打たれておらず、代わりにスレッドリベット(カンヌキ)で補強されています。

 

デヴィッド・ノイシュタッターによる股部分を一枚仕立てにした「ワンピース・フライ」(1877年特許取得)が施されています。

この年代の他社製品にも似たデザインの物が多いですが、この部分を見ればパッチが欠品したスクラップでも「ボス オブ ザ ロード」製のワークパンツであることがわかります。

 

ブランドの特許でもある、ワンピースフライのタグが縫い付けられています。

また、この年代のワークパンツには普通、前立て部分にはロックはかけられていないのですが、このパンツにはロックがかけられています。

 

スモールボタンは6個の星が刻印されたボタン内部に多少空洞のあるドーナツボタンが使用されています。

取り付けはツープロングで、素材は鉄製の合金メッキ処理された物を使用しています。

 

ボタン裏のリベットは中央がドーム型になった鉄製の物が使用されています。

長い年月を経過したことを物語るように錆びが発生しています。

 

ウォッチポケット(後のコインポケット)が装備されています。

取り付けは黒糸を使い、スレッドリベット(カンヌキ)でサイドが補強されています。

 

ウォッチポケット口には、セルビッジが使われています。

また、ウエストバンドぎりぎりに付けられているのも古いパンツに見られる特徴です。

 

左のフロントポケット裏のスレーキ(袋地)の縫い合わせは切りっぱなしです。

 

スレーキには多少ベージュかかった色の生地にザラ感のある、目の粗いものが使用されています。

 

バックスタイルは、ポケットが2個になった1890年以降の物です。

また、ポケットも縦長で大きく小物を入れるというよりは、工具や重機に使う部品などを仕舞うために存在したディテールとなっています。

縫製には綿糸を使った、かなりミシンの運針が細かいシングル縫製で、チェーンステッチはまだ使われていない時代の古いパンツです。

 

通称「シールドポケット」と呼ばれる盾型のバックポケット。

ポケットの生地は本体とは逆の物が使用されているので、縦落ち(横落ち)しているのが特徴です。

この仕様はロサンゼルス最古のブランドであるストロングホールドのウエストオーバーオールにもみられるディテールです。

 

ポケットサイドに打たれた補強リベットはむき出しのタイプで、中央の突起が潰れているのが特徴です。(当時の取り付けには職人がハンマーで取り付けていたからだと言われています)

また、ブランド刻印されていない銅製の既製品を使用しています。(この時代のリベットは銅の成分(含有率)が少なく、厚みのない小さめの物が使われています)

経年による緑青(ろくしょう)が発生しています。

 

リベット裏は、シッカリとブランド刻印が打たれています。

左からB OF R と刻印されていますので「BOSS OF THE ROAD」の略だと思います。

普通は資料などでしか見られない部分なので、実物を間近で拝見できたのは感動しました。

 

古いパンツの特徴として、このピッチの細かい縫製があります。

このおかげで、労働で酷使されていた事も含め、120年以上経過しても解れが生じていないのだと思います。

また、一本針での縫製なので高度な技術が必要です。

縫製に歪みや切り返しに失敗してしまった箇所が見てとれる、まだハンドメイドの温もりを感じることができる古い時代の作業ズボンに見られる特徴です。

 

バックルバックは針刺しの鉄製バックルが使用されます。

取り付けには、かなりピッチの細かい運針での縫製で、バックルを取り付けている半月型のステッチも同ブランドの特徴でもあります。

また、生地裏には生成りの補強布が当てられている拘った作りをしています。

 

ウエストバンドに打たれたサスペンダーボタンにはブランド刻印された鉄製のドーナツボタンを使用しています。

この重みのある質感が、レプリカではなかなか再現できない所です。

 

ウエストバンド中央はセパレートになっているので、着用者の体型の変化などにも対応できるように考えられた作りになっています。

当時のアメリカ人が物を大事にしていたことがよく分かります。

 

リネン製の布パッチが使われています。

細部まで描かれたデザインや文字の配置など見所は多々あります。

パッチのデザインも時代が進むにつれ、簡略化されていきます。

ここまで綺麗な1890年代のボス オブ ザ ロードのパッチを目にする機会は、殆んど無いと思います。(僕も実物は初めて拝見しました)

現在では世界に数本しか存在しない、実際に着用可能なコンディションの大変希少なスーパービンテージ(アンティーク)です。

 

アウト・インシーム共に高度な技術が必要とされる一本針巻き縫い縫製が施されています。

左側に折込処理されたセルビッジが見えるのが、1890年代以降のボス オブ ザ ロード・オーバーオールに見られる特徴で、更に古いもの(トライアンギュラーステッチやフローラル・ステッチの1880年代)はこれが逆になっています。

裾処理はシングルステッチによる縫製です。

 

本日紹介した『BOSS OF THE ROAD(ボス・オブ・ザ・ロード)』のウエストオーバーオールは、展示会場で御覧頂けます。

 

次回は『CAN'T BUST'EM (キャント バス テム)』のアイテムをご紹介します。

 

ありがとうございました。

今後も宜しくお願いします。

 

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