韓国、「3不政策」中国へにじり寄る外交が招く「日米の懸念」 | 勝又壽良の経済時評

韓国、「3不政策」中国へにじり寄る外交が招く「日米の懸念」

 

 

「均衡外交」が不幸招く

病的なまでの中国依存心

 

 

韓国の文在寅政権は、安保政策で米中間を漂流している。中国へ尻尾を振った結果、米国からその本心を疑われている。韓国は、米韓同盟によって北朝鮮のミサイルや核の開発危機を防ごうとしている。現実には、その米韓同盟の根幹を揺るがす事態を引き起こしている。韓国が、例のTHAAD(超高高度ミサイル網)設置による中国からの報復を止める条件に、安保政策の根幹に関わる「3不」を提示してしたのだ。

 

「3不」とは韓国が、①THAAD追加配備、②米国のミサイル防衛(MD)参加、③韓米日軍事同盟を推進しないという「3つのノー」を中国に対して表明したもの。韓国固有の自衛権を否定するような内容であり、米韓同盟にも大きな障害をもたらす懸念が高まっている。韓国大統領府は、「86世代」が取り仕切っている。「86世代」は、「反米・親中朝派」である。彼らはもともと米韓同盟を無力化して、中韓関係を密にしようというグループなのだ。

 

韓国政府が、この時点でこのような行動に出た背景は、中国の影響力を使い朝鮮半島の有事を防ごうという狙いである。米中が、潜在的な敵対関係にある事実を無視したものだ。韓国の中国接近は、一種の利敵行為である。中国の習近平政権が、明らかに独裁色を強めている現在、日米韓三カ国が協力してその軍事的な膨張を防ぐ体制をとりつつある。その折り、韓国は「敵側」に寝返ったにも等しい行為である。米側が厳しい目で、韓国を見ていることを知るべきだ。

 

「均衡外交」が不幸招く

『中央日報』(11月17日付)は、「強大国の角逐をあおる韓国の『均衡外交』」と題するコラムを掲載した。筆者は、マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長である。

 

韓国の革新派には、間違った外交理念がある。「均衡外交」といの「バランサー論」である。日本でも戦後聞かれた「等距離外交」である。当時は、米ソ二大国の中に立つ日本が、米国一辺倒でなく、ソ連とも関係を強化する外交が理想的とする議論だ。これは、社会党を中心とる革新派が主導したもの。現在の韓国でも同様な視点で、米中に偏せずに等距離外交を目指したいというのだ。だが、韓国は李朝時代もこの「均衡外交」の手法を使って自滅した。李朝末期、日中露の三カ国が外交主導権争いを演じていた。それが、李朝の政治を混迷に導き、結果的に日本の植民地になったという経緯がある。旗幟を鮮明にしないで、ヌエ的に振る舞い、漁夫の利を得ようというずる賢い外交政策は、決して韓国に利益をもたらさないのだ。この外交DNAは、韓国に引き継がれている。

 

こういう過去の歴史から明らかにもかかわらず、現在の韓国は「均衡外交」で米中の中で上手く泳ぎたいという抜きがたいヌエ的な行動を取り始めている。このコラムは、アジア外交の専門家であるグリーン氏が、韓国外交を厳しく見つめている。

 

(1)「文在寅大統領はトランプ大統領当選1周年を祝った。文大統領はトランプに『お世辞』が通じるということを他の首脳から学んだようだ。だが今後の韓国の戦略的進路に対する疑問が提起された。発端は、高高度ミサイル防衛(THAAD)体系配備が生んだ韓中葛藤に対して、韓国外交部がうまく決着をつけたかどうかだった。最初は韓国外交部が凱歌を揚げたようだった。だが、中国が韓国に加えた経済圧力を無条件で減らすという韓国政府の主張とは違い、中国外交部は韓国側が3種類の条件に合意したと発表した。一つ目、追加THAAD配置はない。二つ目、韓日米軍事同盟は結成しない。三つ目、韓国は米国のミサイル防衛(MD)体系に参加しない」

 

韓国は、米韓同盟によって米軍が駐留し、防衛して貰っている立場である。それにも関わらず、安保政策の根幹である3つの防衛対応について、事前に中国へ通報するというとんでもないことを交渉した。中国は、この降って湧いた「好機」を捉えて、素早くTHAAD問題の棚上げに応じたのだ。米国の身になれば、これほどやりきれない話はない。朝鮮戦争では、多くの米兵が命を捨てて、韓国の自由と民主主義の防衛に犠牲を払った。その相手は、中国の義勇兵と北朝鮮軍である。かつて敵対した相手の中国へ、「3不」政策を知らせることなど、考えられない突飛な行動である。

 

(2)「韓国は中国の主張をすぐに否定せず躊躇(ちゅうちょ)していた。このためワシントンの疑念と懸念を生んだ。韓国外交部は、『発表文にないいかなる約束も中国側にしなかった』と事態の火消しに出た。最初はワシントンも安心したが、韓日米国防長官会談で韓国側が3国共同連合訓練を拒否したため、ソウルに対するワシントンの疑いはさらに深まった。北京の主張通り、韓国が中国に3種類を口頭で約束したのではないかとの話が出た」

 

中国は、「3不」について韓国が約束したと発表した。これは事実に反するが、韓国政府はこの中国の発表を即座に否定せず、米側の疑念を呼んだ。その後、韓国が中国の発表を否定して、米側は安心した。それもつかの間、韓国が新たな動きに出たのだ。日米韓三カ国の共同連合訓練を拒否した。こうして、韓国が本当に中国へ「3不」を口頭でも約束したと見るに至っている。これでは、日米韓三カ国による北朝鮮対応が机上の空論になる。もはや、韓国を信頼できないという事態に直面することになった。

 

(3)「このような解釈は現在、ワシントンと東京の安保専門家たちの間に広まっている。おそらく北京の専門家も同じだろう。『韓国と中国が実際にどのような合意をしたか』という問題とは別に、今回形成されたナレーティブは4種類の理由で韓国にとって危険だ」

 

「3不」問題は、韓国にとって危険な要因を秘めている。それは、「ナレーティブ」(風評的)なものとして韓国に不利に働く懸念があることだ。この点は、韓国メディアが批判している点でもある。後で取り上げたい。

 

①  「第一に、中国は『韓国を経済的に圧迫すれば効果がある』ということを確認した。ともすると、北京タカ派が将来も類似の圧力を加えることができる道をソウルは開いてしまった」

 

韓国に圧力を加えれば、簡単に屈服するという実例が今回、生まれたことである。この点は、韓国メディアが批判している点でもある。「韓中間の『THAAD確執』が1年4カ月で終わった。日中の『東シナ海確執』が終わるのには3年かかった。言い換えれば、韓国は1年4カ月耐え、日本は3年耐えた」(後掲の『朝鮮日報』11月18日付コラム)。不条理なことには、断固として戦うという気迫が韓国に存在しないのだ。目先の利益回復を喜び、本質的な問題追及を忘れている。まさに、「感情8割。理性2割」の国民である。

 

②  「第二に、ソウルは韓日米国防協力強化に反対することによって、北朝鮮への圧力レベルを高める米国の戦略手段を無力化した。同時に中国が平壌(ピョンヤン)に圧力を加える必要性を弱めた」

 

日米韓三カ国が、協力して北朝鮮への圧力をかけるという合意は、韓国によって破られた。日韓は軍事協力しないという「3不」に基づいて、韓国が中国へ義理立てした行動である。韓国は、米国との約束よりも中国との「3不」で忠義だてする。要するに、理性的な判断ができないのだ。

 

③  「第三に、韓米首脳が成し遂げた北朝鮮に対する共助強化の雰囲気に冷水を浴びせてソウルに対する新たな疑いを芽生えさせた」

 

米国トランプ大統領が国賓として韓国を訪問して決めた北朝鮮への共助強化は、あっさりと韓国によって踏みにじられた。この調子だから、日韓慰安婦合意などは簡単に反故にするはずである。これほど信頼できない国家も珍しい。

 

④  「第四に、日本の安倍晋三首相はトランプに文大統領と絆を強めることを求めてきたが、今後日本は日米協議で韓国を擁護するべきか躊躇することになるだろう」

 

安倍首相は最早、トランプ大統領と文大統領の間に立って、文氏の弁解役をする必要もなくなった。日米韓三カ国の結束を自らの発言で断ち切り、「日本とは同盟でない」と明言した人物である。安倍首相は、そんな文氏を庇う必要はないのだ。

 

(5)「文大統領は『共に民主党』内の強硬左派と中道派、政府と野党、中国と日本、米国と中国の間の葛藤を解消する均衡点を探すために必死に努力するだろう。だが、韓国が韓半島(朝鮮半島)を取り囲む強大国を相手に『均衡外交』を追求したことで列強の角逐はむしろ激しくなった。その結果、強大国は1592年、1894年、1904年、1950年に韓国を侵略した。英国や日本のような島国には誤った判断もある程度許されるが、韓国の地政学的位置ははるかに脆弱だ。韓国の戦略それ自体よりも『強大国が韓国の戦略をどのように認識するか』がもっと重要だというのが歴史の教訓だ。ここ2週間で起きた出来事に対して、周辺強大国が誤った結論を下してはいないか、韓国は警戒しなければならない」

韓国は、自らの立場を誤解している。「大国意識」に燃えているが、現実は「中国詣で」という属国意識に成り下がっている。この矛盾に気づかず行動している。李朝が日本の治下に組み込まれた背景と、現在の外交センスは極めて似通っているのだ。「大国意識」でありながら、他国へ依存するというチグハグな行動である。韓国の置かれた地政学的な欠陥を認識するならば、旗幟を鮮明にしてウロウロしないことだ。現在、韓国は米韓同盟を結んでいる。世界最強軍隊を擁する米国の防衛によって、米韓が協力すれば最高の安全保障体制と言うべきだろう。

 

仮に日本が、日米同盟に依拠した安保体制を組みながら、中国軍と「3不」政策を暗黙裏に結んでいたら、米国はどういう反応をするか。考えて見るまでもなく、米国は日本に対して冷淡な態度を取るはずだ。韓国にはこういうデリカシーがない民族であろう。「大国意識」を持ちながら、中国の属国的な振る舞いをして恥じないのだ。

病的なまでの中国依存心

『朝鮮日報』(11月18日付)は、コラム「中国が帰ってきたのがそんなにうれしいのか」を掲載した。筆者は、同紙編集局社会部長の鮮干鉦(ソンウ・ジョン)氏である。

 

鮮干鉦氏は毎度、紹介するようにバランスのとれた内容であり、私が最も親近感を持つ韓国人ジャーナリストである。面識はない。執筆されるコラムが、いつも厳しく韓国を憂いている点で、日本人の私も同感する点が多い。

 

(6)「韓中間の「THAAD確執」が1年4カ月で終わった。日本は3年耐えた。韓国は妥協するために「THAAD追加配備を検討せず、米国ミサイル防衛(MD)システム不参加の立場に変わりはなく、韓米日安保協力が軍事同盟に変わらないだろう」という政策を明らかにした。同盟国ではない相手のため、安保主権に足かせをはめる国はない。日本も主権を担保に、中国と妥協することはなかった。だから3年もかかった」

 

中国による経済制裁の日韓比較である。韓国は1年4ヶ月。日本は3年間の経済報復だ。日本国内では、中国のご機嫌伺いをしようとの意見も出なかった。中国は、日本企業が中国へ進出しなくなって、逆に困る立場になった。この間、ASEANへの企業進出に熱が入ったからである。韓国は、そういう点で浮き足立ってしまうから、中国から足下を見られ難題をふっかけられるのだ。外交は毅然としなければ「負け」になる。日本のように、「武士は食わねど高楊枝」に徹することだ。中国は日本へ制裁して、逆に大損を被った経験から、二度とああいう愚行を避けるだろう。

 

(7)「中国のTHAAD報復により、中国に進出した企業が最も大きな損害を被った。ただ、中国の報復が経済全体に及ぼす悪影響は予想よりも弱かった。韓国経済は、中国に対する耐性を確認している最中だった。持ちこたえることができたら、構造改革を急いで韓国経済の中国依存度を下げようという主張もあった。もちろん、一部企業の被害は甘受しなければならない。日本は耐えながらもこの道を進んだ。正道だ」

 

韓国が、中国へ白旗を掲げた裏には、「86世代」の暗躍があるはずだ。「反米・親中派」が「3不」を手土産に中国の軍門に下った。不思議なのは、あれだけ中国の正体を見たという議論が出ていた中で、なぜ不条理な「3不」を条件に差し出したか、である。国を守るという気概がないのだろう。そもそも、「86世代」の「反米」という立場が間違っている。自由と民主主義を謳歌しながら、それを弾圧する「中朝」へ親近感を持つのは、精神分裂症的な振る舞いであろう。

 

(8)「政府が留保した安保主権は軽くない。首都圏を含め、韓国の3分の2がTHAADの保護を受けることができない。高高度から落下する北朝鮮のミサイルに無防備だという意味だ。文在寅政権は米軍基地を守るTHAADの必要性を認めて導入を承認した。ところが、自国の国民のためのTHAADは留保した。大企業のためにそうしたとは思わない。(韓国は中国へ)与えるものはすべて与えていながら『歴史的責任を取らなければならない』という脅迫に反論もできない。歴史的責任だなんて。韓国が中国に言うことではないか。いつ、韓国が中国に責任を取るべきようなことをしたというのか。日本がこのようなことを言ったとしたら、(韓)国が大きく揺れ動いていただろう」

 

韓国政府は、国家固有の安保主権を中国に差し出した。いかなる理由をつけて弁解しようとも、この事実は覆らない。THAADは米軍基地を防衛するだけである。だが、韓国政府は追加のTHAAD配備はしないと中国へ約束している。韓国国民は北朝鮮のミサイルから身を守る手段がないのだ。こんな政府があるだろうか。中国のご機嫌取りで、自国民を保護しない。李朝と同じ振る舞いであろう。

 

このTHAADの追加配備をしないとの中国への約束は、米軍の北朝鮮攻撃を不可能にさせる魂胆だ。北の反撃があれば韓国の犠牲が大きくなる。それを見越しており、先制攻撃を不可能にさせ、結果的に北の核保有を認めさせる戦術を練っているとも見える。文政権は大変な裏切り策を取ろうとしているのかも知れない。

(9)「核武装を完成させた北朝鮮が、韓国の首都圏を脅かす日は遠くない。THAAD追加配備問題は避けられない。この時、政府は312年前の朝鮮時代の宮廷のように騒がしくなるだろう『ひとまず中国に知らせて説得しよう』『反対するのがオチだから、こっそり持ち込もう』『公論(世論)調査を通じて広く聞いてから決めよう』『追加配備をあきらめ、中国に仲裁を要請しよう』。今の政府なら、こうした言葉が行き交うだろう。もちろんこれは想像だ。朝鮮は生きるために安保の主権を放棄した。今は北朝鮮の核が危機だ。ところが、韓国政府は北朝鮮の核を防ぐのに必要な安保主権を留保した」

 

李朝滅亡の原因は、朝鮮内部にあった。気位が高く「大国意識」に燃えて、日本の新政府が李朝に通知した文章に、「天皇」の文字があることを理由に受け取り拒否。これが、後の日韓併合への導火線になっていくのだ。「大国意識」と中国への属国意識が微妙に織りなす民族意識。それが、今も変らない韓国の素顔であろう。

 

大国意識であるが、自らの意志では何ごとも決まらない。李朝末期の騒動にあったように、現代では「ひとまず中国に知らせて説得しよう」「反対するのがオチだから、こっそり持ち込もう」「公論(世論)調査を通じて広く聞いてから決めよう」という優柔不断なことをするだろう。筆者は、こう言って嘆いている。本当に、御しがたい民族であると同情するのだ。

 

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(2017年11月26日)

 

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