不起訴処分と再起~起訴猶予には一時不再理マッチせず~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 不起訴になるとどうなりますか。
  前科とかその後のことが気になります。


細かいルールがあります。

誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 「不起訴」は「無罪」とは違います。
  ただ,実質的には「無罪以上」と言えましょう。


【不起訴処分】
警察から捜査を受けてましたが,その後裁判にならなくて済むということがあるのですか。

→検察は起訴するかしないかの裁量があります。起訴しないこともあります。

裁判にかける(公判請求や略式起訴)か,かけないか,は検察官が判断します(起訴独占主義;刑事訴訟法247条)。
その検察官の判断には広い裁量が認められています(起訴便宜主義;刑事訴訟法248条)。
統計上,検察官は立件された事案の半数程度を不起訴処分としています。

【刑事訴訟法】
第二百四十七条  公訴は、検察官がこれを行う。
第二百四十八条  犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

【不起訴処分の種類】
どのような場合に起訴されなくて済むのでしょうか。

→証拠がない,証拠があるけど不十分,証拠は十分だけど被疑者の状況などから政策的に起訴は止めておく,という3種類に分けられます。

<不起訴処分の種類>
1 起訴猶予
証拠は十分ではあっても,被疑者の状況から,敢えて手続きを終了させて,「自発的更正」に期待する,というものです。
条文(刑事訴訟法248条)では,次のような判断要素が記載されています。
<起訴猶予の判断要素>
・被疑者の性格,年齢,境遇
・犯罪の軽重
・情状
・犯罪後の情況

2 嫌疑不十分
証拠が乏しい場合は,仮に公訴提起をしたとしても,立証不十分で無罪となる可能性があります。
仮に無罪ということになれば,重大な人権侵害であり,政府が刑事補償の責任を負うという大問題になります(憲法40条,刑事補償法)。
そこで,検察官は公訴提起の際は証拠が揃っているかどうかを慎重に検討するのです。
なお,この場合,検察内部での裁定(決裁)においては,「嫌疑不十分」という主文になります(事件事務規程72条2項18号)。

【日本国憲法】
第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
【事件事務処理規定72条2項18号】
(18)嫌疑不十分 被疑事実につき,犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なとき。

3 嫌疑なし
証拠がないために不起訴処分とすることです。
典型例は,「真犯人が発見された」場合,つまり,「誤認捜査・逮捕」だった場合です。

【事件事務処理規定72条2項17号】
(17)嫌疑なし 被疑事実につき,被疑者がその行為者でないことが明白なとき又は犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なとき。

【起訴猶予獲得のポイント】
どのようにしたら起訴猶予を勝ち取れますか。

→示談・被害弁償の努力がポイントです。弁護人のがんばりどころです。

起訴猶予となれば,裁判を受けること自体から解放されます。
実質的には「無罪判決以上」とも言えましょう。
重要なポイントをまとめます。
<起訴猶予を獲得するポイント>
・被害が大きくない
・被害弁償をしている
・被害者の処罰感情の程度が低い
・前科・前歴がない(少ないか,あっても長期間が経過している)
・強く反省している態度が表れている

【不起訴処分と前科】
捜査を受けました。弁護士からアドヴァイスをもらって,正直に自白して反省していました。
不起訴処分にしてもらえました。
前科がついてしまうのでしょうか。

→前科にはなりません。

「起訴猶予」の場合は,証拠は万全だけど政策的に起訴しない,という趣旨です。
犯行自体は明白になっています。
しかし,「前科」とは,有罪判決を受けた場合のことです。
起訴猶予は判決ではありません。裁判所ではなく検察官の判断です。
「前科」に該当することはありません。
だからこそ,不起訴処分の獲得は非常に貴重なのです。

【不起訴処分告知書】
不起訴処分というのは判決書みたいな書類でもらえないのですか。

→不起訴処分告知書,という書面で検察官から発行してもらえます。

不起訴処分,というのは検察官の職務として大きなものです。
当然,被疑者を含む当事者にとっても重大な意義のあるものです。
そこで,書面で結果を受け取ることができるようになっています。

【刑事訴訟法】
第二百五十九条  検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
第二百六十条  検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
第二百六十一条  検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。
【事件事務規程】
(処分通知)
第58条 検察官が刑訴第260条の規定により処分の通知をする場合には,処分通知書(様式第96号)による。

【不起訴と一時不再理(再起)】
不起訴処分,が決定された後はその件でやっぱり裁判にかける,ということにはなりませんか。

→不起訴処分後に公訴されることもあります。

有罪や無罪の判決が確定したら,その後に裁判をやり直すことは禁じられています。
二重の危険を排除するという趣旨の制度で,「一時不再理」と呼ばれています(憲法39条,刑事訴訟法337条1号)。
しかし,「不起訴処分」は検察官の処分です。裁判ではありません。
「確定」という概念もありません。
そこで,再び捜査,起訴するということは法的に禁じられていません。
特殊な事情がある場合は,後日捜査が再開され,公訴されることもあります。
これを「再起」と呼んでいます。
典型例(極端な例)は,被害者への攻撃的なこと(報復)をしている,などです。

【日本国憲法】
第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
【刑事訴訟法(抜粋)】
第三百三十七条  左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。
一  確定判決を経たとき。
【事件事務規程(抜粋)】
第2条 事件の受理手続は,次の場合に行う。
(6)不起訴処分又は中止処分に付した事件を再起するとき。

実は「再起」については,関連ルールが整備されています。
小沢さんの例が分かりやすいですね。
検察審査会とかです。検察官の起訴・不起訴の判断で終わらないこともあるのですね。
これはまた別の話し。

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