*【東大教室】ブログ上公開演習⓬-5(解説)の続きです。
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演習⓬ 近現代(外交)
明治期 日本の大陸政策
解説⑤
韓国併合
こうして日本は、日露戦争後に生じた、自国をとりまく国際環境の安定を背景に、韓国の植民地化を進めていった。
以下の【韓国併合過程】をみて、基本的な経過をよく確認しておいてほしい。
ポイントは、国際社会の動向と日本の行動とを結びつけて理解しておくことである。
【韓国併合過程】
朝鮮支配の開始
韓国併合以降、朝鮮総督には陸・海軍大将が任命され、軍事指揮権ばかりでなく、政務に関する大きな権限を天皇から直接与えられた。
警察の要職は日本の憲兵が兼任し、朝鮮人の生活をすみずみまで監視して反抗を許さなかった。
なお、憲兵とは軍隊内の犯罪調査・思想取締りなどをおもな任務とする軍事警察のことをいう(1881年設置)。
1923年の甘粕事件にみられるように、次第に活動範囲を軍隊外にまで拡大していったため、その専横ぶりが憲兵政治という言葉を生むことになり、また植民地支配下の朝鮮では、当初(1910~1919)、軍事警察である憲兵が普通警察を兼ねる憲兵警察制度が採用された。
一方、新設された朝鮮総督府は、土地所有権を明確にして統治のための財源を確保する事業として土地調査事業を推進した。
この過程で国策会社である東洋拓殖株式会社(東拓、1908年設立)が朝鮮最大の巨大地主へと成長する一方で、多くの朝鮮人が土地を奪われることになった。
また、おもな産業も日本人の手にわたっていった。
抵抗と独立
以後、植民地支配下の朝鮮については、以下の点を押さえておきたい。
三・一独立運動
第一次世界大戦後、朝鮮では、民族自決の国際世論が盛りあがるなかで、学生や宗教関係者などを中心に独立への動きが高まった。
1919年3月1日、独立運動家たちが、前皇帝高宗の葬儀のためにソウルのパゴダ公園(現在のタプッコル公園)に集まった群衆の前で独立宣言書を読みあげると、これをきっかけに独立運動が朝鮮半島全土に拡大していった(三・一独立運動)。
朝鮮総督府は、軍隊まで動員して独立運動を弾圧した。
三・一独立運動後の1919年8月、第3代朝鮮総督になった斎藤実(まこと)は「文化政治」を表明した。
具体的には、朝鮮総督資格者を現役軍人から文官にまで拡大する、憲兵警察を廃止するなどの措置がとられ、これにより総督の軍事指揮権はなくなった。
しかしそののちも、陸海軍人出身者以外の総督が任命された例はなく、植民地支配の現実を転換させるような措置にはならなかった。
新興財閥日窒の朝鮮進出
満州事変前後から、日産・日窒・森・日曹・理研などの新興財閥が重化学工業を中心に急成長をとげた。
こうしたなかで、野口遵(したがう)の日本窒素肥料会社(日窒)は、朝鮮で積極的に水力の開発と化学工場の建設をおこなった。
硫安(りゅうあん)(硫酸アンモニウム=重要な窒素肥料)の原料となるアンモニアは水素と窒素を高温高圧下で化合させることにより合成されるが、水素を水の電気分解に求めるため、安価な電力を大量に確保することが必要とされた。
日窒は、朝鮮で電力を調達するために鴨緑江(おうりょくこう)支流の電源開発をおこない、朝鮮の興南に肥料工場を建設した。
興南工場は硫安のみならず、アンモニアを中心にさまざまな化学製品を生産するコンビナートへと発展した。
これらへの電力供給のために、鴨緑江に水豊(すいほう)ダムを建設(1944年完成)。
水豊発電所は70万キロワットの能力をもつ世界屈指の発電所になった。
日中戦争・太平洋戦争期
戦時には、朝鮮においても日本語教育の徹底、姓名を日本風に改める創氏改名の強制など、一連の「皇民化」政策が推進された。
また、兵士の募集も進められ、1943年には徴兵制が施行された。
分断国家の成立
太平洋戦争の終結にともなって、日本の朝鮮支配は瓦解した。
すでにカイロ宣言(1943.11)で独立が定められていた朝鮮半島では、第二次世界大戦後、北緯38度線を境にアメリカとソ連による分割占領がおこなわれ、1948年、南部に大韓民国、北部に朝鮮民主主義人民共和国が成立した。
冷戦が激化するなかで朝鮮戦争が始まるのは、そのおよそ2年後のことである(1950.6~1953.7)。
解 答
B下関条約で「独立自主ノ国」とされ、清の宗主権が否定された朝鮮では三国干渉後に親露派政権が成立し、ポーツマス条約で日本が「卓絶ナル利益ヲ有スル」とされた韓国は、列国の承認を背景に成立した第2次日韓協約で外交権を奪われ、日本の保護国とされた。
(120字)
東大日本史・直前テスト演習
(映像授業)
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各回のテーマは、
以下の通り。
全ての問題(計19問)に、
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第1回
第1問 10世紀における地方支配のあり方
第2問 藤原京
第3問 「東夷の小帝国」と東北経営
第2回
第1問 日明貿易
第2問 院政期~鎌倉時代の仏教
第3問 応仁の乱と文化
第3回
第1問 識字・計算能力の重要性
第2問 元禄貨幣改鋳
第3問 大船禁止令
第4回
第1問 明治六年の政変
第2問 資本主義の確立と足尾鉱毒事件
第3問 1930年代の国家主義勢力
第5回
第1問 製糸業・紡績業における技術革新
第2問 軍部大臣現役武官制
第3問 選挙違反者数の推移
修了テスト
(東大型予想問題・全4問構成・60点満点)