今回は野草の話ではない。

さてクロベンケイガニを食べたことのある人は少ない。ネットをザッピングしても「毒はないだろう」「ウェステルマン肺吸虫はいない」くらいの安心材料はあるが、実際に食べたという報告はなかなか出てこない。おそらく汚い水辺に住んでいることと、いかにも不味そうなスネ毛が食欲を減退させるのではないか。あるいは食べた人が報告する前に死んでいるか。今回はそんなクロベンケイを食べてみたので、簡単なレポートをお届けする。

日曜日に捕まえてきたクロベンケイガニ、10匹くらいいるのを2箱に分けて泥抜きしていたのだが、案の定共食いを始めてしまった。幸い今日は一匹脚をもがれた段階で絶命する前に発見することができた。クロベンケイは死ぬとひどい悪臭がするらしいのでそこは有難い(そこまでグロテスクではないが、写真は伏せておく)。

みすみす見殺しにするのも忍びないので、揚げて食べてしまうことにした。甲羅の横幅は3cmほどでサワガニより気持ち大きい。本当は甲羅をブラシでゴシゴシ洗いたかったが、もう腕がもげているので慎重になる。クロベンケイに寄生する大平吸虫はヒトに害を与えないようだが、なるべくカニの体液には触れたくない。まあ揚げれば消毒になるか、と素揚げで数分かけてじっくり火を通す。一度破裂した以外に特にハプニングもなく、やや淡い赤色に揚がった。香ばしい良い香りがするが、かなり淡い香りで、とりたてて食欲をそそるようなものではない。



取れている脚はカニ達にもがれたもので、揚げている最中には一切もげなかった。脚はパリパリと特に不快な味もせず食べられる。スネ毛はきちんと残っていてややキモいが、食べる支障にはならない。普段からカニの殻は可能な限り食べるタイプなのでこれくらいは余裕で食べる。


甲羅を開けるとこんな感じ。腹部側には予想以上に肉がついていて、別にジューシーではないし味も薄いが問題なく楽しめる。ミソの方はやや妙な味がするが、食えない味ではない(あくまでこの個体に関しては)。甲羅は厚みがあるので、5分くらいは揚げたはずだがまだ弾力があった。それももぐもぐして完食。

食べてしばらく経つが嘔吐などの反応も特に見られない。中長期的な影響は知らん。そもそも「死ぬとひどい悪臭がする」というのは、クロベンケイが雑食性で色んなゴミやら腐肉やらを食い貯めて、あるいは様々な物質を生物濃縮しているからではないか。荒川下流域でここまで育ったカニの体内にどんな物質が蓄積されているか考えるだに恐ろしい(なぜ食べたのか?)。ミソを除いても筋肉や殻など栄養として利用できる部分は多いように感じたので、不安であれば揚げたうえでミソを除いて食べれば良いと思う。

あるいは茹でて食べるとか、出汁をとるとかいう利用法も考えられるが、一匹食べてみてそこまでの旨みは感じられなかったから、汁には適していないかもしれない。まあエグ味や苦味は強くなかった(あくまでこの個体は!)ので、試してみても良いかもしれない。