Bob Jamesの「Three」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

ボブ・ジェイムス(Bob James)が、1976年にCTIレーベルからリリースした「Three」です。

$"楽音楽"の日々-Bob James Three

彼のディスコグラフィの中ではかなり地味な作品だったのですが、80年代後半からサンプリングのネタとして使われることが増えて、再評価されたようです。

私の印象では、難解な曲が全くなくて、とてもポップな作品のような気がします。


さて、このアルバムは「One Mint Julep」で始まります。


Bob James 「One Mint Julep」


Andy NewmarkのドラムスにGary Kingのベースで、タイトなリズムがキープされます。
そして、9分を越えるヴァージョンの全編で活躍しているのが、Jeff Mironovのリズム・ギターです。ソロは全くありませんが、この曲のグルーヴを決定付けているのは、間違いなく彼のギターです。全ギタリスト必聴のリズム・ギターのお手本ですねー。

派手なホーン・セクションがちょっとうるさい印象はありますが、よく聴いてみると繊細で凝ったアレンジです。

私は、このBobのヴァージョンで初めてこの曲を知ったのですが、遡って聴いてみるとR&Bのスタンダードだったんですね。とてもたくさんのカヴァーが存在します。
昨年、どこかのブログで知ったギタリスト、Tommy Emmanuelのソロ・ギター・ヴァージョンがとても良いです。


Tommy Emmanuel 「One Mint Julep」


実に楽しそうなTommyの笑顔と、驚異的なプレイが魅力的です。

実は、このBob Jamesヴァージョンには、思い出があります。
私が大学に入った頃、大学のキャンパスでジャズ研がBobのヴァージョンをもとにしたアレンジで演奏していたのです。
それほどウマい演奏ではありませんでしたが、Bobのファンク・ヴァージョンをビッグ・バンド・スタイルで演奏していることに衝撃を受けて、思わず入部したのでした。
残念ながら、すぐに退部したのですが。

まぁ、それほどに魅力的なアレンジなのでした。


「Women Of Ireland」は、アイルランドのフォーク・ソングです。
Grover Washington, Jr.のTin Whistleが、もろにアイルランドの雰囲気を盛り上げます。


Bob James 「Women Of Ireland」


この曲は、1975年のスタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)監督の名作「バリー・リンドン(Barry Lyndon)」で、The Chieftainsの演奏が使われて有名になりました。
時期から考えても、プロデューサーのCreed TaylorかBobがこの映画を観て選曲したと思われます。
メロディはオリジナルの良さを壊さずに、ストレートに演奏されます。ストリングスとハープをバックにしたBobの生ピアノのソロが、ひたすら美しいです。

ただ、この曲で重要なのは、レゲエのリズムの導入です。
1976年というこの時期に、レゲエをジャズやポップスに取り入れた例はほとんど見当たりません。
このリズムの導入は、ほぼ間違いなくギターのEric Galeのアイデアでしょう。
Ericは1971年からジャマイカで暮らしていて、レゲエのリズムは体に染み付いていたハズですから。
アイルランドとジャマイカの美しい融合は、また新しい世界を作っているように思えます。
まさに、これこそ「フュージョン」でしょう?!

そうそう、こんなカヴァーもあります。


Mike Oldfield 「Women Of Ireland」


ギタリストにとっては、聞き流すにはもったいないヴァージョンでしょ?


そして、このアルバムで最も人気があるのが「Westchester Lady」です。


Bob James 「Westchester Lady」



いかにもBobらしいメロディとファンキーなリズムは、サンプリングのネタとして引っ張りだこになりました。
Harvey MasonのドラムスにWill Leeのベースが作り出すグルーヴは、最強です!

あまりにサンプリングに使われることを危惧していたBobは、Lee Ritenourと共にひとつの「回答」を出します。
それは、Fourplayが1995年にリリースしたアルバム「Elixir」に収録されます。

$"楽音楽"の日々-Fourplay Elixir

「Westchester Lady」をサンプリングして、それにLeeが新しいメロディを付け加える形で完成したのが、「Play Lady Play」です。


Fourplay 「Play Lady Play」


なかなか痛快なヴァージョンになっています。
Bobはもちろんのこと、オリジナルでドラムスを担当しているHarvey Masonも新たにリズムを加えているワケですから。

生の演奏を身上としているFourplayですから、ライヴでは「Play Lady Play」を演奏することはほとんどなくて、「Westchester Lady」そのものをFourplayヴァージョンとして演っていることが多いですね。


他にも、やはりサンプリング・ネタになっている「Storm King」や、Harry Belafonteのヒットでおなじみの「Jamaica Farewell」をレゲエ・ヴァージョンでカヴァーしています。


全5曲のうち、ファンキーなものが3曲。レゲエが2曲という構成になっています。
このあと「Four」を経て、Bob自身のレーベルTappan Zee設立へと、ポップ・フュージョン路線を突き進んで行きます。
そのスタート・ラインという意味でも、この「Three」は重要な作品だと言えるのではないでしょうか?
CD棚に眠っているという方、引っ張り出して聴き直してみる価値アリですよー。


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