Kiss and Goodbye / Ant1nett | 安眠妨害水族館

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Kiss and Goodbye/Ant1nett

¥750
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1. Water Gate
2. Paranoia
3. Lucifer
4. Unfinished
5. Mother Maria
6. Nineteen
7. Back to Zero
8. Violent Emotion
9. Chelsea Hotel
10. Bruxelles
11. Final
12. Kiss and Goodbye

ずっと2015年末に発売予定とは言われていたものの、直前まで本当に出るとは思っていなかったAnt1nettの2ndフルアルバム。
直近のシングル同様に、配信限定でのリリースとなっています。

同年に発表されたシングル「Mary Magdalene (Sister Christian)」は収録されず、ミニアルバムに収録されていた「Lucifer」、「Unfinished」などがラインナップに入りました。
12曲入りで750円という価格設定は、なかなか良心的ですね。

とはいえ、この音質はいかがなものか。
これまでも、決して良くはなかったが、それ以上に厳しい。
"デモバージョンを誤って配信してしまった?"と思ってしまうほど音割れが激しく、演奏スキルや楽曲の良し悪し以前の問題で、我慢が必要な作品になってしまっているのですよ。
発売日に間に合わせるためにクオリティを犠牲にしたのか、予算上の問題で限界があったのか、いずれにしてもそこを覚悟のうえで聴く必要があるでしょう。

内容としては、Vo.Yabukiさんが所属していた過去のバンドの楽曲の使い回しが多いのは相変わらずとして、Ant1nettとしての音楽をどこに持っていこうか明確にする意図がありそう。
クラシカルで様式美的な楽曲は「Unfinished」くらいに留め、ハードで勢いをつけた楽曲と、民族要素を入れつつ歌謡ベースで仕立て上げた歌モノに寄せてきました。
1stアルバムであった「Miss you so much」に比べてオールタイムベスト感が薄れ、アルバムとしての流れを作ってみたといったところなのかしら。

注目したいのは、「Back to Zero」。
配信販売ということもあり、詳細は不明ながらも、作曲クレジットが"Kouichi、Yabuki"となっており、ex-LaputaのGt.Kouichiさんとの共作と推測される。
カオティックなハードナンバーで、ポリリズム的にメロディを重ねて気持ち悪さを演出。
あまりLaputaっぽさは感じないものの、心なしか、他の楽曲よりもギターがザクザクと主張している気もします。
ありそうでなかったタイプのナンバーで、「Violent Emotion」に続けることで、本作中、もっとも攻撃的なパートを創出していました。

そして、「Final」。
こちらは紛うことなきLaputaのカヴァーで、「Back to Zero」がKouichiさんとの共作と考えられるのは、これがあるからなのである。
ゲームミュージック的なデジタルサウンドで再構築している一方、教会の鐘の音だったり、ストリングス的なシンセだったりを取り込んで、Ant1nettの個性を足していると言えるのかな。
過剰にパンを左右にユラユラ振っているあたりも、Yabukiさんらしい。
オリジナルと比較してしまうと、歌唱力をはじめ、あらゆる面でボロが出てくるものの、そのままのコピーで終わらせなかったこだわりも見え、素直に面白いのでは。

もはや、シーンの中でどういう立ち位置かとか、絶対的評価としてどうかという概念で語ってはいけないバンド。
ヨーロッパに活動拠点を移したことで、現代シーンとは別の時間軸に存在しているガラパゴス的なアーティストなのだから、最近のバンドと比較してあれこれ言うのは無粋なのである。
良くも悪くも、"Yabukiスタイル"に大幅な変化はありませんので、従来から聴いていたファン層であれば。

音質の悪さだけは、どうにかならないかなぁ。
CDパッケージで、今回未収録になった楽曲も含めた完全盤が出たりしないものか。

<過去のAnt1nettに関するレビュー>
Miss you so much
Carmencita
Constantinople
Kamikaze et Luna