当ブログのエントリ「農薬取締法について」 へ、井下田さんからコメントをいただきました。


牛乳を散布しても法律違反にはなりませんよ。間違った情報を鵜呑みにされるかたもいらっしゃいますから気を付けた方がいいと思います。
「使用者の責任と判断で使用することは何ら問題のない資材」として特定防除資材(特定農薬)としての指定が保留されている資材の区分C-①に指定されていますよ。
どこでお調べになったのか、牛乳も木酢液も使用して法律違反になるようなことは一切ありませんよ。
よく調べて書きましょう。


 そんな馬鹿なと思って調べてみると、特定防除資材の保留資材の今後の取扱いについて(案) というpdfファイルに本当に


保留資材については、農業生産現場で使用されているとの情報が提供されたため、仮に防除目的に保留資材を使用したとしても、農薬効果を謳って販売しない限り、暫定的に使用者が自分の責任と判断で使うことを可能とした


 という文言があり、保留資材(特定農薬としてリストアップされたが登録されなかった資材)のリストに載っている限り自己責任で使うことはできるようです。つまり牛乳やストチュウなどを使っても農取法違反とはならないようです。
 農水省のサイトにも同様の表記があります。
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/about_tokutei.html


 これは全く私の間違いで、間違った情報を信じた方たちには申し訳ないとしか言いようがありません。んが、ここから後は全くみっともない言い訳をしますが、このpdfはトンデモです(もちろんトンデモであっても「そう決まっている」のでしょうがないのですが)。


 特定農薬は農薬取締法改正に伴って新設されたカテゴリなのですが、つまりこの時の農取法改正で登録農薬以外の資材は一切使えなくなるはずだったのですが、それまで一般に使われていた登録農薬ではない資材までいっぺんに禁止してしまうといきなりすぎて規制が過剰すぎると言う理由で、その「一般に使われていた資材」を調査し、「原材料からみて明らかに安全上問題のないもの」を選びさらにその中から精査して特定農薬としたという経緯で、結局のところ特定農薬として登録されたものは重曹、食酢、天敵類だけです。このことは以前からブログで何度も書いています。
 が私が思い違いしていたのが特定農薬にならなかった資材群で、農薬取締法には明らかに「第11条 何人も、次の各号に掲げる農薬以外の農薬を使用してはならない。(略)1・登録農薬 2・特定農薬」とあるため、特定農薬にならなかった資材など当然ダメだろうと思っていたのですが、どうも暫定措置として使ってもよいらしい


 んでここからがトンデモなのですが、つまり保留資材は「明らかに安全上問題のない」から使ってもよいとされているわけですが、リストを見るにどうしてもそうは思えないものが山ほどあります。というか本物の登録農薬の安全性はこんなちゃちなものではありません。

 リストは3つの区分に分けられていて、


区分A:既に農林水産省・環境省にデータが提出されているか、現場で使用されている資材
区分B:現時点で使用に関する情報が得られていない資材
区分C:保留資材から削除する資材


 となっているのですが、最も特定農薬に近いと思われる区分Aの資材でも焼酎、ワサビ、ヒノキチオール、木酢液など散布して目・鼻・口に入ると大変危険そうな代物が多数並んでいます。
 区分Cなど論外で、かつCはさらに中身が5つに分かれているのですが、


① これまでの合同会合で個別資材毎に薬効等を検討した結果、特定防除資材に該当しないと判断された資材
② 文献等により、ヒト等に対して一定以上の毒性を有している資材
③ 農薬取締法及び他の法令で既に規制されている資材
・人畜に対する安全性に係る法令等(食品衛生法、消防法等)により規制等が行われている資材
・環境安全性に係る法令等(家畜排泄物法、化管法等)により規制等が行われている資材
④ 過去の合同会合において整理してきた特定防除資材の要件から、特定防除資材に該当しないと判断できる資材
定義が不明確で評価・指定の対象とならない資材(魚、カニ類、いね科作物、灰、洗濯廃液等)


 こんなものは分類などせずにとっとと削除してしまえばよいのに、削除せず10年近く放置して、リストにしてしまっているので解釈上は「自己責任で使用しても良い」となっています。意味不明です。
 挙がっている資材も噴飯物で、スルメイカ、ダイコン、キャベツなど普通の食べ物(どうやって「農薬」として使うんだ?)や、ホウ酸、塩酸、オゾンなど明らかに危険なもの、南天星、天照石、カツオの魚体など意味不明なものまであって、こんなもんが「明らかに安全だから」農薬として使ってもかまわないなら登録農薬のあの厳しさはなんなんだと思わざるをえません。


 真面目に扱うのも馬鹿馬鹿しい内容ですが、あえて真面目なツッコミをもう一つ続けると、これら保留資材には使用基準がありません。普通の農薬ならば希釈倍率や、面積あたりの使用可能量、使用時期の規定などがあるのですが、特定農薬や保留資材にはそんなものは一切無いので、バカみたいな大量・高濃度でも使えます。どう考えても「明らかに安全」どころか「あからさまに超危険」ですが、そうなっているものは仕方ないですなあ。


 農薬取締法に関する私の理解は間違いでしたが、しかし最後の言い訳をすると、農薬取締法は私の理解どおりに運用されるべきだと思います