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毎週月曜日深夜放送の「月曜から夜ふかし」というバラエティ番組。
そこで「関西人、薄味アピール問題。」が話題になりました。
以前から興味を持っていた内容だったので今回取り上げます。


番組構成は予想通り。
・市販のカップうどんだと関西のほうが塩分濃度が高い
・薄口醤油のほうが濃口醤油より塩分濃度が高い
実際に作るときの醤油の使用量の違いについては一切触れず、たった2点だけで検証は終了しました。

そこで京都人に関東の黒いつゆのそばを食べさせて「しょっぱい」と言わせておいて「気のせいです」と嘲笑。
関西人は色だけの先入観で関東人を見下していると結論づける内容でした。

ただ「関西は色が薄いので見た目が鮮やかで美的センスがある、関東のはみんな茶色。」
とマツコさんが最後にバランス取り。
関ジャニ村上信五さんが今後は薄色と言うと宣言して終了しています。


でも京都人の私にとって、実際には色だけの違いだとは思えません。
なぜなら関西のお店ではうどんのつゆを飲もうと思えば飲めるのに、関東のほうは飲めなかったからです。
これはなぜでしょうか。

答えはもちろん塩分濃度に差があるためです。
関西のつゆは昆布やかつお等の混合だしがメインで、醤油は香りづけ程度に加えます。
一方、関東のは醤油メインなので、塩分濃度は必然的に高くなります。

某番組調査では東西名店の醤油使用量が4.4倍、塩分濃度も2.6倍以上違うということです。
http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/01/10/1028.html
なるほど関東のつゆは飲めないはずです。月曜から~は後日訂正を入れたほうが良いでしょう。


関東の方が塩分濃度が高くなる理由は水の違いも大きいです。
関東では水道水を含めて水の硬度が高いため、グルタミン酸の塊である昆布のだしがあまり抽出されません。
なので同じくグルタミン酸系の醤油を大量に用いて旨みを補う必要があると言えます。
よって関東のほうが必然的に塩分濃度が高くなるのです。(濃口醤油>昆布だし 塩分濃度)

それと番組だけを観ると誤解しかねないので繰り返すと、関西では昆布とかつお等の混合だしが主流です。
昆布だしだけを使うのではなく、鰹節や煮干しも当然大量に用いて旨みの相乗効果をはかります。
関東が昆布だしに対抗するためには旨みを含んだ醤油をたくさん使用する必要があります。


なので番組に出ていた初老の男性の「蕎麦に湯入れて醤油を入れて食べてるような感じ」という発言。
この男性は、醤油ベースでだしの旨みが少ないことをきちんと見抜く舌の持ち主だったのかもしれません。
なぜなら醤油をケチって塩分濃度だけ関西風にしたら、こういう感想になるものだと想像がつくからです。

実際に食べた人達が誰一人うまいと言わなかったのはプライド云々ではなく旨みが少なかったからでは?
私は食べていないので真実はわかりません(笑)


大雑把なまとめ
関西のだし=鰹節+昆布等の混合だし+薄口醤油少量(+塩)
関東のつゆ=濃口醤油ベース+鰹節のだし
調味料で味を作るかだしを基本にするかの違いだけで、どちらが高尚とか言うつもりはありません。


ところで、ごくまれに関西の味付けがしょっぱい、塩がききすぎていると感じる方がいるそうです。
実際の塩分濃度に反してそう感じるのは、昆布のグルタミン酸を感じる味蕾が発達していないからだとか。
ただベースのだしは塩分濃度が低くても塩を加えて味を調整しているケースもあります。
この場合は本当にしょっぱいです。関西のカップうどんなどはまさにこのケースだと思われます。

それとは逆に、だしが濃い関西の料理に対して味が薄すぎると感じる方もいるそうです。
その場合はだしの旨みを感じる味蕾自体に大きな問題があるのかもしれません。こちらのほうが深刻かも。


※2014年2月18日以降、順次追記修正あり
厚生労働省の平成24年「国民健康・栄養調査」というデータを見つけたのでリンクを貼ります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000032074.html

複数の事例を収集しており、帰納的にも素晴らしいデータです。
結果の概要を読めば食塩摂取量の東高西低がはっきりします。

要点を抜粋し読み解くと
関東では埼玉6位(同3位)、千葉7位(同7位)、神奈川16位(同23位)、東京20位(同21位)。
関西では大阪45位(同46位)、京都40位(同27位)、兵庫29位(28位)という結果。
※食塩摂取量の男性順位・()内は女性順位

数年分にさかのぼっても「東高西低」のデータに大差は見られませんでした。
関西のほうが薄味だということで完全決着です。
ただ別所でも述べたとおり、加工食品の普及などで今後ますます地域差がなくなっていくことでしょう。

京都より大阪のほうが順位が下なのは「パンの購入量全国1位」と多少は関係があるのかもしれません。
パンに含まれている食塩量はたとえば6枚切り食パン1枚でさえ約0.8gと結構なものです。
調理パンだともっと高いし、パンとの組み合わせによっては10g未満の目標値をすぐに超えるでしょう。


さて、コメントを頂いた駅そばのデータでおかしい点を挙げます。
上の厚労省最新データによれば32位(同30位)と東京より低い愛知。
ただ駅そば調査だと東京1.18%(最低値)、名古屋2.65%(最高値)と倍以上の塩分濃度という結果に。
さらに調べると矛盾点が顕になりました。

この中では厚労省データで順位が高い宮城県が2.31%と2番目に高く、妥当な数値です。
大阪1.40%、京都1.63%とこれも違和感はありません。
ただ全国平均より低い広島や福岡も東京よりはるかに高い数値(1.87%と2.20%)です。

やはり東京の数値(1.18%)だけが浮いています。
これこそがこのデータの信憑性が全くないことを証明しています。
さらには東京だけ食べ終わりでより低い数値1.06%で比較したところに特定の意図を感じます。

厚労省データとの比較により、多くの方が東京だけ低く操作したかのような印象を受けたことでしょう。
ただ偶然東京の店舗だけ他より薄味だった可能性も考えられるので、信憑性がないとだけ述べておきます。

もっとも地域を代表するわけでもない、ただの駅そば1軒で比較した時点で最初から蓋然性はありません。
そして東西名店同士の比較でも1軒では十分でないことはコメント欄で述べたとおりです。



ところで月曜から夜ふかしで使用された「全国的に人気のカップうどん」が「赤いきつねうどん」だったとは。
私はカップうどんを食べないので味はわかりません。
ただもし赤いきつねだとしたら東洋水産HPにも栄養成分表が載っています。

食塩相当量
めん・かやく2.0g、スープ3.3g、合計5.3g(関西)
めん・かやく2.8g、スープ3.8g、合計6.6g(東向け)
http://www.maruchan.co.jp/products/search/2136.html
http://www.maruchan.co.jp/products/search/2134.html

リニューアルされたのは2014年8月18日です。
調査当時は関西のほうが食塩相当量が多かったか、番組の捏造か、東洋水産のデータ改ざんか。
様々な可能性が考えられるけど、ここの番組スタッフは失礼ながら頭が良いとは思えないので……
分析値と違う結果が出たことを東洋水産の関係者はどう受け止めるのか気になります。
まあ攪拌の度合いやお湯の量で結果を恣意的に操作されたらどうしようもありませんが。

醤油の種類に関しては薄口・濃口の違いだけで使用量には触れていない時点で議論の余地はありません。
改めて関西人の薄味アピールは嘘というのはデマだったということで。
村上くんを貶めるための流れで許されると思ったのかもしれないけど、嘘は良くないですね。
また少し調べたら分かることを、番組でやっていたから間違いないと鵜呑みにする人がいるのも問題です。