「歴史的大炎上」の経緯
イタリアのブランド「ドルチェ&ガッバーナ」が中国で炎上し、ブランドイメージの毀損と中国市場の消失という深刻な事態に陥っている。事件そのものは広く報じられたため、ご存知の読者も多いかもしれないが、今一度経緯を振り返っておこう。
ドルチェ&ガッバーナは、11月21日に予定されていた上海でのファッションショーの宣伝のために動画を制作し、18日に公開した。しかし、「アジア人女性が箸でピザを突き刺して食べる」といった内容であったため、「中国人やアジア人を揶揄している」「人種差別的である」と批判が高まった。国際派女優のチャン・ツィイー(章子怡)ら著名人が続々と抗議の意を表明し、インスタグラムをはじめとするSNSユーザーからも批判が殺到した。
さらに、共同創設者兼デザイナーの1人であるステファノ・ガッバーナ氏に対し、あるユーザーがインスタグラムで抗議したところ、ガッバーナ氏本人(を名乗る人物)が直接返信。このとき、氏が「愚かで汚く悪臭がする中国マフィア」などと侮辱的なコメントをしたとして、スクリーンショットがインスタグラムの有名暴露アカウント「Diet PRADA」によって拡散され、批判はさらに加熱した。
21日、ドルチェ&ガッバーナとガッバーナ氏は、それぞれ謝罪文を中国の短文投稿SNS「微博(ウェイボー)」に掲載、一連の投稿は「アカウントをハッキングされた」ためで本意ではないと釈明した。上海でのショーは「延期する」としたものの、期日は示されず、その後中止と報じられた。
また23日には、創業者兼デザイナーのガッバーナ氏とドメニコ・ドルチェ氏の2人が、改めて謝罪動画を公開。沈痛な表情で「世界のすべての中国人に謝罪したい」と語る内容であったが、「もし私たちがあなたがたの国の文化の解釈を間違えていたとしたら」という仮定付きの謝罪だったことや、侮辱的コメントの主がガッバーナ氏本人だったのかについて言及しなかったことから、批判は収まっていない。
これまでの炎上騒動と異なるのは、この騒動を受けて、中国市場から同ブランドの商品が文字通り「消えた」ことだ。
中国資本のECサイト「アリババ(阿里巴巴)」のみならず、ヨーロッパ拠点の大手EC企業「ユークス ネッタポルテ グループ」の中国版サイトなどから、ドルチェ&ガッバーナの商品は削除された。また、香港に本店をおく有力百貨店「レーン・クロフォード」が取り扱い中止を発表したほか、中国の空港の免税店からも商品が撤去される事態となっている。
ラグジュアリーと「中国マネー」
そもそも、昨今のラグジュアリーブランドの好調と急成長は、中国マネーによって支えられているところが大きい。
例えば、2017年に過去最高を記録したモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)の売上5兆7100億円のうち、地域別の売上では「日本を除くアジア」が最多の28%を占めている。同様に、「グッチ」「イヴ・サンローラン」などを傘下におくケリングの2017年の2017年の売上2兆900億円を見ても、日本を除くアジア地域が約20%を占めている。
こうした事情は、ドルチェ&ガッバーナも例外ではない。