2020年01月09日 15時00分00秒

「イカに3Dメガネをかけさせる」という奇妙な実験は何を目的にしているのか?

イカは高い知能と優れた目を持つことが知られており、長い触手を使ってエサとなる動物を狩っています。ミネソタ大学ケンブリッジ大学の研究チームは、イカが狩りをする際に獲物をどのように認識しているのかを調べるため、「イカに3Dメガネをかけさせて狩りをさせる」という実験を行いました。

Cuttlefish use stereopsis to strike at prey | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/6/2/eaay6036

Cuttlefish See the World in an Odd Way - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2020/01/why-scientists-put-3-d-glasses-cuttlefish/604555/

Scientists give cuttlefish 3D glasses and shrimp films for vision study | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2020/jan/08/scientists-play-shrimp-films-to-cuttlefish-in-3d-vision-study

人間は左右2つの目で物体を見ていますが、2つの目はそれぞれ数cmズレた場所に位置しているため、左右の目が認識する視界には微妙な違いがあります。左右の目が捉える像がズレていることを両眼視差と呼び、脳内が微妙にズレた像を総合的に判断することで物体を立体的に捉える立体視が可能となります。

人間は当たり前のように立体視を行っていますが、必ずしも全ての動物が立体視を行っているわけではありません。これまでの研究から、サルやネコ、ウマ、ヒツジ、フクロウなど、一部の動物だけが立体視を行うことができることが判明しているとのこと。

ミネソタ大学のトレバー・ウォーディル准教授が率いる研究チームは、「高度な知能と左右が独立して動く優れた目を持つイカは、獲物を捕まえる際に立体視を行っているのか?」という謎を明らかにするため、「イカに3Dメガネをかけさせる」という実験を行いました。実験に用いられたイカが3Dメガネをかけている様子は、以下のムービーで見ることができます。

Cuttlefish given 3D glasses to determine how they judge distance - YouTube

研究者が網の中から水槽に放したイカは……

右目部分が赤色、左目部分が青色の3Dメガネを装着しています。イカが2つの長い触手を的確に伸ばして獲物を捕まえる際には、獲物と自身の距離を正確に把握する必要があるため、ウォーディル氏は「イカは立体視を使って距離感を測っているはずだ」と考えて今回の実験を行いました。

研究チームは「イカに3Dメガネを装着させ、獲物となるエビの3Dムービーをさまざまな条件で見せることで、イカが立体視を行っているのかどうかを調べる」という手法で実験を行いました。実験を始めた当初は、イカが触手で3Dメガネを外してしまったり、泳いだ際に3Dメガネが振り落とされてしまったりする問題が発生。しかし最終的に、「3Dメガネをマジックテープでくっつける」「イカを注意深くお世話して、エサを豊富に与える」といった工夫と努力によって、全体の20~30%のイカは3Dメガネを装着したまま数日間過ごしてくれたとのこと。「イカの心をつかんで、幸せにしてあげなければいけません」と、ウォーディル氏は述べています。

トレーニングセッションで3Dメガネに慣れてもらった後で、研究チームはイカに対してさまざまなエビの映像を見せました。

イカがエビを捕まえようとすると、2本の触手が素早くエビに向かって動きます。スクリーンに映るエビとの距離感を正確につかむことができていれば、触手は適切な距離から放たれます。

しかし、研究チームが「左右の目に映る像をズラすことで物体を立体的に見せる」という3Dメガネの仕組みを使い、あえて距離感を誤認させると……

イカはスクリーンから離れすぎた位置から触手を伸ばしてしまいました。この結果は、イカが左右の目に映る像のズレを用いて、立体視を行っていることを示しています。

また、「スクリーンの位置よりも後ろにエビがいる」とイカに認識させた場合、イカがスクリーンよりもさらに向こう側へ泳ごうとすることもありました。ウォーディル氏の研究チームは、イカが立体視を行っていることは確かであるものの、神経回路や細かいシステムについては違いがあると述べています。

今回の「イカに3Dメガネを装着させる」という実験手法は、ニューカッスル大学ビベック・ニティヤナンダ氏の研究チームが行った、「カマキリに3Dメガネをかけさせる」という実験とほぼ同じもの。ウォーディル氏の研究チームは今回の実験にあたって、ニティヤナンダ氏の協力を仰いだとのこと。

なお、ニティヤナンダ氏の研究チームが行った実験により、「カマキリがほかの動物とは違う特異な方法で立体視を行っている」ことも明らかになっています。

カマキリに特異な「立体視」、実験で判明 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

 

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