新鮮で美味しそうな生牡蠣
秋から冬にかけて旬を迎える牡蠣。牡蠣は焼いたり、蒸したり、鍋に入れて煮たり、新鮮なものでは生のままでもおいしくいただけます。栄養が豊富なことから別名「海のミルク」とも呼ばれています。

そんな牡蠣ですが、食べると「あたる」ことがあります。牡蠣を食べてあたるとは具体的にどういうことなのでしょうか?

あたるのを防ぐには、牡蠣の選び方や調理方法、加熱方法にポイントがあります。牡蠣に含まれる栄養とその効果とともに、牡蠣にあたる原因とその対策についてご紹介します。

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牡蠣には嬉しい効果がいっぱい!

サザエや牡蠣を網焼きしている
牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるほど栄養が豊富です。

それらの栄養素のおかげで、牡蠣を食べると私たちの身体にとって嬉しい効果がたくさんあるのです。牡蠣を食べることで期待できる嬉しい効果について、詳しくみていきましょう。

ビタミンとミネラルが豊富

牡蠣はホタテと並んで世界各地で多く食べられている貝ですが、東洋医学では200年以上前から病気の治療のために薬としても使われてきました。

西洋医学においても、抗生物質のひとつである「ストレプトマイシン」が開発されるまでは、結核の特効薬として使用されていたようです。

牡蠣に含まれるビタミン・ミネラルには、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸といったビタミンB群のほか、カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛といったミネラルがあります。

いずれも私たちの身体にとって必須な栄養素で、牡蠣を食べる人は病気が少ないと言われています。

味覚障害の改善

牡蠣には様々な栄養素が含まれていますが、特に代表的なものが「亜鉛」です。牡蠣に含まれる亜鉛の量は、食品の中でもトップクラスです。

亜鉛は私たちの身体の中で骨や歯、肝臓、腎臓、筋肉などに多く存在し、生理機能を維持するための重要な役割を果たしています。具体的には、体内の各種酵素を構成したり酵素反応を活性化するほか、ホルモンの合成・分泌の調節、DNAやたんぱく質の合成、免疫反応の調節などに関与しています。

そんな亜鉛が不足すると起こる代表的な症状に「味覚障害」があります。味覚障害になると、食べ物の味を感じにくくなったり、苦味や渋味など特定の味が感じられなくなったりします。

亜鉛を十分に摂取することでこの味覚障害を改善し、食事を楽しむことができるのです。

二日酔いの防止

牡蠣には「タウリン」も豊富に含まれています。タウリンといえば栄養ドリンクなどに配合されていますよね。

タウリンはアミノ酸の一種で、血圧や血中コレステロールを正常化する働きがあります。この他に重要な役割として、肝臓の機能を助けてくれる効果があります。

肝臓にはアルコールを分解するなどの解毒作用があります。しかし、あまりにもお酒を大量に飲むとアルコールを分解しきれず、頭痛や吐き気などの症状や二日酔いを引き起こします。

タウリンは肝臓の機能をサポートしてくれるため、二日酔いの防止にも役立つのです。

肩こりや腰痛の改善

肩こりや腰痛が起こる原因は運動不足やストレスなど様々ですが、物理的にいうと筋肉の疲労や血行不良が原因です。

牡蠣に豊富に含まれるビタミンB1は疲労回復に効果があり、筋肉疲労を和らげます。また、ビタミンB12が傷ついた血管を修復し、肩こり・腰痛の痛みを緩和するといわれています。

さらに、タウリンによって血中コレステロール値が正常化することで血液がサラサラになり、血行不良の解消に役立ちます。

こうしたことから、牡蠣が肩こりや腰痛の改善に効果があるといわれているのです。

牡蠣は食べて“あたる”主な原因は4種類

新鮮で美味しそうな生牡蠣
栄養豊富で私たちの身体にとって嬉しい効果をもたらしてくれる牡蠣ですが、食べると腹痛や吐き気、下痢などを引き起こす場合があります。

食べ物を食べたときにこうした症状が起こることを“あたる”といいますが、牡蠣を食べてあたる原因は主に4種類あります。

それぞれの原因について、詳しくみていきましょう。

参照:厚生労働省 食中毒

ノロウイルス

牡蠣で起こる食中毒の原因として代表的なものが「ノロウイルス」です。

ノロウイルスは11~2月を中心に発生します。牡蠣以外の食品でも起こりますが、ノロウイルスによる食中毒のうち全体の約10%が牡蠣が原因で引き起こされたと考えられています。

ノロウイルスの潜伏期間は24~48時間ほどで、激しい腹痛や吐き気、嘔吐、下痢といった症状を引き起こします。

健康な方では軽い症状でおさまることが多く1~2日程度で回復しますが、子どもやお年寄り、免疫力が低下している方では重症化しやすいため注意が必要です。

ノロウイルスは二枚貝に存在しており、汚染された二枚貝を食べたり、感染者の糞便や嘔吐物から人の手などに付着し、二次的に経口感染してしまうことがほとんどです。このウイルスはヒトの腸管内で増殖し、少ない菌数でも感染してしまう非常に感染力の高いウイルスです。

現在、ノロウイルスに対する抗ウイルス剤はないため、感染してしまった場合には下痢や嘔吐による脱水症状を防ぎ、体力の消耗を抑えることが重要です。水分と栄養を十分に補給し、症状がひどい場合には病院で点滴などによる補給が必要です。

参照:「健康食品」の安全性・有効性情報

腸炎ビブリオ

「腸炎ビブリオ」は海に生息する食中毒菌のため、海から取れる魚介類やその加工品に存在している場合があります。

潜伏期間は8~24時間ほどで、感染すると腹痛や嘔吐、下痢、発熱を引き起こします。

海水など塩分のある環境でしか生きられないため、真水でよく洗うことで感染予防になります。

貝毒

「貝毒」とは、主に二枚貝に蓄積された食中毒を引き起こす毒素のことで、貝が毒素を持ったプランクトンを食べることによって貝の体内に蓄積されます。

こうした貝を食べて感染すると、下痢や麻痺といった症状を引き起こす場合があります。

貝毒については厚生労働省により基準値が設けられており、貝毒による食中毒の防止のための検査や衛生的な取り扱い方法が定められています。詳しくは『厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル 二枚貝』をご参照ください。

アレルギー

食中毒以外にも、牡蠣によるアレルギー反応が出る可能性があります。牡蠣そのものに含まれる成分はもちろんですが、牡蠣は海で成長するときに様々な成分を多く吸収するため、他の貝類よりもアレルギーを引き起こす可能性が高くなるのです。

牡蠣によるアレルギー症状が出ると腹痛や嘔吐が起こる場合が多いですが、アナフィラキシーショックに陥ると発疹や激しい嘔吐、最悪の場合は急激な血圧低下や呼吸困難によって命の危険にさらされることも考えられます。

もともとアレルギーを起こしやすい体質の方や他の魚介類にアレルギーを持っている方は、特に注意が必要です。

あたりやすい原因は時期でも変わる!?

牡蠣にあたる場合、原因が食中毒菌によるものであれば、気温や環境によって発生しやすい時期が異なります。

ノロウイルスの場合は、牡蠣が旬を迎える11~2月を中心に発生します。一方、腸炎ビブリオが原因となる場合は、海水温が上昇する5~6月から増加し、7~9月に最も発生しやすくなります。

この時期以外で食中毒が発生しないというわけではありませんが、食中毒が起きる可能性が高まるためより一層の注意が必要であるといえるでしょう。

加熱すればあたらない?

発泡スチロールに入った大量の牡蠣
ノロウイルスや腸炎ビブリオによる食中毒を予防するためには、加熱することが有効です。
ただし、加熱するときにもポイントがあります。

加熱をするときには、食品の中心部までしっかりと温度が上がるまで加熱してください。ノロウイルスは中心温度が85~90℃で90秒以上、腸炎ビブリオは中心温度が60℃以上で10分以上の加熱で死滅するといわれています。

このとき注意していただきたいのは、食品の表面の温度ではなく中心部の温度を上げることが重要であるという点です。食品の表面だけを加熱しても、内部に原因菌が残っていて食中毒が起きる可能性があります。食品の内部までしっかりと温度が上がるように火を通しましょう。

また、貝毒やアレルギーが原因の場合には加熱しても牡蠣にあたることを防ぐことができないため、注意してください。

牡蠣を食べる際に気をつけること

殻から取り出した生牡蠣
牡蠣を食べるときには、加熱の仕方以外にも気をつけるべきポイントがあります。それらのポイントについて、詳しくみていきましょう。

生食・加熱用のどちらか確認する

スーパーなどで販売されている牡蠣をみると「生食用」と書かれているものと「加熱用」と書かれているものがあります。

生のままでも食べられるかどうかは、牡蠣が育った環境によって決まります。

保健所が指定した海域で育てられ、浄化槽で浄化された牡蠣が「生食用」として販売されます。

それ以外の牡蠣は海域の指定がないぶん栄養も豊富で大きく育ちやすいですが、有害物質や細菌の増えやすく、食べるときには加熱が必須となります。

鮮度が良ければ生のままでも食べられると思われがちですが、いくら鮮度が良くても「生食用」の牡蠣以外は生では食べられません。

「加熱用」の牡蠣は必ずしっかりと加熱して、「生食用」であっても保存方法や鮮度に注意して食べてください。

調理器具の洗浄を徹底する

調理方法だけでなく、手や調理器具の洗浄を徹底することも大切です。

調理をする過程で手や調理器具にウイルスや細菌が付着して残っていると、増殖して他の食品や調理器具、食器などに移り、食中毒を引き起こす危険があります。

調理をはじめる前には石鹸でしっかりと手を洗い、牡蠣を取り扱ったあとは手や調理器具を念入りに洗浄しましょう。

体調が優れないときは食べない

牡蠣の鮮度や調理方法に問題がなくても、体調が優れないときには食べないこともポイントです。

体調が悪いときは、免疫力が低下しがちです。健康なときなら問題がなくても、免疫力が下がっていると牡蠣にあたってしまう可能性が高くなります。

体調が優れないときには、念のため食べるのを控えることをおすすめします。

安全においしく食べましょう!

栄養豊富でおいしい牡蠣ですが、食べ方や調理方法を間違えると食中毒などを引き起こす可能性があります。

しかし、牡蠣の食べ方や調理するときのポイントを押さえれば、食中毒の原因を除去して安全においしく牡蠣を食べることができます。今回ご紹介した方法やポイントを覚えて、牡蠣を存分に味わってくださいね!